『1ページの疑問(読切)』作者:昼夜 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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――なぜ、人間はこんなにも身勝手で

――なぜ、人間はこんなにも不幸好きで

――それでも、なぜ、人間は美しいのだろう。


 この世のものではない何かは、地球を観察し始めてから常にその疑問を胸に抱いていた。
 同種で殺し合いをし、裏切り、裏切られ、誰かが笑えば誰かが泣く。
 一瞬でも、全ての土地で全ての人が笑顔になることはなかった。
 しかし、この世のものではない何かは、嘆き悲しむ人から零れ落ちる涙や、心の底から幸せそうに笑うその笑顔の美しさに魅せられた。
 同じ人間という種類にも関わらず、同じ中身の者が全くいない。なんて凄いことだろう。
 この世のものではない何かは、いつものように色んな場所を同時に観察していた。
 ふと見た先に、一人の少女が何かを書いている姿が映った。
 少女がそれを書き終わり、部屋を出ると同時に、この世のものではない何かはその部屋へ侵入した。


      ◆


 恋人も夫婦も、所詮他人。
 でも親子は違う。あたしはそれが凄く不思議。
 だって、他人同士からあたしが生まれて、あたしはそのどちらとも親子なんて。
 そんな風に思うのは、あたしの両親が離婚してるからなのかも。

 あたしは凄く強くなりたい。
 それこそ、肉体的にも精神的にも。
 だって、そうなったら素敵じゃない?
 そんな風に思うのは、あたしが力の弱い女の子だからかも。

 これはあたしの勝手な思い込みなんだけど、親は尊敬出来る人であってほしい。
 あたしは親の勝手なところを見たくなかったし、親の間違いなんて知りたくなかった。
 でも、それは無理なんだよね。
 それを受け容れて、あたしは尊敬していたい。
 どんなに不甲斐ない父親でも、あたしのことを考えていて、どんなに自分勝手な母親でも、あたしが居なきゃ生きてゆけない。
 それを判ってるから。

 なんで喧嘩しちゃうんだろうな。近くにいすぎるからかな。
 ちょっと恋人みたいだね。恋人より仲直りはしやすくてしにくい。
 だって本当に憎むことなんて出来ないけど、改めて謝るのって恥ずかしい。

 今、あたしは一人暮らしなんだけど、結構快適。
 好き勝手にやりながらも、ちゃんと生活してる。モラルは守りつつね。

 でも、情けないことに、夜は少し怖くなったよ。
 それとね、あたし、シソの葉がダメなんだけど……どうもあの味が嫌で。
 お刺身を食べてて、それを捨てた時に一人って凄く実感した。
 何かシソの葉で実感、ってどうかと思うけどね。
 それくらい近くにいたんだ、って思ったの。変かなあ。

 子供って立場にあたしは甘えすぎてるのかもしれない。
 判っていることも判らないふり。
 判らないことを判ったふり。

 あたしもいつか子供が出来た時に、母さんみたいになりたくないなぁ。
 でもいいところはなりたいなぁ。
 父さんみたいな人と結婚したくないなぁ。
 でもあたしみたいな子が生まれるのならいいかもね。


     ◆


 この世のものではない何かは、少女の日記を盗み見た。
 理解は出来ないが、理解をしてみたいという気持ちで、そのページを破って握り締めた。


――人間とは、一人一人の代わりがいない。
――わたしはどうだろうか。


 この世のものではない何かは、今まで考えたこともないその疑問を持った自分に驚いた。
 長居しすぎたかもしれない、そう思うと翼を広げて上空へ飛び立った。
 その手にくしゃくしゃの一ページを握り締めて。





2005-01-24 19:45:06公開 / 作者:昼夜
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■作者からのメッセージ
何を伝えたかったのかがアバウト過ぎて判らないものになってしまいました。
人間、ってテーマは広すぎですか。そうですか。
でも書きたかったので書いてしまいました。
御粗末様…。
この作品に対する感想 - 昇順
なんとも壮大なテーマですね。影舞踊としては、少女から伝わってきたのは離婚した両親を憎みきれない気持ち、この世のものではない何かから感じたのは人間のあり方についてでした。ですので、どちらか一方にしぼったらいいかなぁなんて。少女の日記からはそこはかとない人間観が伝わってきて、ほわっとした気分になりました(ドンナ? 昼夜様の次回作も期待しております。 p.s この世のものではない何かが何なのか激しく気になりました(笑
2005-01-24 20:36:46【☆☆☆☆☆】影舞踊
何か漠然と考えさせられるものがありますね……。漠然としている分、個人個人での想いが浮き出てくるのかもしれません。これはこれでよかったような気がします。
最近皆さん短編書いてますが、ほんとまとめるのうまいな〜と思ってます(汗 
2005-01-24 20:46:27【★★★★☆】霜
読ませていただきました。これだけの短さながら、読後感にとても深い奥行きを感じてしまいました。特に中盤での少女の日記には、不覚にもホロリとさせられそうになってしまいました。刺身のシソのくだり、これがやけに説得力があります。思わず冒頭から二回読み返してしまいました。「この世のものではない何か」をハッキリと明かさなかったところが、かえって読者おのおのの想像力を煽って効果的だったのではないでしょうか。個人的には、チクリとツボを刺激された掌編でした。
2005-01-24 20:56:26【★★★★☆】卍丸
初めまして、おすたです!!読ませていただきました。読んだ後すごくほんわかとしたものが僕の心をくすぐりました。やっぱり僕なんかのレベルとは全然違いすぎですね(汗)詩っぽい感じがしますけど、すごい優しい言葉で問いかけるような表現が僕はとても気に入りました。それと同時に昼夜さんから僕にないものをたくさんもらい、勉強になりました。素晴らしい作品、どうもありがとうございました。
2005-01-24 21:36:33【★★★★☆】おすた
自分は細部まで自分の思った通りに説明してしまうタイプなので、こういう詩的表現が上手な人は尊敬します。「シソの葉」という言葉で、「いないという辛さ」を巧く表している技法は特に感服致しました。
2005-01-24 21:58:20【★★★★☆】むぅ
どうも、読ませていただきました。私が深いなぁと思ったのは人間だけということではなく、この世のものではない何か(呼びづらい)を混ぜての人間というテーマなんだろうということです(あれ、意味がわからない言葉だな)。えーと、つまり、一人の人間ということじゃなく、人間全員を見て比べる、という事から始まっていることが、なんか、あれなんですよ。全ての人間から、一人の少女へ行く、という事と、少女が自分を全体の中の一人としてみていることが重要なんだと思います。あれ、凄く意味が解らない。えーと、つまり、こういうことです。私はこれを読んでとても感動しました。以上。
2005-01-25 02:33:57【★★★★☆】うしゃ
うーん、昼夜さんもアバウトと仰っていますが、何を感じれば良いのかも、どんな雰囲気を読み取れば良いのかもわからないまま終わってしまいました。何かを見て哲学的だと考える人もいれば、気にもとめない人もいるので、そういう意味で少女の日記をさらりと読み流してしまったのがその原因かな、と思いました。
2005-01-25 04:49:04【☆☆☆☆☆】メイルマン
影舞踊様--一つに絞ることも考えたんですよねぇ。ああ、でも自分には広げる自信がなかった…(おい この世のものではない何かは作者も非常に気になるところで(ぇ 霜様--ほんと漠然ですいません(ぺこぺこ 私はそんなにまとめることが巧くありません。無理にでもまとめているのです(必死 いつか「キマッた!」って書いた後に叫びたい。 卍丸様--実はシソの葉は事実です。嫌いでそれを横からシソが好きな母が食べてたんですけど、それ捨てた時に「あ、一人だ」って思ったんですよね。あんまり間抜けなので詳細省きました(笑 この世のものではない何かは自分にも皆様にも未知の世界で、描くと中途半端になると思いまして。 おすた様--まだまだレベルアップ段階でそんなお言葉勿体ないない。こんな著作でもそう言って頂けるのが非常に嬉しいです。私も精進せねば。 むぅ様--歌詞をよく書いているのでそうなってしまったかな、と少々反省。でも詩的表現と細部描写のどちらも巧く混合させた作品を書きたいですな。細部描写は大事です。 うしゃ様--名前の長さにツッコミキター!!待ってました(笑 そして仰りたいことの雰囲気は掴みました。がしっとね。ゲッツ(この人今何してんだろう((ほっとけ。 とにかく、この世のものではない何かに人間を語らせて、その中のごく一部にすぎない少女にポイントを当ててみたんです。たぶん。もう、ここまでアバウトでごめんなさい。 メイルマン様--やはり人間は同じものを見ても感じるものは違うのだと、私は何だか嬉しくなってしまいました。実際、少女の日記はさらりと読めるものだと思います。ただ、読み手によってはそこで独自の感性によりイメージなどを深めてゆき、この作に何かを感じる方やさらりと読んだ方がおられることを、自分なりに深く納得出来ました。 皆様コメント有難う御座いました。
2005-01-25 16:23:53【☆☆☆☆☆】昼夜
読ませていただきました。興味深い内容で、僕の好きな雰囲気でもありました。ただ、精神論的な部分はいいとして、ストーリーが落ちていない気がしました。色々な部分がアバウトすぎるといいますか。物語の流れの中で少女の日記が出てきていれば、破壊力抜群の武器になったと思うのですが(僕の感想がアバウトですね、すみません)。
2005-01-25 19:59:15【☆☆☆☆☆】ドンベ
UFO?宇宙人かっ?チュパカブラなのかっ!?それとも――、などなど意味不明なことを思っていた自分を少し反省。冒頭からわかっていたつもりなのですが、やはりこの世のものではない何か、などとUMA的な用語が登場すると異常に興奮する超常現象マニアです(オイ) 読み終わった後に「むう」と唸ってしまうような、表面舐めただけでは言い表せない後味が気持ちよかったです。最後に、遅い読みになってしまい、すいませんでした(苦笑 
2005-01-25 20:00:53【★★★★☆】神夜
ドンベ様--落とし方は半ば強引にした部分がありますからねぇ(おい やっぱり短編で扱うには大きすぎるテーマで、長編で扱うには重過ぎるテーマだったような気がします。ああ、結局書けないではないか(笑 神夜様--チュパカブラに爆笑。確かに超常現象は奥が深いです。自分も結構好きだなぁ。遅い読みなんてとんでもない。拝読頂いただけで感謝でございます。
2005-01-27 01:25:25【☆☆☆☆☆】昼夜
計:24点
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