『雪のふる夜』作者:コマツナ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約6.99枚
雪って不思議だよね。


振ってる時は幻想的でキレイなのに


地面に落ちると土色に染まって汚らしい。


でもね、雪の上に雪が降ると


土色の部分を隠して一面のスノウ・ホワイトを見ることが出来る。


でも、そういうのは実際に見るよりテレビや雑誌で見たほうが良いぜ。


俺はもう見飽きたんだ。


でも、それが不意になくなると俺はたまらなく不安になる。


そう、人間ってあまのじゃくだよね。





第一話




雪がふわふわとグラウンドに落ちていく。朝から降っているその雪でグラウンドは一面の雪景色と化しており、その雪量に比例して気温は凍えるぐらい寒かった。だが、彼・・・桐谷良介(きりやりょうすけ)のいる教室はストーブのおかげでコタツの中のように暖かかった。ほおずえを立てながら窓に白い息を吐いて、指で「桐谷参上!」と書こうとしたが範囲が狭くて「桐谷参」までしか書けなかった。大きなため息をつき時計に目をやる。授業終了まであと20分もある。たかが20分と言う人もいるだろうが、良介にとっては永遠に感じるほど長かった。再び窓の外に目を向ける。止む気配をみせない雪を見て、なにかの歌で雪やコンコンと言ってる唄があるが何故にコンコンという表現を使うのだろうか? そもそもコンコン降っているというがどちらかといえばふわふわと言った方がいい。あ、もしかして風邪を引いてコンコンなのだろうか? 一本とられたな。昔の人って結構頭いいんじゃないか。と、一人想像の世界で自問自答をしていた。
「桐谷君」
 不意に想像の世界から現実へと゚された。はっ、と現状を見渡すと社会の藤原先生がその丸いめがねに手をやりながら俺の前にいた。
「教科書、36ページを読んでもらえるかな?」
藤原先生はそう言いながら教科書を指差した。俺はそこで初めて自分の教科書が閉じたままということに気ずき慌てて教科書を開いた。
「雪を見るのも非常に幻想的で素敵だと思うけど、歴史というのも同じくらい素敵だと思うよ。・・・でも君は地理のほうが好きみたいだね」
俺は自分の開いている教科書を見ると、でかでかと「地理」と書かれているのに気ずき、いそいで机の中に放り込んだ。クラスメイトはクスクスと静かに笑ったり、小刻みに震えて笑いをこらえているものもいる。俺は机から歴史の教科書を出そうと思ったが、すごいことに気ずいてしまった。
「すいません。忘れました」
 笑いをこらえていた者の生命線がその一言で切れた。約30人ほどいる3−Aの笑い声が一斉に教室中に響いた。
「わっはっは。じゃあ隣の三原君にみせてもらいなさい。」
 藤原先生がそう言うと、俺の横に居る男。三原純太(みはらじゅんた)は笑いながら机をくっつけた。
「お前、マジ最高だよ。・・・く、ぷふふ」
「ほっとけ。赤っ恥もいいとこだ畜生。」
 純太は笑いすぎて出た涙を拭きながら歴史の教科書を机の間に挟んだ。三原純太、奴とはもう2年の付き合いになる。中一の時、俺の教科書に書かれた名前を見て、「とうや君」と言ってきた男である。2年、3年と同じクラスになり、この3年で一番多く一緒に過ごした奴である。世間じゃこういう間柄を親友っていうらしいけど、どちらかというと腐れ縁ってほうが俺と奴には似合ってる。だって今時言わないもの。親友なんてクサイ言葉。
「じゃあ、桐谷君、読んでください。」
 俺は教科書に目をやった。純太が2行目あたりに指をさしてここから! と小さな声でつぶやく。
「ペリーが黒船で来航した時、江戸の幕府は・・・」
「ちょ、ちょっとまって」
 俺が読んでると藤原先生がストップをかけた。俺は「?」という顔をしていると隣で純太が必至に笑いをこらえているのが見えた。まさか・・・、俺は教科書のページを見ると67ページと書いてあった。
「桐谷君、ペリーはもっと先の話。今やってるのは聖徳太子の所だよ。」
 再び3−Aは笑いの渦に飲まれた。俺は隣で笑っている純太の頬を思い切りつねった。
「痛ェェェ!! そんな怒るなよ!! 今のはちょっとしたお茶目だろ!?」
「問答無用」
 俺は純太の頬をねじった。授業は笑いの渦と純太の悲鳴の中、終了の時間になった。


「悪かったって! んなふてくされんなよ〜」
「それが謝ってる態度かアホ」
黄色い卵焼きをほおばりながら純太は謝っている。冬は教室で弁当を食うのが常識だ。ヘタに外や屋上へ行こうものなら弁当を食う前に凍死してしまう。ストーブのある教室で食べるのがここのキマリみたいなものなのだが、狭い教室に30人全員がいるとさすがに狭苦しく感じる。俺は弁当のおかずをバクバクとたいらげ、弁当を完食した。
「そーいやもう1月も終わりなんだよなぁ。俺達ももうすぐ高校生になるんだぜ?3年なんてあっと言う間だったよな〜」
 純太はほおずえをつきながら言った。
「そうだな。まぁ公立の人達は今の時期は受験だなんだで忙しいんだろうな。」
「ほんと、私立だと受験というものが無いから実感わかないよなぁ〜。顔ぶれだってあんま変わらないんだろうし。」
 純太は弁当をひょいひょいと食べながら言った。たしかに大学までエスカレーター式というのは楽だが、何か物足りないというのは俺も一緒だった。まぁ受験が無いというのは贅沢な悩みだ。
「高校になったら可愛い子がいっぱい入ってこねぇかな〜。そしたらもうはうはでたまんねぇのにな!」
「お前・・・ほんと飽きないな」
 俺はため息まじりに言った。
「人生をいかに楽しむかはいかにして可愛い子と付き合うかにかかってるんだよ!! お前も男なら二股ぐらいかけてみろ!」
「いや、二股は良くないと思うぞ。大体、お前には緑川がいるじゃん。」
「な、何言ってんだ! あんな暴力女が俺の彼女!?冗談にならねぇって! あんな奴と付き合ってたら命がいくつあってもたりねぇよ」
 純太は顔をしからめ、手を顔の前で振りながら言った。
「俺はお似合いだと思うけどな」
「馬鹿! あいつの性格知ってんだろ? すぐに殴るわ命令するわで・・・ほんとアイツは・・・」
「アイツは・・・何?」
 純太の背後から冷たい声がした。純太の動きが止まり、ゆっくりと油の切れたロボットみたいに後ろを振り返った。
「よくもまぁ・・・そんな大声で人の悪口がいえるわね。」
「れ、玲子・・・」
 純太の後ろにいたのは、静かな怒りを目に燃やした緑川玲子(みどりかわれいこ)の姿であった。美しい長い髪と、大きな瞳が特徴の女の子だ。俺が知り合ったのは3年になってからだが純太とは小さい頃からの幼馴染






2005-01-18 21:53:36公開 / 作者:コマツナ
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