『JUNK 〜時空冒険者〜 第1話 [時空冒険者]』作者:あすか / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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▽▲▽JUNK▽▲▽
≪*Finder of The World*≫

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「何で、納得いかないよ。ねぇー、聞いてるクラブ? 何でこんな名前になるのさ」
広大な草原にある、牧場の柵に寄り掛かりながら、少年に話している少女がいた。
「あやも・・・、俺に言われても非常に困るんだが・・・。全く、文句は機械に言ってくれよ」
少年は、“クラブ”と呼ばれ、紅い眼をしており、髪は青混じりの色である。黒いベストを着て、長く黒いズボンをはいている。腰には、拳銃とその弾薬を入れるホルスターを身につけ、背中には大きな剣を持ち、その剣に合わせた入れ物にしまい、それを背負っている。
拳銃は、最大24弾装填出来るリボルバータイプで、ベストには、弾薬の他に拳銃を修理する工具や、予備の弾薬などを入れるポケットが6つあった。そして、背中に背負っている剣は、持ち手が剣と一体化しており、長さは2メートル弱程在るだろうか。その剣は大きな牙のようなイメージを思わせる。
少女は“あやも”と呼ばれ、灰色の眼をしており、髪は少し薄いピンク色で、緑色のリボンで結び、ポニーテルにしている。少年と同じベストを着て、薄灰色の半ズボンをはいている。彼女も腰にホルスターを身に付けているが、少年とは違い、両脇に二丁の拳銃を収納することが出来るようになっている。
拳銃は、装弾数30発のハンドガンタイプと、赤外線レーザーで照準を合わせて撃つことが出来る、装弾数68発のスナイパーライフルだ。
「何で、私の元いた“世界”の名前が『レッドシャーク』なんて名前だなんてさー」
少年は少女の言葉を聞いて、黒いバイクを指差した。それは、割と大型のバイクで、彼が所持しており、サイドカーが付いている。そして、バイクの先頭部分から立体映像が出ていて、下にはキーボードがあった。キーボードは、収納が可能なようになっており、立体映像も、キーボードのエンターキーで展開を自由に操作出来るような仕組みなっている。
少年は、その立体映像を指差したらしく、その立体映像にはバイクのエネルギーの残量や、現在位置(ポイント)を特定する座標(スピア)など、いろいろな計器が表示されており、その画像の中に、『World Name “Red Shark”(レッドシャーク)』と記されていた。
「“世界”に名前を付けるなんてさ、誰が何様のつもりでこのシステムを造ったのさー」
「あの“マッドサイエンティスト”どもが造ったシステムだからな・・・」
そういうと、少年は少し暗い顔をした。
「・・・それって、君が元いた世界で所属していたっていう組織・・・? 『MADICK』だっけ?」
少年が暗い顔になったのを、少女も察し、少し控えめに質問してみた。
「あぁ・・・そもそも、“世界”に名前を付けるってこと事態間違っているってのに、自分達の世界は“God(神)”って名乗ってるんだからな」
「そんな!だったら私の“世界”が『レッドシャーク』だなんて、本当は別の名前・・・」
「だが、あの“マッドサイエンティスト”どもの造ったモノだが・・・アイツらの科学力は本物だ。あやもの元いた“世界”に付いている名前、自分でも心当たりが在ると思わないか」
「・・・それは・・・そうかもしれない」
そう言って、あやもは少し黙り込んだ。
「でも、どっちにせよ“世界”に名前を付けるなんて、間違っている」

黒いバイクが広大な草原を走っていた。クラブが操縦し、あやもはサイドカーに乗っていた。
あやもが、サイドカーから双眼鏡を使い遠くを見ると、目には大きな街が飛び込んできた。
「何か見えてきたー!街だ、街があるよー。割と大きいね」
「今日はあの街の宿に泊まることにするか」

「おぉ〜、“東京”ほどではないけど、割と進んだ街だねぇ〜♪」
双眼鏡で見た時は、集落の様にしか見えなかったが、近くで見てみると、ビルや、ホテルが建っており、店もたくさん並んでいた。人もたくさん住んでいるようだ。
「“東京”、何だソレは?」
「あぁ、私が元いた“世界”の国の都心だよ。この街より、ビルとかがあって、人もたくさんいるんだ。私もそこでお買い物したことがあるよ」
「そうか」
「クラブの元いた世界は?」
「・・・さあな」
二人がこの街に着いたのは、夕方頃。街頭がオレンジ色の光を灯し、店も閉店まで売上を上げようと、外で人を呼びかけている。それはごく、普通の風景に見える。
「どこかに宿はないか・・・」
「あ―――!」
あやもは何かを指して、大声を上げた。
「なっ、何なんだいきなり!それから、指を指すな」
「旅館だー!」
指していたのは、街の中に一つだけ在る旅館だった。外には『健康に良い温泉で有名です』と客寄せの為の看板が立ってあった。
「行こう、行こう!ねぇ、いいでしょうー」
「まぁ・・・俺はどうでもいいが」

「え―――!」
「大きな声を出すな!何回言ったら分かるんだ」
旅館のカウンターで話をしている二人、どうやら、この旅館のオーナーともめているようだ。
「何度も言いますが、事前に電話でご予約を入れていない方以外の、6時以降の来客はご遠慮させて頂いているんです。」
「今、6時5分じゃないか!五分位気を利かせてくれたって・・・」
「当館の規則なので。お帰り下さい」
クラブは、どこでもいいから早く別の場所行きたそうだが、あやもはどうしても納得できない。
「どうしても・・・っていうなら・・・魔法で何とかししてやる〜」
「ガシッ!」
クラブは、あやもの後ろの襟首を掴んだ。
「スミマセン・・・コイツ興奮気味なので・・・。コラッ!魔法をやたらに使うな」
「分かった、分かった。だから手を離してー。苦しー、苦しいってば〜」
「ズル ズル ズル ズル」
あやもは、クラブに襟首を掴まれながら、旅館の玄関を出て行った。
「お騒がせしました」
「離して、離してってばー!こんちくしょ〜!」

夜の8時頃だろうか、街の店もほとんど閉店してしまった。人もほとんどいなくなり、寂しげに街頭の灯りだけが、ポツン、ポツンと灯っていた。
「他の宿やホテルも、6時以降の来客ご遠慮とはー。今日も野宿かな」
「誰のせいだと思ってんのさー!」
あやもはクラブのことを睨み付けた。
「ははは・・・まぁ、しょうがないだろ・・・な?」
「責任、取ってもらうからね!」
「???」

「はぁ〜、気持ち〜」
先程の旅館内、その旅館の名物、温泉の方からあやもの声がした。
「おいおい、あやもさんよ、忍び込んでまで風呂に入りたいかね?」
「風呂じゃなくて“温泉”だよ〜。それよりこっち向くなー!ちゃんと私の護衛!」
温泉は大きな岩で囲まれており、クラブはあやもの方を見ないように、岩を背にして周りを見張っている。
「誰がお前の裸なんて見るか!それよりも、見つかった時すぐ脱走出来るんだろうな!?」
「・・・ヤバッ。もし見つかった時、裸だから逃げられないよ〜」
「何も考えてなかったのかよー、あやも・・・」
クラブは“ハァ〜”とため息をついた。
「ダダダダダッ――――!」
突然、カウンターの方から大きな音がした。
「なにこの音・・・?もしかして見つかった!?」
「・・・いや。あやも、様子を見てくる。さっさと服を来て“アルデバラン”のメンテしてろよ!!」
「えっ!ちょ、ちょっとクラブ!」
そういって、クラブはカウンターの方へ行った。

「ヤツはこの旅館内にいるハズだ!徹底的に捜せ――――!」
クラブは、カウンターの近くの大広間にいた。クラブは、大広間を支えている大黒柱の後ろに隠れ、様子をうかがっている。カウンターやフロントにいる人々は、全員倒れていた。睡眠薬のようなモノで、眠らせているようだ。
「近くに時空転移(キャスパー)システムを搭載している機械があるハズだ。それも抑えろよ!ヤツはまだ見つからないのか!?」
旅館は武装集団に占拠されてしまった。武装集団は、それぞれゴーグルを付け、頑丈なヘルメットを被り、黒い防弾チョッキを着ていた。武器は、ハンドガンタイプの拳銃と、銃弾から自分達の身を守る、縦2メートル、横1メートル弱の分厚い鉄製の盾を所持している。
しかし、拳銃は普通のモノではなく、エネルギーを充填することによって、そのエネルギーを一点に集中して放射することが出来る『レーザーガン』と呼ばれるモノだ。
「いるのは分かっているんだ!出て来い『クラブ・マクスウェル』!!」
「この声は・・・まさか・・・」
クラブのことを、大声で叫んでいるのが、どうやら武装集団のリーダーのようだ。
彼は、眼は灰色、髪の毛は薄紫色で、小さめのメガネを掛けている。黒い防弾チョッキを着て、長い黒革のズボンをはいている。腰にはホルスターを身に付けていた。コレも、あやものと同じく二丁の拳銃を収納することが出来る。拳銃は、二丁とも他の武装集団のモノと同じ『レーザーガン』だ。
すると、クラブは大黒柱の後ろから、ゆっくりと武装集団のリーダーの方へ歩き出した。
「相変わらず生意気な口調は変わらないようだな。声を聞いて、しばらくしたらやっと思い出すことが出来た・・・なぁー?“ルドルフ”」
「その声は『クラブ・マクスウェル』!やっと姿を現したか!!」
二人は、数秒間互いに睨み合った。
「・・・久しぶりだな。昔は役立たずのお前が、今はこのテロリストをまとめ上げる首領になっているとは」
「テロリストではない!!我々は時空警察(ゲート・キーパーズ)だ!お前、分かっていて俺をからかったなぁ〜!!」
「ああ、分かっているさ」
「・・・どんな状況下でも・・・、その自信満々のその態度・・・!ムカツクなぁー!!」
彼の名前は“ルドルフ”と言うらしい。激怒しているルドルフは、手を挙げた。そうすると、旅館内にいた武装集団が、物凄い勢いでカウンターに集まって来た。そして、クラブの周りを、それぞれが所持している鉄製の盾で囲み、包囲した。
「逆ギレかよ」
「ハーハッハッハー!これなら絶対に逃げられないだろう?」
クラブはホルスターにあるリボルバーを抜こうとした。
「無駄だよ、この分厚い盾には、君の旧式の銃なんか通用しない、しない。それに・・・」
武装集団達はレーザーガンをクラブに向けた。鉄製の盾には、拳銃の先端を通す穴が空いており、ただ自分の身を守る為ではなく、攻撃も可能な攻防一体の盾だったのだ。
「さて、君にはもう抵抗するスベがない・・・諦めて我々と共に来るんだ!」
「何故行かなきゃならない?」
クラブはルドルフに問い掛けた。
「もちろん、我々時空警察(ゲート・キーパーズ)、あるいは行政府間の承認もなしに、他の“世界”へ逃げて行った!コレは“別世界逃亡”ならびに“時空違法滞在”ということになる」
「それだけか?」
「いや、どちらかというと・・・コレが一番大きな問題かもな。お前に一番来て欲しい理由は・・・」
「『MADICK』の連中のことか」
「分かっているのか、だったら素直に我々に連行されるん・・・」
「何をやらかした?」
ルドルフの言葉を無視し、クラブは真剣な表情で質問した。
「それは来れば分かる」
そうルドルフが言うと、武装集団達は、更にクラブに鉄製の盾を近づけた。穴から顔を出す、レーザーガンの銃口も近づく。
「・・・あいにく、それは無理な相談だな!!!」
クラブは背中の大きな剣の持ち手を握った。
「背中にまだ武器を持っていたか!」
ルドルフが手を挙げた。それと同時に、武装集団はレーザーガンのトリガーを引いた。
「ブラストル――――!!」
クラブは、背中の入れ物を破きながら、左手で剣を取り出した。目の前に迫って来る、紅いエネルギーの光。その大きな剣を持ちながら、片足を軸にして急回転した。急回転により、クラブの体を中心に出来た少竜巻の風のエネルギーが、レーザーガンのエネルギーに反応し、エネルギーを分散させた。
分散したエネルギーは、あちこちへと飛び散り、大黒柱や天井、大広間などに当たり、飛び散った部分には紅い炎が立っていた。
「こちらが銃を撃つより早くその大刀を抜いて、更に攻撃にまで対応するだと!」
「それだけじゃ、ないんだよ!!」
「ガッガッガガガガ――――!!」
クラブは剣を振り下ろした。激しい轟音と共に、武装集団が持っている鉄製の盾が、数十枚も真っ二つに切り裂かれた。
「バカな!厚さ150ミリの・・・強化金属の盾だぞ!?斬られるハズが・・・・・・」
「まだまだぁ―――!!」
クラブはしゃがみ込み、片手で持っていた剣を、両手で持ち直し前方へ向けた。そして、剣を武装集団目掛け回転させながら突進していった。
「『ウェーブ・ドライバ―――』!!」
「スギャアァァ――――――――!!!」
また、激しい轟音が聞こえた。突進しながら、クラブは全体を回転させながら飛び込んだ。それはまるで、意思を持った竜巻が突進していくように見えた。
クラブは、ルドルフの方へ近づいた。
「さーて、俺は銃がなくても、この『ブラストル』で充分対抗出来るぞー。ルドルフ、今の内に降参するんだな。」
「クッ・・・・・・、何を・・・!」
ルドルフは、今までクラブに対して強気だったが、急に弱気になった。
その理由は、周りを見れば一目両全だった。
鉄製の盾は、クラブの『ウェーブ・ドライバー』と呼ばれる攻撃により、ゴナゴナに打ち砕かれ、武装集団の半分以上が気絶していた。旅館のカウンターや玄関は、まるで竜巻が通ったのかのように破壊されていた。
「返事はまだか?」
「フッ・・・少しぐらい有利になったからって、調子にのるな!“B班”から“G版”!こちら総隊長、『カイ・ルドルフ』だ。ターゲットを発見した。至急応援を頼む!」
ルドルフは、ズボンのポケットから通信機器を取り出し、街にいた残りの武装集団に応援を頼んだ。
「ダダダダダッ――――!」
旅館の近くにいた“C班”と“E班”が直ぐ様駆け付けた。そして、一斉にクラブを包囲した。
「頭数だけはかなりそろえているんだな。お前らしいなルドルフ。」
「いくらでも攻撃してくればいいさ。もし、この“世界”にいる隊員が全員倒れても、こちらにはまだまだ増援の手はある。お前が力尽きるまで、相手をしてやるよ。」
ルドルフがそういうと、武装集団は一斉にレーザーガンを構えた。
「相変わらず、汚い手しか使わないな」
「何とでもいえ!我々時空警察(ゲート・キーパーズ)はお前を捕まえるなら何でもする!絶対にお前を連行してやるんだ!全員、急所は避けて発砲しろ!!」
増援も合わせ、武装集団の数は約60人。その人数に、クラブも退いた。武装集団はレーザーガンのトリガーを引こうとした。
「ちょっと待ったぁ―――!」
突然、遠くから大きな声がした。
「この声は・・・」
「クラブ――!助太刀しに来たぞぉぉぉ―――!!」
その声は、あやもだった。
あやもは、左手に蒼い革製の手袋をはめていた。その手袋の甲には、白色のダイヤルが付いており、周りには五つの“エンブレム”が描かれている。
「『マジック・ダイアル』セット!『エレメント・マジック』、『エンブレム “Fire(ファイアー)”』!」
あやもは、ダイヤルを回し、『火 “Fire”』のエンブレムを『セット・コンタクター』にセットした。
「自然よ! 火の精霊よ! 地と闇の境門を護りし者、我の力となり遣えよ!!」
あやもは、左手の手袋をかざした。そしてしゃがみ込み、手袋を地面に付けた。
「“召喚”!『フレイムマスティコア』!!」
手袋から魔方陣が描かれ、その魔方陣は紅く光り出し、光の中から“魔獣”が召喚された。
「ガオォォォ―――――!」
「うわぁ―――――!」
召喚されたのは、ライオンによく似ている姿の“魔獣”だった。しかし、黄色い眼で、大きな牙を持ち、全体の皮膚は黒い。鬣は紅い炎を立てながら燃え、同じく足の周りや尻尾にも、炎が鎧のように燃えていた。
魔獣は武装集団の方へ突っ込んで行き、何人もの隊員が吹き飛ばされた。
「何だ、この生物は!我々の世界にはいない、ありえない生物だ!」
「お前達の世界だけが偉いわけじゃないんだよ。他の“世界”だって、お前達を上回る“世界”があってもおかしくないハズだ!」
クラブは剣を振り落とした。そうすると、物凄い風が吹き、武装集団を吹き飛ばした。
「他の“世界”も、同じ“世界”には変わりないんだ!」
「うるさい!お前は黙っていろ!全員ライオンなどに怯えているな!一斉に発砲しろ!」
「ただのライオンじゃなぁ――い!この子は“魔獣”だよ―」
武装集団は、レーザーガンを魔獣に向け、一斉に発砲しようとした。
「仕方がない・・・。これは使いたくなかったけど・・・いけっ、『フレイムマスティコア』!」
あやもが魔獣にそう言うと、魔獣は口に球体エネルギーを溜め、それを炎のエネルギーに変換して放射した。
「なっ、何だと―!口から炎を吐くのか!!」
クラブの剣と、あやもの召喚した魔獣で、武装集団に応戦した結果、最初にいた武装集団と、応援に来た部隊のほとんどを倒した。
「ダダダダダッ――――!」
しかし、街にいた武装集団“B班”と“G班”が、また新たに増援として来た。
「フフフフフッ・・・。いくらでも倒せばいいって言っただろ。コイツらが倒れたら、また次の増援が来る。果たしていつまでもつかねぇ〜?」
「・・・これじゃ、切りがないな」
「クラブ、ここは私に任せて!」
あやもは、左手の手袋のダイヤルを回し、『水 “Water”』のエンブレムを『セット・コンタクター』にセットした。
「『マジック・ダイアル』セット!『エレメント・マジック』、『エンブレム “Water(ウォーター)”』!」
あやもは、左手の手袋をかざした。
「自然よ! 水の精霊よ! 湖に住みし善良なる心清き者達、その心今ココに集え!」
そしてしゃがみ込み、手袋を地面に付けた。
「“召喚”!『ブルーフェアリー』!!」
手袋から魔方陣が描かれ、その魔方陣は蒼く光り出し、光の中から“妖精”が召喚された。
「『ブルーフェアリー』、ゴォ――!」
妖精は、四本の薄い透明の羽を背中に持ち、青い服を着ており、体の周りは蒼白い光で包まれていた。あやもは、数え切れない程の妖精達を召喚し、その妖精達は武装集団の方へ飛んで行った。飛んで来る妖精達は、まるで大津波のようで、武装集団は妖精達の波に飲み込まれてしまった。
「クラブ――、こっち!こっち!」
あやもは、旅館の外で手を振っていた。そこには、スペアの剣の入れ物と、黒いバイクが用意されてあった。
「待ってろ、今行く!」
クラブは、妖精達の波から抜け出し、波に埋もれている武装集団の体を台にして、飛び移りながらあやもの方へ向かった。
「えーい、体制を立て直すんだ!ヤツは『時空冒険者』、ただいくつもの“世界”を放浪しながら逃げ続けるだけの“ゴミ”なんだ!」
そのルドルフの言葉を聞いた瞬間、あやもの元へ向かっていたクラブの動きが止まった
「何だ・・・?そうか!“ゴミ”と呼ばれるのが苦痛なのか!?だったらもっと言って・・・」
「・・・ルドルフ、“オーバーデリート”されたいか」
クラブは、ルドルフのことを凄い目付きで睨んだ。
「ヒッ・・・・・!」
クラブは、あやもの元へ着いた。
「行くぞ、あやも」
「分かった。さっさとこの街を出よ〜!」
クラブは黒いバイクの操縦席に、あやもはバイクに付いているサイドカーに乗った。
「マヌケな声を出すな」
「いいじゃないかー。クラブはいつも“ムスッ”とした顔で―、スマイル、スマイルだよ!」
「この顔は生れ付きだ」
旅館を後にし、クラブは剣をしまい、バイクのアクセルを踏み、街を出ようとした。
「待て!お前達をここから先には行かせない!」
街全体を包囲していた、残りの武装集団“D版”と“F班”は、旅館に向かっていた。
しかし、二人が街から出るとルドルフから連絡を受け、二人のバイクの進行方向に、全員鉄製の盾を持ち“バリケード”を造った。
「全員銃を構えろ!前方の目標を捕らえるんだ!」
指揮を取るのは、“D班”と“F班”の班長のようで、班長の命令通り、武装集団はクラブ達にレーザーガンの標準を定めた。
「全員、発砲し・・・」
「突っ込め―!クラブ、ゴォ――!!」
クラブは、バイクを最大加速させ、武装集団に突っ込んで行った。
「うわあぁぁぁ―――――!」
武装集団は、突進して来るバイクから逃げだした。その結果、簡単にバリケードは崩れた。
「道、空けてくれてアリガトね―――!」
あやもは、たじろぐ武装集団の方を向き、手を振った。
「バイバイ〜!」
「うるさい」
「もう、別にいいじゃないかー。さっきも同じこと言ったよー」
二人は、武装集団を振り切り、街を出て草原の彼方へと去っていった。

一方旅館、あやもが街を去ったので、妖精達も自然に消えていった。
「やっと、身動きが取れる・・・」
ルドルフは、“フゥー”とため息をついて、旅館の外へ出た。そして、街の周りを囲んでいる草原の方に、クラブ達の姿が見えた。
「コレが・・・『ガウリスソーディアン』 『ディファレント・アイズ』と数々の二つ名を持つ、伝説の双剣士の力・・・」
ルドルフがそう言うと、ボロボロになっている各班の班長が寄って来た。
「隊長!次の指示を・・・。目標(ターゲット)が、追跡不能になる前に・・・」
「いや、一旦本部に引くぞ。全員この状況じゃ戦闘は無理だ。負傷者を確認し、医療班に頼んで応急処置の手配を!それと、時空転移(キャスパー)システムのスピアセット(座標指定)の準備を!」
ルドルフの命令で、各班の班長達はそれぞれ行動を始めた。
「『クラブ・マクスウェル』・・・伝説を打ち破り、次こそは!・・・そういえば、後もう一人いたような気が・・・?名前は・・・」

「ヘクシュッ!」
「うるさい」
「クシャミだよ!それ位カンベンしてよ〜」
街から大分離れた草原に、黒いバイクを一旦止め、クラブとあやもは一休みしていた。
「大変だったんだから〜。唯でさえ、デカくて、重〜い“アルデバラン”を、あの武装連中の目を盗みながら旅館の前まで持って来たんだからー」
「ご苦労様」
「それだけ!もう少し感謝の言葉はないのかぁー!」
クラブは、全くあやも相手にしない。その様子を見たあやもは、下を向きながら、控えめに質問をした。
「あの人・・・『ルドルフ』だっけ?大声で話すから聞こえたんだけど・・・。君の元いた組織・・・『MADICK』っていうのが何をしたの・・・?」
「さぁな。俺には全く解らない」
「本当にそう!?」
あやもは、真剣な表情でクラブに問い掛けた。
「本当は・・・本当は解っているんじゃないの?私・・・、いろいろな“世界”で、君の噂を聞いたことがある・・・。君は『ガウリスソーディアン』 『ディファレント・アイズ』っていくつも二つ名を持つ、伝説の双剣士・・・いやっ、伝説の殺し屋(ハンター)だって」
クラブは、“殺し屋(ハンター)”という言葉を聞いて立ち上がった。
「突然現れた放浪者を殺し、その放浪者を殺すと、どこかへ去って行ってしまう・・・。この“突然現れた放浪者”って言うのは、多分、私達『時空冒険者』のこと・・・つまり、君は『時空冒険者』を狙う殺し屋(ハンター)ってことになる・・・」
あやもは、下を向いていたが、上を向き、クラブの眼を見た。
「眼を逸らさないで!君は、昔一体何・・・」
「スッ・・・・・・!」
クラブは、突然あやもの首元に、大きな剣を向けた。
「それ以上喋るな」
「何・・・?力で人を黙らせようとするの・・・?私はそんなのに屈しな・・・」
「黙れ!!」
クラブは大きな声で叫んだ。あやもは、クラブがこんなに大声で叫ぶのを始めて見た。
「君は、“逃げていない”だから他の『時空冒険者』とは違うって言っていたよね。私も、自分の“世界”から・・・逃げて来たんじゃない!私は、新しい“世界”を見つける為にこの旅をしているんだ」
あやもは、もう一度、クラブの眼を見た。
「クラブ、君と一緒に」
あやもは、何回もクラブの眼を見ようとした。しかし、クラブは、何回も目を逸らす。
「君は、君の世界から逃げているだけじゃないんだよね!!」
「いいから、今は黙っていてくれ!!!」
あやもは、首元に触れている剣を、とても冷たく感じた。けれども、あやもは堂々としていた。全くそれを恐れていない。クラブを真っ直ぐな眼で見つめていた。
「時が来たら・・・、ちゃんとお前にも話す・・・。だから、今だけは、そのことは問わないでくれ・・・!」
そう言って、クラブはあやもの首元に向けていた剣を、元の入れ物にしまった。
「・・・分かったよ・・・」
あやもは、少し悲しい表情をした。クラブは、暗い顔で下を向いているままだった。
「ルドルフが、また増援を呼んでいるかもしれない・・・。あやも、スピアセット頼む」
「OK!任せといて!」
クラブは黒いバイクの操縦席に、あやもはバイクに付いているサイドカーに乗った。
あやもは、サイドカーに付いているキーボードを取り出し、エンターキーで立体映像を展開した。
「時空転移(キャスパー)システム起動!『スピアセット』 『セントラルナンバー“108(ワン・オー・エイト)”』 『デルタナンバー“+α(プラスアルファ)” “−ι(マイナスイオタ)”』」
あやもは、別の“世界”に行く(ダウンロード)の準備をしながら思った。
「『スピアセット』完了 『タイム・ゲート』オープン 『スピア』、並びに全システム、計器の最終チェク完了! 『ダウンロード』開始!!」
いつか自分にも、話してくれたらいいなと。
「よし、行くぞあやも」
「うん!レッツ・ゴォー!」
クラブの、心の奥に抱えているモノを、私にも話して欲しいと思った。
貴方の、クラブの力になりたいから。

(終)



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〔〔補足〕〕  本編で、分かりにくい部分を説明します。

『アルデバラン』 → クラブが所持している、大型の黒いバイクの名称。このバイクには“時空転移システム”、通称“キャスパーシステム”が搭載されており、他にも予備の時空転移装置など、色々便利な機能が備わっている。

『最初に旅館にいた武装集団』 → A班です。

『オーバーデリート』 → 別の“世界”で死んでしまった人間が、元の“世界”へ、死体のとなって戻って来ること。つまり、クラブはルドルフに「死にたいか」と聞いたのです。

『スピア』 『スピアセット』 → スピアは“座標”のこと。スピアセット“座標指定”のことです。このスピアセットをすることによって、別の“世界”へ自由に行けることが出来ます。

他にも、この物語の専門用語がありますが、それは物語が進むに連れ、分かってきます。
下にある[プロローグ]も見てくださいね。

皆さん、ご意見ご感想、お待ちしています。

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▽▲▽JUNK▽▲▽
≪*Finder of The World*≫

Still Download [Prologue]

私達の存在する“世界”とは違う、別の世界。
その世界の、非公開科学組織『MADICK(メイデッィク)』が時空転移システムを完成させた。
そのシステムは、時空間(タイム・ホール)と呼ばれる空間にその物質の情報を転移(アップロード)させ、時空間からシステムの座標で指定したポイント“世界”へと、物質の情報をまた転移(ダウンロード)させる。それで別の“世界”で存在することが出来る。
このシステムは一気に世の中に広まった。我々の別の“世界”とは一体どんなものなのか、人々は希望を持ちながら別の“世界”へと旅立っていった。
彼らは、“世界”へ大きな希望を持ち、高く、高く羽ばたき、新しい“世界”を目差した。そして、その者達のことを『時空冒険者(Finder of The World)』と呼んだのだ。

けれども、これを善意で利用する者もいれば、悪意で利用するものもいた。
罪を犯し、別の“世界”へと逃げて行く者(別世界逃亡)、自分の世界のモノを、別の“世界”で在り得ない程高い値段で売り、その“世界”で生きていこうとする者(別世界詐欺)、ホームレスなど経済力のない人々が、金銭の要らない、そんな自分の理想“世界”へと行く者(非理想現実逃亡)、システムを悪用した様々な犯罪や社会問題が起こった。
この様な問題を鎮圧させる為、『MADICK』と連携を組み、時空警察(ゲート・キーパーズ)を設立しこの様々な問題に当たった。そして、少しずつ沈静化し始めた。
しかし、衝撃の事件が起こった。別の“世界”へ旅立った人々が、無残な姿となって空から降って来た。その屍の雨は止まず、その死体を焼却しようとしても、次から次へと死体は空から降って来る。このシステムの唯一の欠陥は、別の“世界”で死んでしまった人間は、元の世界へ、そのままの姿、つまり死体となって戻って来るのだ(オーバーデリート)。

そうして、月日は流れ、この屍の雨は止まず、システムを悪用した犯罪も減らない。
この様に、悪いイメージで『時空冒険者』は世の中に伝わっていったのだ。そうして、しだいに彼らは理想世界(アルカディア)だけを求め、自分の世界を受け入れず、別の“世界”に逃げて行く者達・・・『時空冒険者』は人々から『ゴミ』と呼ばれるようになった………

Next Download [Finder of The World(時空冒険者)]


2005-01-02 01:12:04公開 / 作者:あすか
■この作品の著作権はあすかさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ

この作品に対する感想 - 昇順
どうも、あすかといいます。
まだまだ初心者なので、みなさんのご感想聞けたらいいなと思っています。
『JUNK 〜時空冒険者〜』 お楽しみに!!
2004-12-19 02:34:26【☆☆☆☆☆】あすか
初めましてどうも青いリンゴです。時空転移システムですか〜そういうの好きです(笑 自分はファンタジー大好き人間なのでこの設定はとても面白いと思いましたが少々文章が短すぎるように感じました。個人的な意見なのですが(笑 次回の更新も頑張って下さい。
2004-12-19 03:11:36【☆☆☆☆☆】青いリンゴ
はじめまして。卍丸と申します。読ませていただきました。まだまだ序章なのでストーリーに関するコメントは難しいのですが、本格的なSF小説の出だしといった印象ですね。専門用語に関する説明も、簡潔でイメージし易いものがありました。青いリンゴさん同様、少し分量的に短過ぎる印象も受けましたが、物語世界の設定自体は面白いと思います。今後のご執筆も頑張ってください。
2004-12-19 10:14:44【☆☆☆☆☆】卍丸
はじめまして〜名も無い作者といいます(o^▽^o)ノ
この作品はこれからが楽しみですねぇ。なによりゎたしは英語を書いておられて…びっくりしました(何故w ゎたしは英語の成績悪いものなので、英語書ける方は尊敬します(笑 次回の更新楽しみにしてますね☆彡
2004-12-19 10:59:00【☆☆☆☆☆】名も無い作者
はじめまして、走る耳です。設定に違和感がなくて、これからの展開もスムーズにいけるのでは、と思いました。別世界がどんな世界なのか、これからも読んで知っていきたいと思います。次もがんばってください。
2004-12-19 13:04:28【☆☆☆☆☆】走る耳
初めまして、影舞踊といいます。物語へ入る前の導入部分としていいんじゃないかと思います(えらそう 現実世界とは違うものを書こうとすると、説明ばっかりになってしまいがちですから(←自分)上手いなぁと思いました。次回の更新も頑張って下さい。
2004-12-19 16:10:29【☆☆☆☆☆】影舞踊
お初お目にかかります。興味を引かれる世界設定で導入としては非常に分り易いものでした。次回の更新に期待しています
2004-12-19 17:26:36【☆☆☆☆☆】BULL
前はプロローグだけだったけど、今回は本編!
字間違いがありそう・・・あったら教えてくださいね・・・
まだ第1話、がんばって次も書こうと思います!
”クラブ”と”あやも”の活躍を見てください!

あと、次回の題名を決定次第、更新します。
余裕があったら(あるのかな・・・?)キャラクターのプロフィールとかも、物語を知っていただく為、投稿出来たらなと思っています。

皆さん、これからもヨロシクお願いします!
2004-12-23 10:26:03【☆☆☆☆☆】あすか
計:0点
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