『Until a sandglass finishes.(修正)』作者:新先何 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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Until a sandglass finishes.

           砂時計が、終わるまで

 きっと君がひっくり返したんだ。
 気がつけば赤い砂は流れる様に下へ、下へ。十五分の間動き続け下へ。

「知ってた?砂時計の中に入ってるの砂鉄なんだって」
 君が砂時計を買って来たときだ、この話を聞いたのは。君はその後、全部の砂が下に落ちるまで、飽きる事無く眺めていた。
 砂時計が動きだすと、世界の物全てが止まる気がする。砂時計の音だけが流れる。
 砂の音が流れる間、君に声を掛けても聞こえていなかったらしく返事もしてくれない。君はずっと、ずっと。

 その後だろうか、君の耳が聞こえなくなったのは。
 彼女はピアニストになりたかった。
 僕は君にどうする事も出来なくて、部屋の隅にうずくまっていた。君の涙が止まるまで、死にたくなるくらい長い時間を砂時計は刻み続ける。
 気が付けば君の顔に涙の跡は消え眠っていた。
 君は毎日努力した、部屋の中でピアノと向かい合い延々と弾き続ける、これは「ベートーヴェン ピアノソナタ第8番ハ短調」だろうか、君は不安と恐怖に顔をくしゃくしゃにして僕にしか聞こえない音楽を。
 ピアノの片隅には赤い砂時計。

 君は久々に街に出た。
 新鮮な空気、君には聞こえない街の騒音。
 戸惑う事なく君は笑っていた。鞄に入れればいいのに、君は砂時計を手でもって商店街を歩く。
 君はあるお店に入る。ここは、あの場所だ、君と出会った店。砂時計もここで買ったはずだ。
 店内をうろつき、君は満足した顔で店を後にする。
 砂時計を掃除するためのセットを買ったらしい。

 悪い事は唐突に起こるものだ。
 風呂から上がりさっぱりした気分は一気にひいた。
 君は最初眠ってるようだった。
 そばにある水と薬も風邪薬だと思った、とにかく認めたく無い事実。
 理由は分からない、何か辛い事があったんだろうか。
 そして僕はその場から動くことが出来なくなった。

 きっと君がひっくり返したんだ。僕の事を。
 気が付けば赤い砂は流れる様に下へ、下へ。十五分の間動き続け下へ。
 僕には赤い血が流れてる。
 赤い砂鉄の血。
 流れきっても気づけば君がひっくり返す。僕の事を。
 誰か、彼女の死に気づいておくれ。
2004-12-14 19:54:38公開 / 作者:新先何
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■作者からのメッセージ
修正しました、というか、「その」とか「この」を消しただけです(おい!
それから「僕」は砂時計と言う設定です(くどい・・・・・・
この作品に対する感想 - 昇順
読み終えてすぐに、惜しい!と思ってしまいました。冒頭での掴みは素晴らしく、ストーリー自体もとても良く出来ていたものであったとは思うのですが、この一人称の語り手の存在がはっきりと認識できかねるところがありました。ワタシの解釈では語り手の「僕」自身が砂時計であったと思われるのですが、そうであるとしたならば途中の文章での「この砂時計」等の表現は適切ではなかったように感じます。この「僕」が砂時計以外の存在であるとしたら、これは全く的外れな指摘であり、単なるワタシの読解力不足なのですが(汗 この分量の中での一人称なので、その点をはっきり伝えて欲しかったと言うのが一読者としての我侭な意見です。なにやら辛口になってしまいましたが、ワタシとは違う解釈をされる読者の方もたくさんいらっしゃる事と思いますので、軽く聞き流してやってください。新先何の次回作をおおいに期待しておりますので。
2004-12-09 22:53:37【☆☆☆☆☆】卍丸
面白かったと思います。卍丸様とは違う解釈となりますが、自分も一人称の語り手の存在ははっきりして欲しかった気もします。でもそれを想像するのも結構面白いです。自分は、「僕」は普通にこの「彼女」の「彼」かなぁと感じました。僕にしか聞こえない音楽とか、赤い砂鉄の血とかの表現はなんかこうグッときました。短い中にいろいろ詰まっててすごいなぁと感服です。
2004-12-09 23:25:19【★★★★☆】影舞踊
私が初めに読んだ印象では、漠然とではありますが「僕」という人間が自身を砂時計にオーバーラップさせているように感じられたのですが、どこか違和感を拭えなかったです。卍丸さんの仰っているようにもとれますし、やはりどちらにでもとれるような書き方ではなく、がっつりとどちらかに決めて訴えかけていただいた方が、私は良かったと思います。
2004-12-10 21:30:31【☆☆☆☆☆】メイルマン
卍丸さん、影舞踊さん、メイルマンさん、感想ご指摘ありがとうございます。
自分の中では「僕」は砂時計のつもりで書いたのですが、それだと卍丸さんの言う通り「この砂時計」っていう表現は変になっちゃいますよね。まだまだ修行不足です。
この作品はちょっと気に入っているのでもう一回やりなしたいと思います。
皆さんご指摘ありがとうございます。これからも精進します。
2004-12-11 20:10:41【☆☆☆☆☆】新先何
どうも、はじめまして、昼夜です。修正版を拝読させて頂きました。所々の描写や文末にセンスを感じる作品に思います。短い中にドラマを感じるストーリーですね。砂時計であることがわかった時、「動くことが出来なくなった」の部分に「?」と思ったものの、砂時計の掃除が終わったことを「風呂上り」と例える部分に面白みが感じられました。
2004-12-15 01:04:33【★★★★☆】昼夜
計:8点
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