『死神のいた場所(読み切り)』作者:新先何 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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 今思えば、自分は馬鹿だった。
 夏、風邪を引いてないのにマスクをし、建物の中なのにサングラスをし、黒いニット帽をかぶり銀行員に向かい話し掛ける俺は間違いなく馬鹿だ。

「金をこの袋につめろ!」
 辺りが一瞬で静かになる。
 一瞬の静寂、そして悲しみと絶望の声。周りの視線が俺に注がれる。
 こうなる事は分かっていた、懐から拳銃を取り出し一発。
「黙れ、騒ぐな、手を上に、ドアの近くのお前!鍵を閉めろ」
 泣く者もいた。みんなが壁に寄り添い座り込む。
 しかしいつまでたっても、真ん中で俺の方をじっと見ているやつがいた、全身真っ黒の服を着て顔は良く見えない。
「おい、早く座れ」
 黒い男は
「あっすいません私、死神です」
「だから座れよ!って死神?」
「はい、死神ですが」
 周りのみんなが俺の方を見てひそひそと話し合っている。
 そして急に小さな女の子が泣き出した、小さい子には恐い事だろう仕方が無いがこっちも理由も無くやったわけじゃ無い。
 もう一発撃ち母親に黙らせろと命令した。
 すると死神と言う男は再び喋りはじめる
「それから、みなさんには私の姿は見えませんから、一人で話しているとかっこ悪いですよ。あっでも私の事見えるのは、これから五分以内に死ぬ人には見えますよ」
「おいおい待てよお前!じゃあ俺は今から死ぬのか?」
「すいませんがルールで本人に告知できないんですよ死ぬまでは」
 おれは五分以内に死ぬのか?でもこいつが死神って言う事自体が信じられんし。
「あんた死神って言う証拠はあるのか?」
「証拠ですか・・・・・・名刺とかじゃダメですよね、なら私に撃ってみて下さいよ弾を、霊体に近い存在だから傷は残りません」
 少し躊躇したが撃てと言っているのだし試しにやってみる。
「ドン!」
 男は平然としていた、まじかよ・・・・・・死ぬのか俺、きっと警察に撃たれて死ぬんだ。突然ここにたっている俺は、かなり馬鹿らしく見えた。
「聞いてくれよあんた、おれはいままでつまらない人生を送っていた。学校でも社会に出ても輝く時間は無かったんだ、そんな生活に嫌気がさして気づけば銀行強盗の計画を練っていた。お金が必要だったんだ・・・・・・わかるだろ?」
 懺悔をした。この場所のむなしさにたえられなかった。周りに人間には申し訳なかった。
「みなさん!どうもすいませんでした。さっきの女の子!おどかしてごめんなさい、僕が間違ってました」
 黒い男は、
「別にあなたが謝っても運命は変わりません。死は避けられないのです」
 もうすぐだ、こいつが現れてから五分になる、さあ潔く死のう。
 五分が近づく、と急に叫び声が聞こえた
「ゴキブリ!」
 俺の最期の時間に現れるとは、なんと失礼なやつ、ゴキブリに拳銃の焦点を合わせる。
「ドン!」
 当たった。
「あっやっと死にましたね」
「は?」
「いや今日はこのあなたに撃たれて死ぬゴキブリの魂を貰いに来たんです」
 何も言えない・・・・・・
「まて、じゃあなんで俺はお前が見えるんだ?」
 何かゴキブリに向かって儀式をしている死神に聞いた。
「霊感が強いんじゃないですか?」
 今度は懺悔した俺が馬鹿に思えてくる。立つ気力もない、床に寝転がりサイレンの音を待った。
2004-12-07 06:51:29公開 / 作者:新先何
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■作者からのメッセージ
えー良くある死神物を書いてみました。
会話中心なので書きづらかった・・・・・・
これ前から考えてたんですけどなかなか、いい書き出しが思い浮かばなかったんで今日やっと出来ました。
感想ご指摘お待ちしております。
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