『エデン−前編−』作者: / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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「頭おかしいんじゃないねぇの」

高校生くらいの、なんだか変に大きなズボンを穿いた男の子たちはそういい残して、走って騒がしい街の中に消えていった。

「何あれ」
杏は落としたバックを拾って歩き出した。

「トウキョウって本当に人が多いのネ」
日本にいたのは小学校3年生の夏までだから・・・もう8年ぶりになるんだ。

この人の多い東京でも杏は目立つ。
すらりと伸びた長い足を短いスカートからだして気の強そうな大きな瞳できちんと前を見て姿勢よく歩く。
そんな杏を見て何人もの男たちが声をかけてきた。
さっきのもそうだった。

しつこく誘い、ついには腕をつかんできたから仕方なく相手をしてあげた。
喧嘩は慣れている。
留学先のアメリカでもなんども危ない目にあっていた。
銃はさすがになかったけれど、ナイフで傷つけられたことはある。
ちゃんと武道を習ってもいたので動きは的確だ。

まず相手のみぞおちに一発。
それから、と思ったら相手は逃げ出していた。

本当にあっけなかった。

「さて、これからどうしようかな」

実は行くところなんてない。
持ち物も、パスポートにお金が少しと大学に持っていった筆記用具だけ。
家出をしてきたのだから当然といえば当然か。

杏はまだ17歳だけれど大学に通っていた。
親は生まれてすぐなくなったらしいから顔は知らない。
遠い親戚のうちで育った。
そこは子供のいないとても裕福な家で、小さい頃から遊ぶ暇もなく習い事や勉強をさせられた。
愛されてるなんて一度も思ったことはなかった。
私はただの駒みたいなもの。
もっと良い家と親戚になるための・・・。
小学校3年生のときに、イギリスへ留学することになってそこで5年、そして今度はアメリカの大学へ渡った。
必死で勉強した。
それしかなかったから。

昨日17歳になって、急に考えた。

私は、本当に大切なものをまだ何一つ見つけられていない。
このままいくら勉強してもわからない。

愛することについて・・・。

でもきっと3日もすれば、あの人たちの手下に捕まることは目に見えていた。

「なんかバッカみたい」

公園のベンチに寝転がって目をつむってつぶやいた。
「3日じゃなにも見つかんないよ」

それでも自分から帰る気には慣れなかった。

空は暗くなり始め、月がでていた。
寒くなってきたし・・・どうしよう・・・。

「いくら?」

目を開けると、キレイな男の人が立っている。
その瞬間、思考回路が止まってしまったみたいだった。

「タダヨ」

私は笑顔で答えた。



2003-10-12 18:19:44公開 / 作者:萌
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■作者からのメッセージ
ずっとボワァっと頭のなかにあった話です。
この作品に対する感想 - 昇順
いいですね!これからもがんばっていい作品を作ってください!!
2003-11-01 21:20:17【★★★★☆】芯かへる
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。