『帰郷』作者:樂大和 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約2.63枚
「ええ〜、もう帰ってこいですって?
 ちょっと待ってよ!いくらなんでも急すぎんじゃないの?
 私はまだ帰りたくないわけ!
 え?なんでって…
 だってここすごく居心地いいし周りの人達だってすごく親切なんだもん。

 このまえなんてどこかのお偉いさんの息子からえらく気に入られちゃってさ、な んでも欲しいもん買ってくれんの!
 最高だよ、ここ。
 さすが大都市って感じ!
 でもその人あんましタイプじゃなかったんだよねぇ…
 だからプロポーズされたときどうしようか焦ったけど、結局無理なこと言って
 諦めてもらちゃった。
 え、結婚詐欺?
 そんなんじゃないよ!!
 むこうが一方的だったの。
 結構他にも居るんだよ私に一方的に貢いでくれる人達。
 でもどれもタイプじゃないんだよね・・・はぁ。

 いやいや、でもねここはいい人ばっかだしさ、危険なことも無いって。
 だからさ、もう少しここに居てもいいでしょ?
 お願いだからさ〜、駄目?
 え〜!! 
 どうしてなのよ、そんなに急いで帰らなきゃいけないの?
 え、何?そんな難しいこと言われてもわかんないってば。
 要するに?
 実家を継ぐの? 
 私が?

 …嫌よ!
 何で私があんなド田舎にある家を継がなきゃいけないわけ?
 だいたい、ママはママでしょ!
 私は自分の道を生きたいの!!
 そんな親の勝手で決められたくないわね!

 ……悪かったわよ、泣かないでよ、確かにちょっと言い過ぎた。でもね…
 え、お見合い?
 そりゃ、確かにいい男は居ないけどさ…
 かっこいいの?その人。
 じゃあ一回だけなら帰ってみようかな〜
 でも、気に食わなかったらすぐにこっちにとんぼ返りだからね。
 いいわ、で迎えはいつごろ来るの?…」

 なにやら妙なからくりに話かけている美しい女に優しそうな老人は心配して尋ねた

「どうしたんだね?声をあらげたり嬉しそうだったり」

 美しい女は涙を浮かべ振り返りこう答えた。

「翁、婆、とても悲しきお知らせがございます。
 私は生まれた家へと帰らねばなりません。
 あちらの世界とこちらの世界では時の流れが著しく違うて参ります。
 もはや生きてお二人と会うこともできますまい。
 いままでのご恩決して忘れは致しませぬ。
 せめて次の満月の夜、月より使者が参るまで出来るかぎりお二人のご恩に報いましょう…」


2004-10-05 18:28:22公開 / 作者:樂大和
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■作者からのメッセージ
ハジメマシテ!!
昔書いたヤツのリマスター版です(笑)
酷評、感想頂けたら嬉しいです。
この作品に対する感想 - 昇順
読ませていただきました。普通に楽しめました。なるほどそうくるか、といった感じで。ただ文が短く、改行で行数を稼いでいるように見えましたが、さらっと騙されて良かったです。失礼いたします。
2004-10-05 19:54:11【☆☆☆☆☆】メイルマン
うまい。どういう仕掛けがあるのかワクワクしながら読めるお手本のような作品だと思いました。絶対何かあるんだけどさっぱり見当がつかないという、作者vs読者のせめぎ合いのようなものを味わえました。結末までの運びも軽妙でした。
2004-10-05 21:05:20【★★★★☆】明太子
面白かったです。オチを一本の大技に絞って、最後の科白まで読者に読ませない技術には感嘆いたしました。序盤からの軽妙な語りが、最後の最後に見事活かされておりましたね。文章のほぼ全体が科白と言う事で小説としての評価は難しいところがあるのですが、掌編ならではのシャープな運びで気持ち良く楽しませていただきました。今後の作品に期待致します。
2004-10-05 22:38:44【☆☆☆☆☆】卍丸
読ませて頂きました。率直の感想が【巧い】です。いや、オチがあるんだろうなと思っていましたがまさかこんな風にまとめ上げるとは。うわ、すっげえ。この物語はツボです(笑
2004-10-06 11:22:29【★★★★☆】神夜
計:8点
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