『生きる』作者:はるか / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約3.93枚
私は琉衣に何も出来なかった___________


「葉月っ!」
琉衣が私の名前を呼んだ。毎日、昼休みになると琉衣は私のクラスにやって来る。私は、ただなんとなくだけど教室の入り口から私の席まで来る途中の笑顔が好きだ。人が居ない所を探してはくだらない話をして笑い合ってすぐに昼休みは終わってしまう。
「チャイムなったで」
『いつもいつも早過ぎやって!』
愚痴をこぼしながら教室目指して廊下を歩いて行く。秋と冬の境界線の上を歩いている様な気温だった。琉衣とわかれ教室に入ると暖かかった。まるでクラス全員の体温が溶けているみたいに。いつも通りの教室。授業も喋り声で消されて何を聞いたらいいのかも分からない。そんな中で先生の怒鳴り声が響いた。一旦は静まり返った教室もたちまち喋り声が聞こえ出した。その時の授業の内容は命についてだった。私自身、自殺とか殺しとか死ねとかいう言葉は何より好まない。真剣に先生の声に耳をかたむけ様とした所別の声が聞こえた。
「・・・いってリストカットしてたんやろ?」
最初の方が聞えなかったけど「い」と聞えた。スッっと頭を過ぎった。
「うち、リストカットした事ある・・・」
琉衣が一週間前くらいに言っていた。


『琉衣って将来の夢、変わってないんやろ?』
「そりゃあもちろん!!」
『ははっやっぱり?!頑張れよぉ!』
『てか前の学校大変だったらしいやん?』
「まぁ・・・大変だったと言えば大変だったね・・・友達も失っちゃった様な感じだったし」
『今、琉衣はここに居る。良かったやん。』
「うん・・・まぁ・・・・・・。でも前の学校は伊達じゃなかった・・・」
「っっ・・・・・・・・」
『どうしたの?』

「うちリストカットしてた・・・」

『・・・嘘っっ?!ほんまに?!』
驚いた口調で琉衣に言ったけど実は知っていた。噂で流れてたから。でも信じてなんかいなかった。琉衣がリストカットなんて・・・死のうだなんて・・・。本人の口から聞いたこの言葉はあまりに皮肉過ぎた。

嘘だ。

そんなの信じない。

いつも笑ってる琉衣が。

いくら辛くてもそんな事琉衣がする訳なんて・・・。

琉衣の声が闇の様に感じられた。琉衣が自殺しようとしたなんて・・・・・・。信じたくない。それが本音だった。でも、琉衣の声に嘘は感じられなかった。
『もうしてないよな?絶対しちゃあかんで・・・?』
気がつけば真剣な顔で琉衣に言ってた。
「もうしてへん!将来の夢考えてたから!!」
『頑張れ!!』
明るい声も雲がかかっていた。正直言って泣くかと思った。でも、駄目だ。琉衣は今はこうして明るくて私と喋ってる。大丈夫だ・・・。「信じよう琉衣を」そう心に決めた。

一週間前の事を思い出しただけで意地でも先生の言ってる事を聞こうと思った。数分でチャイムが鳴り響いた。
『もっと早く聞こうと思うべきだったな・・・』
号令の声とともに立ち上がり呟いた。HRが終わり放課後掃除をしていると琉衣がやって来た。
「葉月っっ!!明日遊ぼう!」
『勉強は?来週テストやで?!』
「ははっそんなのあとあと!」
『もうっ!私の点数悪かったら琉衣のせいやからな!!』
「んなもん知らんわ!」

今日も琉衣を信じ続けて笑い合おう。



もし、琉衣が今ここに居なかったら私は・・・どうなっていただろうか。
泣いて戻る事じゃない。
平気で生きていられるかも分からない。
泣くよ。
心の底から琉衣を呼ぶ。
琉衣が死んでいたら私はどうなっていたか・・・本当に分からないよ・・・。
琉衣が生きる事を選んでくれて本当に良かった______。
2003-12-24 08:13:59公開 / 作者:はるか
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■作者からのメッセージ
改めて読むと会話の言葉がおかしかったのでちょっと変えました。文の内容は何も変わっていません。
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この作品に対する感想 - 昇順
傲慢な傍観者は最高ですね。人の気を知らずに、自分の人生を人に押し付ける、この矛盾さが。いいですね。今の世をこれだけの文章にするなんてたいした才能です。 この程度で変われたら誰も太宰治なんて読みませんし、流行もしません。それに、流行のカウンセラーはみんな廃業です。
2003-10-12 16:59:39【☆☆☆☆☆】かぜまた
登場人物のセリフによって「」と『』が使い分けられていて、読んでいて誰が話しているかわかりやすかったです。そのへんの工夫がよかったなぁって思いました☆
2003-12-24 12:40:18【☆☆☆☆☆】律
↓入れ忘れました^^;
2003-12-24 12:40:51【★★★★☆】律
分かりやすい透明度の高いお話でした。良かったです〜。
2003-12-24 16:09:13【★★★★☆】柳沢 風
かぜまたさん、ちょっと言い方に気をつけましょうね。傷つきます、そういうのは。
2003-12-24 16:38:16【☆☆☆☆☆】琴葉
伝わってくるものがありました。もう少し葉月と流衣のエピソードがあると、もっと引き込まれたかと思います。これからも頑張ってください。変われるきっかけは人それぞれ違うと思います。夢や友達の存在によって変われる人もいると思います。そう簡単に変われないというのもわかりますが…。
2003-12-24 18:24:42【★★★★☆】灰猫
私もかぜまたさんの言い方にはちょっと「え?」と思ってしまいました。私も傷付くと思います。 感想ですがイイお話ですね。台詞に少し変化を付けたのが、私は少し混乱してしまいました。でも言葉に良く個性がでていて、それを補ってますね。頑張って下さい。
2003-12-24 19:10:36【★★★★☆】黒弧
感想に入る前に一言。まあ、世の中にはいろんな読者がいるのだ。テキストだけで何かを伝える世界では、回線の向こうの相手の人となりや生き様を見ることはできない。ありていに言えば、「世の中にはいろんな意見があるんだなあ」くらいに流しておくのがよいのではないかと私は思う。そこで感想だが、状況がちょっとばかり飲み込みにくい。場所を教室内に限定し、あれこれ場面を転換しなかったのは欲張らずによかったと思うが、主人公のモノローグに入った時点で、琉衣がなぜリスカを図ったのかがぼやけてしまう。おそらくいじめだろうが、できれば主人公が親友としてどれだけ大事に彼女を思っているかを、言葉(モノローグ)だけではなくその態度で描いて欲しかった。
2003-12-25 21:24:44【☆☆☆☆☆】くるみぱんチップ
計:16点
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