『少女-5-』作者:みるる / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角1352.5文字
容量2705 bytes
原稿用紙約3.38枚
すると

廊下から足音がした。
パタパタと比較的歩幅の狭そうな足音だった。そしてその足音は男のいる病室の前で止まった。
男は手を止めて慌ててベッドに横になった。
ガチャリ と ドアが開いた。

そこにはあの[少女]が立っていた。

医者からもう通院もいいと言われた(はず)のあの日、スーパーで後ろから当たられ薬を落としてしまった、あの [少女]。

しかしあの時のレトロなワンピースではなく、白衣。髪は二つに分けて三つ編みのおさげ、頭には大きな白の看護帯レースの大きい襟の腰で締まって傘のように広がった白のワンピース、その上に白の裾にレースのついたエプロン、白いタイツ、小さな看護婦のよく履いている白いサンダル。まるで看護婦の衣装を着たフランス人形がそのまま大きくなったような様だった。しかし[少女]には表情がなかった。本当に人形みたいだった。

この子は一体…

少しの間男は時間が止まったかのように[少女]を見た。
[少女]が口を開いた。

「病室を変わっていただきますので荷物をまとめてついて来てください。」
子供に似つかわない、機械的な淡々とした口調だった。本当に人形かと思うほどだった。
男は従った。何故かわからなかったが催眠術でもかけられたかのように[少女]について行った。

何故だ?俺は逃げようとしていたのに今はこの[少女]に従っている。病室を変わると言っていたがどこへ行くのだろう。

[少女]の後ろを同じ距離を保ったまま廊下を歩いた。
やけに静かだった。廊下を歩いているのは男と[少女]だけ。両脇の病室から微かな音がする。ピーピーといった機会音や人が歩く音、咳払い。男以外にも人はいるようだった。男が知っている限りでは他の病院となんら変わらないようだったが少し証明が暗いのと小さな[少女]が看護婦であること。

困惑しながらも男は自分のおかれている状況や自分のことを考えた。なるべく冷静に。

やはり昨日の商店街のことや食事は幻覚だったのか?俺はどこかのタイミングで(スーパーで?家で?)気を失ったか何かで病院に運ばれたのか?というか昨日だったんだろうか、今日は何日だ?この[少女]は…?

「こちらに。」[少女]がいった。荷物搬入用のエレベーターの前。
「え?」
「通常のエレベーターは使えませんのでこちらからお願いします。」
言われるままに[少女]とエレベーターに乗る。
ガコン
[少女]は手を伸ばし最上階のボタンを押した。重い音と共に体が上がる感覚が続いた。見下ろして[少女]を見る。やはり無表情だ。こっちを見ることもなく立っている。
ガコン
エレベーターが止まった。分厚いエレベーターのドアが開く。やはりこの階も薄暗くさっきまでいた階と変わらなかったがドアの数が多かった。
個室ばかりか。
そんなことを考えながら[少女]についていく。まっすぐな廊下を奥に進んだ。

急に[少女]が立ち止まる。男は危うくまたぶつかるところだった。
「こちらです。」立ち止まったドアの前でそう言って[少女]は方向を変えてまたエレベーターの方へ向かって歩いて行った。
男はドアノブに手をかけドアを開けた。
ベッドが二つ誰かが横たわっていた。

2003-10-03 23:07:56公開 / 作者:みるる
■この作品の著作権はみるるさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しぶりです。やっと続き書きました。
そろそろ架橋…かな?(笑)
この作品に対する感想 - 昇順
感想記事の投稿は現在ありません。
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。