『あなたは僕が見えますか?[読み切り]』作者:千夏 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角3061.5文字
容量6123 bytes
原稿用紙約7.65枚
彼と出会って私は変わった。とても、とても怖くなった。
あんなに自分に恐怖を感じたことは、一度だってなかった・・・


「遅刻しちゃう。今日も学校・・・サボろうかな」
私がそう思っている時、信号が赤になった。
「最悪。今のでもう行けなくなった。学校なんてくだらないし」
私は腕にしている時計をちらりと見て、時計をしている方の腕をポケットに入れた。
私の最近の口癖は「くだらない。訳わかんない」だ。世の中腐ってる。頭がいいのの何がいけないの?人間、顔で判断されてしまうの?訳わかんない。私を見てよ。私だって存在してるのよ!・・・少し思うだけでこんなにも嫌味が口から出そうになるのは、正直自分でもうんざりだった。
ふと横を見ると、小さな少年が信号を待っていた。風変わりな服装だった。全身真っ黒で、瞳には光りがなく何も映していない。気持ち悪い。私は斜め後ろへ下がった。少年から少しでも離れるように。
少年がこちらを向いた。目が合った。私はすかさず目をそらした。
小さな音が私の耳へ聞こえた。
「・・・ねえさ・・・るの?」
私はその音の方向がどこか分かって、背筋が凍った。
少年の声だった。
「お姉さん、僕が見えるの?」


私はその場からいち早く離れるように、全力で走った。どこだか分からない場所まで来てしまった。
「どこだろう、ここ・・・?」
私は手を膝につき、下を向いて背中で息をした。
「ハアハア」
人は全然通っていないし、通る気配もない。ビルが隣りになっていて、薄暗い。誰も使っていないような道だ。とりあえず見覚えのある景色を探して、首を回した。
「キャアアアアア!!!」
叫んだ。口から声が出てしまった。
後ろには、小さな黒い影があったのだ。今度はしっかりと見えた。
少年のドス暗い瞳に、私の歪んだ顔が映っていた。


「やめて!やめて!お願い何もしないで!!!」
叫んで、後ろへ一歩ずつ下がった。
(トン)
ビルに背中が当たった。「ヒィ」と声が出てから、少年は口を気持ち悪いくらいにニィっと曲げて、言った。
「お姉さん。何もしないよ。僕はね、お姉さんのような人にしか見えないんだ。お姉さんみたいな・・・」
私はビルにへばり付いた。来るな来るなと念じた。動けない。手足は震えるだけで動かなかった。
「欲望の固まりみたいな」
私は怒りが一気に爆発した。震えが止まり、少年の頬をバチンと叩こうとした、その時。
(パァアン)
振りかざした腕を少年はいとも簡単に掴まえた。何者なの?この子。人間じゃないわ。
「僕はお姉さんの願いを五つ叶えてあげるんだ」
そう言うと少年はどこから出したのか、メモ帳を取り出した。そして、私の顔を見て口をニヤリとさせ、言った。
「このノートに五つ願い事を書くんだ。それが現実になるから。でも六つ以上書いたらダメだよ。お姉さんが終わってしまうから。それじゃあ、またこの場所に明後日来るから、メモ帳を返しに来てね。絶対だよ。約束だよ」
私は何も言えず腕を掴まれたままでいた。いきなり腕が下へとブラリと垂れ下がり、少年は消えた。
「なんだったの・・・」
私は少年の残したメモ帳を持った。そして、一度地面へと叩きつけ、その後拾った。
「本当だったらどうするのよ」
私は家へ帰った。


机の上にメモ帳を置き、一ページ目を開いた。ただのメモ帳だった。
「叶うわけないじゃない!バカみたい!!!」
私はそう言って、少ししてから引き出しからペンを取り出した。ペンをくるくると回し、「嘘だ嘘だ」と言い聞かせ、手を動かした。
「学校一可愛い女の子になりたい」
私は書いてから「ありえない!絶対にないわ!くだらない!!!」と言ってメモ帳をドアの方向に投げた。メモ帳がドアに当たって、下へ落ちた。ペシッと言う寂しい音を残して。
私はベッドに横になり、
「・・・くだらない」
一言言って、眠った。


「おはよう青木!可愛い!!!」
私は教室の隅で密かに「カッコイイな」と思っていた佐伯君に声をかけられた。
「お・・・おはよう・・・」
私は何がなんだか分からなくて、周りを見まわした。すると、色々な人が私のほうを見ていたのだ。
数人の女子が話しかけてきた。
「青木さん、おはよう。失礼かもしれないけど、私今まで青木さんの顔知らなかったみたいなの。可愛いね!」
私は「え?」と思って、バッグの中に入っている鏡を見た。けれど、何も前と変わっていなかった。変わらず、・・・不細工な顔だった。なぜ可愛いなんて言うのだろうか。私はバッグに鏡をしまおうとした。
(カタッ)
何かが落ちた。メモ帳・・・。もしかしてメモ帳に書いたから・・・?
今日一日、私は可愛いと言われながら家へ帰った。


私はメモ帳が本当なのだと思い、二つ目の願いをメモ帳に書いた。
「成績が全校トップになりたい」
私はメモ帳に頼ってみることにした。全然勉強をしないでいた。
翌朝、抜き打ちテストがあったが、全然苦労しなかった。スラスラと解けていった。
三つ目の願い。
「告白されたい」
朝下駄箱に行くと、ラブレターが三通、花が一本入っていた。カッコイイと評判の男子に、声をかけられ、交際を申し込まれた。そして昨日のテストの結果が返ってきた。満点だった。
四つ目の願い。
「お金が欲しい」
いつかに送ったハガキが当たっていた。現金五万円。母親からお小遣いを貰った。二万円。
「本当なんだ・・・。本当なんだ・・・」


最後の願いになった。
「最後だからちゃんと使わなきゃね」
私はメモ帳をポケットにいれて、ペンも一緒に持った。いつでも使えるように。
廊下を歩く時ふと横を見ると、何人かの女子が噂話をしているのが聞こえた。
「青木とかいってさー、訳わかんないんだけど。何?あれ。精神科行ったほうがいいんじゃないの?調子乗りすぎー。今までのあんたはどうしたって感じ」
私はメモ帳を取り出した。
「私のことを侮辱する奴全員に、何か悪い事が起きてほしい」
私は「ふふん」と鼻で笑って見せ、その場を通り過ぎていった。
私はメモ帳を見て、
「もう一回書いて、叶ったら消せばいいよね」
そう思った。瞬間、背筋が凍った。
あの時の少年が、窓際で私のほうを見て、黒い瞳で心の奥底まで見透かしているようだった。


「どうして!なんで!願いは五つって言ったよね!?お姉さん・・・欲は満たされたんじゃないの!?」
私はもう少年なんて怖くなかった。
「いいじゃない。別に」
少年は私のほうを見て、淡々と話した。
「僕が、なぜこんなことをしているんだと思う?僕は、欲が満たされ、これ以上ないってくらいに、幸せになってほしかったんだ。それで、こうなれば認めてもらえるって、努力する力を持ってほしかったんだ」
少年はふっと消えて、メモ帳もなくなっていた。
「なに今の」
私は家へ帰った。


学校へ行くと、私は誰にも見られなくなった。
昨日までの自分はどこへ行ったのだろうか。少年の言ったことをふと思い出した。
「こうなれば認めてもらえるって、努力する力を・・・」
私は今日一日何にも力が入らなかった。
家へ帰って、勉強をした。昨日までのことを、現実にするために・・・
2004-07-16 23:17:26公開 / 作者:千夏
■この作品の著作権は千夏さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
今晩和!読み切りです!!
今回はいつもと違った感じで・・・。面白いですかね。
ちょっとミステリ風??ってな感じで・・・。
個人的には気に入ってます。
こういうタイプのものってあんまり書かないので。
・・・ではvv
この作品に対する感想 - 昇順
終わり方がかっこいいっすね。なんかのコマーシャルを見ているようでした。ただ、リアルを追求するならば、このコンプレックスの塊のような彼女が、この少年の一言でここまで変われるかと考えると聊か首肯しかねるところがありますね。この少年の様子から彼女への天罰を予想していたのですが、それを裏切って落ち着いた方向へ持っていったのは、セオリー通りでなくて、うまくすれば最高の終幕を迎えただろうなと、ちょいと口惜しく思った石田壮介でした。
2004-07-17 00:04:33【★★★★☆】石田壮介
一場面一場面が短いのに、それでもなおスラスラいけてしまうのは千夏さんの味ってやつですね。そして自分も石田さんと似たような感想を持ってしまいました。彼女に与えられたのは、これから自分を磨いていくという名の道。このような終わり方は、好き……というか斬新です。少年は……彼女を見守る守護霊のような感じを受けました。ラストをもう少し……なんていうか丁寧にできればよかったかなあと。
2004-07-17 08:12:49【☆☆☆☆☆】村越
私も村越さんと同じ感想になりますが、とてもスラスラと読めて良かったです♪そしてラストもまさかこのような内容になるとは思いませんでした☆あと良いなと思ったところは彼女の願いが中学生?高校生?の女の子っぽいありふれた願いだったところです。そこがとても共感できました♪
2004-07-17 10:27:18【★★★★☆】律
面白かったです。最初の方の文からしてホラーかと思い読むのを辞めようかなと思ったんですが…(ホラーは苦手でして)結局最後まで読みました。最初の文でホラーと決め付けなくて良かったです。あと、願い事とても共感しました
2004-07-17 11:14:05【★★★★☆】はるか
最近の千夏さんは、ショートでその実力を発揮されてますね。読み始めてすぐにホラー系に進むのかと思ったのですが、一味違う展開に、思わずニヤリとしてしまいました。この主人公の少女が欲望を満たしても更に満たされきれずに、段々行動をエスカレートさせていって最後は自滅してしまう、というようなラストを想像していたのですが(ワタシならそんなラストに持っていきそうなもので 笑)、主人公が努力する事の必要さに目覚めて締めくくる、という希望を持たせる結末に千夏さんらしさを感じました。読みやすい文章は相変わらず、上手いです。
2004-07-17 12:35:10【★★★★☆】卍丸
読ませてもらいました。何だか少し変わった物語で、新鮮な気分で読ませてもらいました。何だかいろいろと学ばせてもらう作品でした。ですが、これでいいとは思うのですが、ラストがもう少し……って感じでしょうか。あくまで個人的な意見ですの聞き流してもらって全然いいのですが(じゃあ書くな  物語は楽しかったッス。
2004-07-17 20:32:18【☆☆☆☆☆】神夜
計:16点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。