『zero 10〜』作者:紅い蝶 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約4.79枚
【contact10:梶原VS雄太?】

 「帰っちゃダメだ!!」
 昇降口で大声で叫んだときはもう遅かった。男子生徒はすでに玄関の大きなドアに手を掛けていて、なんだよ、と言いながらドアを押してしまった。その瞬間、ピンが外れる。ピーという電子音がうるさく響き渡り、2秒後に爆発した。といってもただの爆発ではない。クレイモア地雷のように爆発の方向が定められており、ドアには傷一つついていない。男子生徒のからと一緒に傘立てが吹き飛んだ。ドアから学校内部に向けて爆発する仕組みになっていて、雄太の体も爆風に捕らえられて壁に叩きつけられるほど吹き飛んだ。幸い大怪我は無かったが、額が少し切れて血が出た。唇も切れていて、そこからも多少なり出血している。離れた位置でこの威力だ。男子生徒の体は見れるようなものではなかった。体中が焼け爛れ、制服は下半身を残してほぼ燃え尽きている。生きているか死んでいるか。そんなものは一目瞭然。当然死んでいた。
 「梶原……!」
 血を拭うと、ドアに「開けたら爆発するぞ!」という張り紙を残してガス銃を握り締め、梶原を倒すために再び中庭へと向かった。真由が男子生徒の死体を見て気分が悪いと言ったがそんなことに構ってはいられない。もしここ
で真由を残して行った場合、真っ先に梶原に狙われるだろうからだ。やつの狙いは基本的には九条真由。離れ離れになるわけにはいかないのだ。
 「真由、辛いとは思うけど……絶対に俺から離れるなよ」
 胸をさするように撫で下ろしながらコクリと頷いた。


 学校の中庭。そこには既に梶原の姿は無かった。どこかの教室に向かったのだろうか。そうなったらマズイ。大量の生徒が死に至る。大人数で囲めば確かに勝機はあるかもしれない。だが、梶原が武器を一つしか持っていないとは考えにくかった。全校生徒1400人に対抗するための何かは持っているはずだ。油断はできない。
 「どこだ……?」
 次の瞬間。目の前に小さな丸いものが落ちてきた。コロコロと転がらず、テープのようなもので地面に張り付いた。パチパチと何かが燃える音。それはその落ちてきたものから発せられている。
 簡易手榴弾。ガチャポンの容器に小さな穴を開け、そこから導火線が出ている。中に入っているのは爆竹。爆発すると同時にプラスチックでできた容器が砕け散り、ものすごい勢いで体に突き刺さってくる。そういった手榴弾だ。殺傷能力は十分にある。
 「うっそ……だろぉっ!!?」
 それが砕け散る。先ほども言ったとおり、プラスチックの破片が突き刺さってくる。ようなことは無かった。とっさに制服を脱いで上に被せたおかげで傷はほとんど負わなかった。制服を突き抜けてきた破片が多少なり体の表面を切り裂いたが、突き刺さったりなどの怪我は負わなかった。真由も無事。真由は雄太と違って全く怪我を負っていなかった。雄太の後ろにいたことが幸いしたのだろう。

 「危なかったな、神野」
中庭に響くあの忌々しい声。人をバカにしたようなあの、梶原の声だ。中庭にある階段にやつはいた。スコーピオンを右手に持ち、先ほどの簡易手榴弾を左手に持っている。その後ろには、大量の死体。全員雄太と同じクラスの男子生徒だった。やはり梶原は大人数に対抗できる何かを持っている。だが、雄太の頭の中はそんなことよりも激しい怒りで一杯だった。
「梶原……!! てめえ!!」
ガス銃の引き金を絞る。ポシュッとガスが出る音と同時に弾が射出される。サバイバルゲームで鍛えた腕は半端じゃなく、遠く離れていて、しかもしっかりと照準を合わせて撃ったわけでもないのに、梶原の顔のすぐ横の壁に命中した。それには流石の梶原も驚愕し、目を見開くかと思いきや、まるで弾道が見えていたかのように冷静だった。いくらおもちゃだとはいえ、ガス銃の威力は半端なものではない。弾道が完璧に読めるなど不可能といっても過言ではないほどだ。それが、梶原には見えていたとでも言うのだろうか。
「そう焦るな。まずは全生徒を血祭りにあげたあと、お前の相手をしてやるからさ。九条真由と一緒に始末してやるよ」
そう言って梶原は踵を返し、階段と校内を結ぶドアに姿を消した。
「みんな……」
真由は両手で顔を押さえて泣いていた。きれいな顔が恐らく涙でグシャグシャだろう。
「真由、泣くな。そんなヒマはないんだ。やつを……止めるぞ」
許さない。何度もそう言ったが、絶対に許さない。外からパトカーの音が聞こえるが、もはや警察なんて関係ない。
「俺がやつを止める」
雄太は改めて、心に強く誓った。
2004-06-21 19:16:03公開 / 作者:紅い蝶
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■作者からのメッセージ
採点方法が変わったので、10という区切りのいい話から新しく投稿させていただきました。

最近忙しくて忙しくて、更新が大分遅れてしまい、申し訳ありません。
しかも他の方の作品を読むヒマもありません。最悪です。ホントに。

今後も更新が遅くなるかも知れませんが、その辺はご了承ください。
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