『奴隷―復讐―恋愛〜愛〜』作者:アブライド / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角1450文字
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原稿用紙約3.63枚

「さぁー、君のしたいことを言ってごらん」
「あんたを……コロス……」

 結局私は奴を殺した。死んで当然だった……でもここに残っている罪悪感は何?いつも誰かが私を見ているようなそんな気分は何でなの?私は当然のことをしただけ……なのに……どうして……。

――……数日前
 私は牢獄の中でもがいていた。”奴”のせいで、奴にしてみれば私はただの奴隷……ひどい仕打ちを受けてきた。でもこれでこの牢獄から出られる。奴は私に言った。
「お前が一ヶ月間もつのなら、私はお前を解き放ってやろう。それまでは―」
 景色はいつも薄暗いもの。明るい光はいつも消えていく。希望という光はどんどん消えていき、いつも絶望が増幅していった。あまりに唐突過ぎる出来事……血が流れないだけましだと私は思い、奴のすべてにおいての奴隷と化した。

――……一年前
 仲良く友達と町を歩いていた。高校の帰り道……奴が黒いサングラスをかけながら私の前に現れた。友達は少し前に別れ、あたりは私たち以外ただ動いているだけだった。
「……だれ」
 無言。決してしゃべろうとしない。笑みすら見えない……それになんでか……すごく、怖かった。初対面でこんなに恐怖を感じたのは初めてで、周りの人は私たちを避けて地球の自転のように動いていた。
「……な、なんですか」
 腕をつかまれる。男の手は強い力で私にしがみつく。決して獲物を離さないように、そして声をあげようとした瞬間、いっきに車に引き込まれてしまった。
 町はそれでも人は……当然のようにうごいていた……

 それから、いろいろなところに連れて行かれた。目隠しをされて、いろんな場所でいろんな言葉を聞いた。何語かわからない……奴の考えはたぶん私をどこかに売り飛ばすのだろう……誰ももう助けてくれない……ずっとこのまま……私は……。
 目隠しをされすでに日にとの感覚もなかった。飛行機や船にも乗った感じもした……トイレはもう何回漏らしたことだろう……そのたびに無理やりに脱がされた……でも、まだそれだけですんでいた……奇跡なのか……

 そのままずっと数日前まで私はそれを繰り返していた。外を見たのはその時が初めてだった。私は犯されることなく奴の指示に従った……奴はずっと私と動いていた。もう奴が隣にいるのは当然なように……。その日私は奴の顔を見た
「……せ、先生……」
 あの時のサングラスで誰だかわからなかったがどうみてもこいつは中学のときの担任だった……でも私には理由を聞くほど余裕がなかった。先生は私をなめるように見つめ、私に初めて触れてきた……

 あの日からずっとそんな生活だった……私の心には復讐の言葉ばかりがこだましていた。ずっとずっと奴の奴隷……復讐……。

 約束の日、私は自由になった。食事、風呂……すべてを久々にして、私は再び私という人間に戻った。そして――……。
「さぁー、君のしたいことを言ってごらん」
「あんたを……コロス……」
 私はその言葉と同時に近くのナイフを突き刺した。あふれる血……返り血となって私にシャワーのように降り注ぐ。これで私は自由だ……。
 そう思ったのに……。

「たった数年……ずっと奴の奴隷……それがなんでこんなに恋しいの……?私はあんな奴に……そんな……。」

 数年がして、日本から離れたある国で私と奴が抱き合った白骨化した死体が発見されたのだった……。


2004-05-31 17:33:08公開 / 作者:アブライド
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■作者からのメッセージ
初めまして。処女作なので自信がありません……ご指摘、感想の方をもらえるとうれしいです。

皆様!感想本当に感謝です!ここまで言われるとは思われず、感想に涙し、指摘に共感されました。またお願いします!
この作品に対する感想 - 昇順
読ませていただきました。これだけ短い中で、しっかりドラマを創っているあたりが巧いですね。サスペンスフルな作風で、読まされました。主人公の「コロス」シーンを冒頭と終盤に持ってくる辺り、主人公が自由になったと思った後の感情の変化、この短い中によくまとめましたね!タイトルとも掛かっていて、ショート作品としてはかなり楽しめました。次回作にも期待してます。
2004-05-27 18:54:00【★★★★☆】卍丸
考えさせられる話ですね。ついつい文章にのめりこんでしまいました。ただ、……が多いような気がします。上手い作家ほどそういったものは使わないと聞きます。雰囲気を壊さないようにして、なるべく減らすともっと良くなるかもしれません。
2004-05-27 19:20:21【★★★★☆】霜
「深い」ですね。主人公が真に感じていることをまとめ、余計な言葉を一切削って削ってこの形になっているように見えました。ラストの一行がまた、独特の雰囲気を壊すことなく保っています。あとの細かい指摘は霜様に同じです。次回作、お願いしたいところです。
2004-05-28 14:32:48【★★★★☆】湯田
初めまして!短編にしてこれは…なんかすごいです!自分も次回作を期待します!アブライドさんの長編が見てみたいです。
2004-05-30 22:56:10【★★★★☆】白い悪魔
短い間によくまとめようとしていると思いました。まず気になった点を(個人的な主観なのですが) まず罪悪感とあるのですが、この罪悪感と最後の恋しいというのは、ちょっと違う感情のような気がしましたので、短編のこの場合は「恋」に関するものに統一してもてもいいかもしれません。またラストの一行、メリットとデメリットがあると思いますが、メリットとしては、はっきりとした結末、そして事実を読み手に認識させるところでしょうか。デメリットとしては、この文章まで、一人称として、語り手の心情、視点をもとに文章を構成したわけなのですが(等身大の私) この一文はその視点を少し離れてしまっています。死んだ後の私が語ったとこになってしまうわけです。(すいません、細かいですね) 処女作ということなのですが、心の描写によいものを感じます。これからもぜひ頑張ってください。
2004-05-31 20:31:19【★★★★☆】晶
計:20点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。