『zero 〜0から始まる連続殺人〜   「1st contact」』作者:紅い蝶 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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【1st contact:連続殺人と全ての幕開け】

 5月10日夜10時。帰宅途中のOLが何者かによって殺害された。被害者の名前は鈴木一美(すずき かずみ)24歳。綺麗な顔はナイフで無残にも切り裂かれ、原型を留めていない。人通りのない路地裏の出来事で、発見されたのは翌日の午前9時だった。そして気がかりなことが一つ。死体のすぐ側には「0」と書かれた紙が置かれており、警察はもちろん、他の誰もが頭を悩ませていた。何か伝えたいことでもあるのか。それともこれから先のことを暗示でもしているのか。この時はまだ誰も、その真実を知る由はなかった。
 第一の殺人から3日後の13日。今度は酔っ払ったサラリーマン村木正二(むらき しょうじ)が殺害された。鈴木一美と同じく顔をグチャグチャに切り刻まれ、どこに何があったのかわからないほどだ。顔は出血で真っ赤に染まり、倒れていたアスファルトにも血が染み込んでいた。そしてまた、死体の側には「0」と書かれた紙が落ちていた。


 「帰りのホームルーム始めるぞ。席に着け」
放課後の滝川高校。全校で1400人という大きな私立高校で、いつも活気に満ち溢れている。グラウンドも広く、サッカーのコート3つ分ある。先程も述べたとおり、この高校はいつも活気に満ち溢れている。だがここ最近は少し様子がおかしく、みんなそわそわというか、おどおどしている。早く家に帰りたい。怖い目にはあいたくない。そんな感じが漂っていた。
 神野雄太(かんの ゆうた)はこの滝川高校の2年生になる。バスケ部に所属し、部活も授業もない暇なときは趣味のサバイバルゲームで毎日を過ごしている。バスケの腕前もサバイバルゲームの腕前も超一流で、中学の時には男子バスケ名門の高校からいくつも誘いを受けていたが、全てを断ってただ人数が多いだけの滝川高校へと進学した。その理由は3つあって、全然知らないやつらばかりのところには行きたくないのと、家から近いところに行きたいこと。そしてもうひとつは・・・・・・
 「ねぇ、雄太。今日も一緒に帰ってくれるんでしょ?」
ホームルーム中に隣の席から話しかけてくるこの女子、雄太とは幼稚園のときからの付き合いでもう10年以上ずっと一緒にいる。名前は九条真由(くじょう まゆ)。もうひとつの理由とは、真由と離れたくない、ということだった。2人は付き合っているわけではないが、いつも一緒にいる。いきなり真由という存在を失ってしまったら胸にぽっかりと穴が開いたような感じになるに違いない。とにかく、雄太は真由と離れたくなかった。それが“恋”だということに雄太自信気付いていないのだが・・・・・・。
 「ああ、いいよ。だから部活終わるの待っててくれよ?」
指で○と作って笑顔を見せる真由。雄太も同じように○を作って笑って見せた。
 真由と話している最中、何やら担任の小針新八(こばり しんぱち)が深刻な表情になったのを確認して2人は会話をやめる。何か大事なことだとすぐに察知したためだ。
 「最近、この近くで2人が殺されたのは、みんな知ってるよな? 死体のすぐ横に「0」と書かれた紙を置いていくためにzeroと呼ばれているわけだが・・・・・・。とにかく、絶対に暗い夜道を一人で歩かないように。いいな」
 そう言ってクラス名簿を教卓の上でポンポンと叩き、全員の顔を見渡す。そして新八の目に留まった人物が一人。クラス1の不良で、空手全国一位の四谷真司(よつや しんじ)普通なら怖がられるはずなのに、意外とがんばり屋で優しい人柄のおかげでクラスの人気者だ。雄太とは中学校のときからの付き合いで、今では親友だ。最初の出会いは喧嘩から。肩がぶつかった時にお互いその衝撃で机や壁に頭を打ち、そのことが原因で殴り合いの大喧嘩になったのだ。真司が圧倒的有利かと思いきや、その勝負は全くの互角で、最後はお互いがぶっ倒れて相打ちとなって幕を閉じた。その後お互いに謝罪するのと同時によく話すようになり、いつの間にか仲良くなっていた。男は拳で語る、ということだ。
 「わかったのか? 四谷」
 人柄は最高なのだが、なぜか教師にはウケが悪い真司は毎日のように注意されたりしていた。今日もそうだ。本人は比較的しっかりと聞いていたのにこの様だ。周りから見ていると同情したくなるほどだ。
 「ちゃんと聞いてるよ。そのzeroとかいう変態殺人鬼に気をつけろってんだろ?オーケーオーケー。さようなら」
そう言って真司は席を立った。友達やクラスメイトに対しては笑顔をよく見せる真司だが、自分のことをよく思っていない教師連中にはそっけない態度で応戦する。それを合図に全員が席を立ちぞろぞろと教室から出て行った。
 新八が嫌われているわけではないが、新八と真司を比べたら真司をみんなは取る、ということだ。席を立って教室から姿を消したからといって、生徒達は不安に思っていないわけではない。全校生徒1400人は不安と恐怖で心がいっぱいで、みんな誰かと一緒に帰るなり迎えを呼ぶなりして一刻も早く家へと帰宅した。部活も今日からzeroが捕まるまで活動停止となり、体育館へと向かった雄太は拍子抜けして真由ととぼとぼと帰宅した。



 夜のコンビニエンスストア。塾帰りにここで夜食のパンを購入して家路についた三田明(みた あきら)。彼は家まで行くのに人通りの少ない道を通らなければ帰れない。そのためzeroの恐怖におびえながらも足早に真っ暗な道を駆け抜けた。途中、電信柱の影に人のような形を見つけ、その手に握られていた月夜に浮かぶナイフを見て驚愕した。気付いたときにはすでに遅く、顔面をサックリと一突きされ、その後は今までと同じように八つ裂きにされてその命を絶った。三田明の惨殺死体が見つかったのは翌日の早朝のことであった。


 「zero・・・・・・か。人を殺して快感でも得てんのか?」
三田がzeroに八つ裂きにされている頃、真司は自宅のベッドの上でそう呟いた。父親が警察官で、その影響を受けたためか不良ながらに正義感が人一倍ある。真司はzeroに対して怒りを覚えつつあった。
2004-05-26 22:35:59公開 / 作者:紅い蝶
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■作者からのメッセージ
こんにちわ。初めてのミステリーっぽいものです。とっても緻密なトリックなどは思い浮かばないのでそんなに期待せずに、ただただ楽しんでいただけたらうれしいです。
まだプロローグみたいな感じですが、これからどんどん展開していく予定です。
それでは^^
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