『ダウト〜そんな彼らの物語〜第一話』作者:向葉 旭 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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―――プロローグ―――

「かのアイーン・シュッタイン博士がそうだったように、万人は常に自らの探求心
 には忠実であるという。」

「・・・・・・・。はぃ??」

何が言いたいんだろう、この人・・・。
突然3年男子二名に屋上に呼び出され、首を傾げつつも黙ってついていくと、
開口一番にこれである。

咲妃<さき>が少々間の抜けた声を出してしまったのにも無理はなかった。

「なんだ?聞こえなかったのか?ではもう一度言う、かの・・・」
「いえ!!アイーン・シュッタイン博士の事はもういいんですけど・・・」

突然意味不明な事を言いだした、目つきの悪い無表情な少年の言葉を制止しなが
ら、咲妃は頭が痛くなるのを感じた。

なんなんだろうこの人・・・。

「では何が分からなかったんだ?」
「ぇ・・・ぃや・・・(今の言葉に何を分かれと??)」
「ぁ〜〜ごめんねぇ〜〜。」

突然に、今まで黙って事の成り行きを見守っていたもう一人の少年が、にっこりと
笑って咲妃の前に現れた。

「この人訳分かんないよね〜〜びっくりさせちゃった〜〜?」
「ぁ!ぃえ・・その・・」
「おい樹<いつき>。俺のどこが分からないと言うんだ?」
「全部〜〜。」
「・・・・・。俺からしてみれば、お前の言動の方がよっぽど不可解なのだが?」

方や無表情に淡々と。方や笑顔でのんびりと。
この対照的すぎるほどに対照的な二人のやりとりがしばらく続いていた。
それでまるっきり蚊帳の外にされてしまった咲妃はというと・・・
(おもしろい二人・・・。)
その溢れすぎているほどに溢れている二人の個性に、好奇心がわき出していた。(ロボットみたいな先輩に、猫みたいな先輩・・・。)

「ドラえもん・・・。」
ふと、連想ゲームのように頭に浮かんだ言葉が口にでてしまった。
「「ドラえもん??」」
二人は同時に咲妃の方に顔を向ける。
「ぁ、いぇっ!!なんでもないです!」
少々赤面しながら、あわてて誤魔化した。
「ふ〜む。」
それをロボット先輩(仮)が、じ〜っと観察するように眺めている。
「なっなんですか??」
「・・・やはり。」
「ぇ?」
「やはり、何とも形容しがたい未確認思想が俺のなかに渦巻くのを感じる。」
「はぁ??」
「それは〜〜つまりね〜〜。」
樹と呼ばれていた先輩が、ひなたぼっこ中の猫のような顔をしながら、の〜んびり
と驚くべき事を告げる。

「臣悟<しんご>くんはぁ〜〜咲妃ちゃんのことがぁ〜〜好きなのよ〜〜」


・・・・・・・・・。は!!!!????
「なっなっえっ!?」
「ななえとはどこの誰だ?」
「えっいやっはっ!?」
「えいやっは?なんのかけ声だ?」
だめだ・・・全然会話がかみ合わない。
「えっほっ本当に!?」
「何がだ?」
真顔で返された。何がだって・・この人・・。
「ホッホントに、わっわたしのこと・・・??」
「・・・そうなのか?」
樹先輩に尋ねる、臣悟先輩・・・。をいをい。
「知らない〜〜。そうなの〜〜??」
自分で言っておきながらなんて無責任さだ樹先輩・・・。
「どぅ〜〜咲妃ちゃんはぁ〜〜??」
「ぇ!どっどうっていわれても・・・(ぁ〜もう、なにがなんだか)」

咲妃が頭を抱えそうになったとき、臣悟の腕が不意に伸びてきて、咲妃をぐいっと
引き寄せた。

「ぇえ!?」
「この感情の名前がどうあろうと俺には関係のないことだ。俺はお前に興味があ
る。だからしばらく観察対象にさせてもらおう。何か言いたいことはあるか?」
・・・ありすぎる。ありすぎるけど、もうどこに何をつっこめばいいのかすら分か
らない状況だ。しかも微妙に先輩と私の距離が近くないか??そしてよく見るとち
ょっと(いやかなり?)かっこいい人なのかもしれない。
「どうだ?」
「どっどうって・・・。」
そのあまりにも真っ直ぐな視線に、目が離せなくなる。
そして・・・なにかに操られるかのように、咲妃はおぼろげな意識の中で呟いてい
た。
「・・・はぃ。」





「よしっ!じゃあこれで咲妃ちゃんも我らが倶楽部の一員だねぇ〜〜。」

・・・・・・・は?
「クックラブ!?」
「うん!はぃ〜これ入部届けね〜〜」
にっこり微笑む樹先輩。・・・ってちょっと待った。
「だれが!いつ!どこに!入部するなんて言いました!?」
「ん〜臣悟くんの観察対象になったんでしょ〜?じゃあ、咲妃ちゃんも臣悟くんの
いる倶楽部にはいらなきゃ〜〜」
どんな理屈だ。
「やった〜〜これで五人目〜〜!やっと愛好会から倶楽部に昇進だね〜〜。」
「なっなっ!!!!」
声にならない抗議の言葉が咲妃の口からあふれ出ようとした瞬間。
「よろしくな。観察対象。」
臣悟先輩が顔をのぞき込むようにして言った。
「〜〜〜〜〜!!」
負けた。・・・・・。

っていうかいったい何部よ?っていうか樹先輩の笑顔が確信犯のものに見えてき
た・・・。っていうか・・・・っていうか・・・。











はめられた。









本当にある日突然に、私は臣悟先輩の観察対象になってしまったようです。

―――第一話―――

お昼のお弁当タイム。
午前の授業が終わった開放感に浸りながら、咲妃は友達と連れだって中庭へとやってきていた。

「あ〜〜〜っ、やっぱり春は眠くなるわ〜〜〜〜っ。」
咲妃の隣で、珠貴<たまき>が大きく伸びをしながら言った。
「でも・・・暖かくて気持ちぃぃよ?」
さらにその隣で小動物のような愛<めぐむ>がふんわり微笑む。
「〜〜〜っか〜〜〜!!可愛すぎるぜ愛〜〜〜〜!!」
「くっ苦しぃよ珠ちゃん・・・。」
ぎゅう〜っと愛を抱きしめる珠貴。
愛の身長より15?は大きいであろう珠貴の胸のなかで、愛はか細い声を出していた。
珠貴と愛。二人は咲妃の中1のころからの親友である。
スポーツ万能スタイル抜群の珠貴。
頭脳明晰マイペース美少女の愛。
校内の女子の中でも群を抜いて目立っていた。
・・・けど、そんな周りの評価なんて咲妃には関係のないことだった。気の合う友達だから一緒にいる、ただそれだけだ。

・・・・・いつもどおり。いつもどおりすぎる二人。いつもどおりすぎる生活。
なにも不安を感じる必要なんてないのに・・・。咲妃の心の中に見え隠れするこの暗い靄のようなモノはなんなんだろう?

「はぁ〜〜っ。」
自然にため息がでた。
「ん?どした咲妃??」
「何かあったの?」
・・・あった。ありすぎるほどにあった気がする。
けど、なんていえばいい?咲妃自身よく現状を把握できていないのに・・・誰かに説明出来るわけがない。っていうかだれか私に分かりやすく解説してくれ。

<っというわけで?ちょっと話を整理しましょう♪>
?三年男子二名に突然呼び出された。
?ロボット先輩(臣悟先輩)に告白される?(いいやあれはなんなんだ?)
改めて・・・<観察対象>にさせてもらう宣言をされる。
?許可する。(いいやあれは誘導尋問だ!!by咲妃)
?猫先輩(樹先輩)の屁理屈で入部決定。(何部かは不明)

そして現在にいたる・・・・と。
整理するまでもない話なのだが、とにかく頭が混乱している咲妃にとっては重要なことなのだ。

「はぁ〜〜〜っ。」
事実を確認して改めてため息が漏れた。
「なんだ〜〜さては男か!?」
「・・・咲妃ちゃんに彼氏が出来たら私泣いちゃぅ。」
ぅるぅるしている愛の瞳を見て慌てて、弁解しなくては!と咲妃が身体を乗り出した時、

ピ〜ンポ〜ンパ〜ンポ〜ン〜

校内放送の開始音に遮られてしまった。
『ぇ〜〜?せっ生徒の呼び出しです?』
聞いてどーする。放送委員に思わずつっこみたくなる咲妃だった。
「なんだ??」
「緊急事態かな・・・?」

『ぇ〜二年三組の西川咲妃さん。今すぐ屋上にくるように』
・・・・・・・・は。
「咲妃!?お前じゃん!!」
「職員室とかじゃないんだね?屋上に呼び出しなんて初めて聞くなぁ・・・」
・・・・・・・・いやな予感。
「咲妃!お前心当たりでもあんのか??」
「心当たりなんて!!・・・・・・あ。」
あった。もしかしたらこんなことしそうな二人組に心当たりが・・・・。
「咲妃ちゃん?」
愛が心配そうに顔をのぞき込んだ。
「まっまさかね!あの人たちでもまさかこんな・・・。」
自身に言い聞かせるように呟く咲妃だった。
『ぇ〜繰り返します。二年三組の西川咲妃さんは今すぐ屋上に・・・』
「お〜い咲妃?繰り返されてんぞ〜。」
・・・そんなまさか、信じたくない。なんで自分が校内放送であの二人に呼び出されなきゃならないんだ?
『ぇ〜更に繰り返します。二年三組の・・・』
「繰り返すな!!!」
そう思わず叫んで立ち上がると、咲妃は脱兎のごとく駆けだしていた。
「咲妃〜後で何があったかおしえろよ〜」
「咲妃ちゃん気を付けてね!!」
背中に声をかけられたが振り向く暇がない。珠貴のニヤニヤ笑いと、愛の心配気な顔が目に浮かぶようだ。




がちゃっ!!!

勢いよく屋上へのドアを開けると、すぐに二人の姿が目に入った。

ピッ。
ピッ??何の音だ??
「二分ジャスト。ほぅ・・・なかなかの好タイムだな。」
ストップウォッチを見つめた臣悟先輩が無感動な瞳で言った。
どうやら咲妃がここにくるまでの時間を計っていたらしい。咲妃の頭の中に<観察対象>という文字がピカピカと点滅した。
「〜〜〜〜!!っていうか、私情で校内放送使わないでください!!!!」
「・・・・そうか。分かった。・・・・なら今度は伝書バトを・・・・。」
なんか全然分かってない。
「ごめんねぇ〜〜咲妃ちゃん。」
臣悟先輩の隣で、樹先輩がにこにこしながらお弁当を食べていた。
その小さな体躯でサンドイッチをハムハムとかじっている。
・・・・可愛い。中3男子にあるまじき姿だと思う。
「はぃ〜〜これ!ジュースあげるから機嫌直して〜〜!」
「・・・はぃ。」
しぶしぶと、手渡されたジュースを口にする。
「・・・ちなみにそれ臣悟くんの飲みかけだけど〜〜。」
ゴホッ!!!
「そういうことは始めに言ってください!!!」
「ぁはは〜〜ごめんねぇ〜〜。」
悪びれもせずに、にぱっと笑って言う樹先輩。
・・・絶対確信犯だこの人。咲妃は改めて思った。
まだ少々赤面しつつ臣悟先輩の方をチラッと見ると、
「なぜ顔が赤い?」
というように、不思議な顔(無表情だけど)をしていた。・・・多分だけど。
2004-05-07 22:53:32公開 / 作者:向葉 旭
■この作品の著作権は向葉 旭さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
創めまして。
勢いで書いた作品です。
続くかも続かないかも続くかも(五七五調)
感想など頂けたら本望です。
では、また。

・・・続きましたね。
ぁはは。中途半端なところで終わってすいません。この日はまだ続きます。(当たり前か)
私もこの人たちは書きやすくて好きなので、嬉しきこと限りなし。です。
<簡単プロフィール〜身長編〜>
咲妃158?・・・平均的。
臣悟175?・・・成長中。
樹153?・・・頑張れ。
珠貴165?・・・スタイル抜群らしいから。
愛151?・・・姫。
詳しい外見は明記していませんので、ご想像におまかせします。
感想などいただければ本望です。
では、また。
この作品に対する感想 - 昇順
学園物好きです。続けてください笑。臣悟先輩見たいなキャラ周りにいたらおもしろいのに、と思ったりしました。
2004-05-02 22:51:50【★★★★☆】笑子
余白や改行が多かった気がして読者はちょっと読みづらかったです。でも感情がストレートで良かったと思います。
2004-05-05 21:06:20【★★★★☆】梓
ちょいと唐突過ぎる冒頭かと思いましたが、ほとんど会話で進むギャグものはテンポが良くていいですね〜。私はこういうの好きです。まあ、点数低めはこれからの展開に期待ってことで、許してください。
2004-05-05 21:08:56【★★★★☆】村越
計:12点
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