- 『妻よ。』作者：コヨリ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
- 全角671文字午前二時十七分。
容量1342 bytes
原稿用紙約1.68枚
私は８７歳の男。
息子が一人。娘が一人。
孫は三人いる。
妻には七年前に先立たれ、その後は息子家族と暮らしている。
息子家族はよくしてくれた。孫達は妻を失った私の心の痛みを和らげてくれた。
私は今の生活にも満足している。
だが私は今、妻の元へ旅立とうとしている。
何かをわずらっているわけではない。死因は老衰と判断されるだろう。
私は布団に横たわっているのだが不思議な浮遊感を感じている。
これが魂が抜けるという感覚か。
朝になると誰かが私のことに気づくだろう。
息子達には迷惑をかける。
どうせなら、ひっそりと一人で死ねばよかった。
だがこれから子供達が無事にやっていけるか心配だ。
遺産は十分とはいえないがそれなりの額を残してやれる。
家族同士の争いだけはするんじゃないぞ。
兄妹、家族仲良くするんだぞ。
…。
あぁ、もうお別れのときが来たようだ。
ばあさん。いや、信代。今お前のところに行くぞ。天国で二人仲良く暮らそう。
さらば、息子よ、娘達よ。
……。
思考は薄らいでいき、彼の鼓動はその運動を停止した。
彼はその一生を終え、愛する妻の元へ旅立ったのだった。
ウィーン、ガチャ！
「お疲れ様です。」
「うぅ…。ここはどこだ？ 天国か？ 信代はどこだ？」
「何言ってるんですか？ ここはゲームセンターですよ。」
「ゲームセンター？」
彼の８７年間はたった１００円のゲームにすぎなかった。 あなたは本物ですか？ - 2004-04-19 03:47:55公開 / 作者：コヨリ
■この作品の著作権はコヨリさんにあります。無断転載は禁止です。 - ■作者からのメッセージ
ふと自分の人生が未来のゲームじゃないかと考えてしまうときがあるんですよね。
漫画の読みすぎでしょうか…。
- この作品に対する感想 - 昇順
-
初めはラストの意味がよく分かりませんでした（此れは私の読解力の問題かもしれませんけど）。しかし読み返すと、なるほど。といったように納得出来ました＾＾テーマの自分の人生が未来のゲーム、ということが面白いな、とも感じます。読みやすい小説でした。やっぱりラストの描写がもう少し詳しくして欲しかったかもです。次回作も楽しみにしています！
2004-04-19 06:36:01【★★★★☆】シイナ今丁度老父が話の中心となっている話を読んでいる所で、凄く惹かれました。87年間がゲームだった…嫌ですね（苦笑）私もふと考えることがあります。もしかしたらやり直せるんじゃないだろうか、と。無理なんですけど（笑2004-04-19 15:10:34【☆☆☆☆☆】柳瀬羽魅わ、点数入れ忘れてました！スイマセン；2004-04-19 15:11:01【★★★★☆】柳瀬羽魅最後の展開がよかったです。自分の存在の不確かさというか、なんというか。ちょっと怖いですね（笑）2004-04-19 16:13:45【★★★★☆】晶最後の締めがはっとさせられてよかったです。もっと描写があればおもしろくなりそうですが、これはこれでありのおもしろさだと思いました。2004-05-07 21:19:26【★★★★☆】笑子計：16点
- お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。