『Mechanical〜機械仕掛けのヒト〜 3』作者:五月雨 夏月 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角1090.5文字
容量2181 bytes
原稿用紙約2.73枚
「えーっとですねぇ…ジュノ君?博士ってだぁれのコトかなー?」
突然前に飛び出した不自然さを誤魔化すように、ゼロはおちゃらけた言葉とへらへらとした笑みを作った。
それに気付いたのかそうでないかは定かではないが、ジュノは怪訝そうに眉をひそめた。
「誰だ?」
相変わらず短く素っ気ない言葉に、ゼロは苦笑した。
つい先程自己紹介したばかりなのに、もう忘れるか、と。
…まぁ、あんなに騒いでた中で自己紹介やったんだ、忘れるのもしょうがない、と思いはするが。
「……っと。俺はゼロだけど?自己紹介の意味なんて微塵もねぇなぁ」
ゼロがそう言うと、ジュノはなにかを思案するように目を細めた。
…かと思うと納得したような目をする。
表情が動かない人間だと思っていたのに、些細で、そして多彩な変化を見せる。
ジュノがそんな人間だとは思っていなかったなと、ゼロはふっと笑った。
先入観だけで人を見てしまうことは、よくあること。
だが、すっかりその通りの人であることは、まずない。
ゼロは、そのことにはじめて気がついたかのような目をしていた。
「…ゼロ…か。そんな名前を聞いたような気もするな…」
(なんだ、覚えててくれてんじゃん…)
ゼロは、ジュノのその発言に、ほんの少しだけ目を見張った。
…だが、数秒後に、それが本題とズレていることに気付く。
慌ててゼロは咳払いをし、もう一度ジュノに問いを向けた。
「…で?博士って誰のことなのさ」
「お前が知る必要などない」
あまりにも早すぎる返答。
なんとなく、ゼロはこれ以上追求する術を失った気がした。
なんと言えばいいのか迷っていると、ジュノがふっと微笑った。

「…どうしても…知りたいと?」

(え?教えてくれるのかっ!?)
予想外の展開に、ゼロは困ったように眉を寄せた。
それを言葉の意味が理解できていないと思ったのだろうか、ジュノはもう一度、少し付け加えて繰り返した。
「どうしても、博士のことが知りたいというのか?」
ジュノが何を考えているのかなど理解できなかったが、とりあえずゼロはこくんと頷いた。
それを見たジュノは、昔を思い出すように、懐かしそうな表情を見せた。

「…博士…とはな……俺の父のような…存在なんだ…」

ジュノはそこまでをゆっくりと、噛み締めるように言った。
(父?博士が?まさか養子とか?)
ゼロが訳が分からないことを表情で示すと、ジュノはふっと笑った。
「……話してやるよ…。俺のこと知りたいなんて言った奴は初めてだからな」
2003-09-24 21:41:40公開 / 作者:五月雨 夏月
■この作品の著作権は五月雨 夏月さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
お久しぶりです、(はじめましての人ははじめましてかな)ご無沙汰しておりました、五月雨です。
かなりスローペースな更新のため、愛想を尽かされただろうとも思ってしまいますが…気長に読んでくださると幸いです。
また微妙なところで終わらせたので…続きは早めに書きたいと思っています(苦笑
では、失礼します。
この作品に対する感想 - 昇順
感想記事の投稿は現在ありません。
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。