『君との時間 《完》』作者:ニラ / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角18855文字
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原稿用紙約47.14枚
…ピー    と言う音と共に医者は時計を見て、「午後六時三十分」と言って出ていった。そして、ベッドにいる〜に親が泣きながら覆い被さった。そして、部屋の外で、〜は這いつくばった。
「どうして…どうして!…・・」
そして、その後聞こえるのは、外で降っている雨の弾ける音と、部屋から嘆く声だけだった。

《第一夜》
俺は、カーテンの隙間から漏れ出してくる日差しで目が覚めた。起きても2〜3分はベッドの上でぼ〜…・っとしている。そして、机の上には、受験の勉強道具がどっさりある。そして、寝ぼけていると、下から親の声が聞こえた。
「海奈!あんたに電話だよ!早くきなさい」
彼はぶつぶつ文句を言いながら下に下りていき、受話器を取った。
「はいもしもし、海奈ですが…」
「やっほ〜!お目覚めパッチりかい?海奈君!」
元気な声が聞こえてきて、少し彼は目が覚めた。
「七瀬!お前…今日日曜なのにどうしたんだ?」
「何言ってるの?今日は海奈君が買い物付き合ってくれるって言ったでしょ?」
「ああ、そうだった…じゃあ、公園で待ってるよ。」
「分かった!すぐ行くね!」
プツっといきなり電話は切れてしまった。そして、彼はまた上にいって、準備を始めた。準備が出来ると、下のリビングの机の上に置いてあるコーンフレークをほおばり、貯金箱からお金を出して財布に入れると、靴を履いて玄関のドアを開けた。
「車に気をつけなさいよ…」
「もう中学生じゃないんだから平気だって!昨日受験も終わったんだし。いってきます!」
彼はそう言うと、走っていった。
「全く・・海奈がもう高校生なんてねぇ…」
「そうだな・・受かってればのはなしだがなぁ…」
母親の隣に、いきなり父親が現れた。
「あなた…いつからそこにいたの?」
「さっきからずっと隣にいたじゃないか…」
彼は「光輪海奈」今年で、中学を卒業し、これから高校生の第1歩を踏み出そうとしている青年。
海奈が公園に行くと、すでに幼馴染の「木野七瀬」がいた。彼女が海奈の存在に気づくと、彼女は手を振り始めた。
「悪い!待たせたか?」
海奈がそう言うと、彼女は首を振り、「ぜ〜んぜん!」と笑いながら答えた。
「じゃあ行くか・・」
二人は公園のそばにあるバス停に行き、バスを待った。
「高校…受かってると良いね・・」
彼女はちょっとふざけ気味で言った。
「そうだな…また二人で偶然同じ高校受験したんだよな…もうびっくりしたよ。」
そう二人で話をしていると、バスがきた。二人はバスに乗りこんだ。しかし、バスは満員状態で、二人はくっついてなきゃ乗れない状態だった。
「ごめん・・狭いから…」
「気にしないで・大丈夫・・」
二人でぎゅうぎゅうになりながらも、壁に寄りかかっていると、突然バスが揺れた。その時、二人は弾みで抱き合った状態になってしまった。そして、二人は顔が真っ赤になり、お互いに顔をそらした。
「ごめん…」
「気にしなくて良いって・・つ・着いたよ!早く降りよ!」
七瀬は海奈の首筋をつかんで、もうダッシュでバスを降りた。
「ふう…やっとついたね!海奈君!」
彼女が声をかけて、後ろを見ると、海奈は手を膝において、ぜえぜえ言っていた。
「俺・・運動苦手なんだぞ・・そんなに走らないでくれよ・・」
「あ!ごめ〜ん!じゃあ行こうか。」
彼女は疲れている海奈を連れて、ショッピングモールへと入った。そして、海奈を色々な店へと連れ回した。そして、お昼になると、すぐそこにあった「○クドナル○」へ入った。二人はボックス席に座り、ハンバーガーを食べ始めた。
「で、次はどうするの?」
海奈が冷たい目で見ると、彼女はえへへ!と笑って、予定を喋り出した。
「次はね!まず今日半額セールやってる○ニクロ行って、その後○イエーでくじ引きと、携帯ショップで携帯買いにに行くの!」
彼女はわくわくしながらそう話した。海奈は、持ってきた小説を出して、読み始めた。彼女は、にこにこしながらジュースをゆっくり飲んでいた。
「携帯か…俺も買っちゃおうかな?…親はOK出してるし、買いに行く暇なかったもんな・・・」
彼女は思いっきり立って、「じゃあ早く行こう!携帯の半額終わっちゃうよ!」と言った。海奈はそれを聞いて、食べ終わった後の紙袋を捨てて、○イエーへと向かった。携帯を売っている所には、「新規0円」のチラシが目に入った。そこで、海奈は携帯を手に取り、どれを買うか迷った。すると、紙袋を持ってきた七瀬が現れた。
「早いな・・で、どんなのにしたんだ?」
七瀬は、自慢げに袋から箱を出し、箱から携帯を出した。
「写○ールと、ムービー○−ル・オマケにテレビ機能まで付いた優れもの!これぞ正に流行の最先端だよ!(?)」
「じゃあ、めんどくさいから俺もそれにしよう」
と言う事で、海奈は七瀬と同じ携帯を買って、その場を後にした。次に、七瀬の行きたい○ニクロと、くじ引きをやって、今日はお開きにした。家に帰って、携帯の設定をやっていると、いきなり携帯が鳴り出した。
「もしもし?」『あ!海奈君!かけて見たよ〜!』
「なんだ…何の用?」『実は、明日一緒に行かない?あたし方向音痴だからさ・・』
「別に良いよ」『ほんと!ありがとう!じゃあ今日の場所で待ってる』
そして、切れてしまった。明日は、受験結果の日、その日を待ちながら、海奈は空の流れ星を見て、祈っていた。

         「明日は受かりますように・・」

《第二夜》
今日は珍しく早起きだった。テストの発表のこともあるが、きっと七瀬が待っているからと言う考えの方が正しいだろう。いつもならここで2〜3分ぼ〜っとしているのだが、今日はなぜか、すぐに支度を始めた。そして俺は、いつもより早く下に言って、和室にある仏壇に手を合わせた。
{姉さん・・今日はいよいよ受験結果の日です。どうか合格するよう祈っていてください}
海奈はそういうと、朝ご飯も食べずに「いってきます」と声をかけ、家を後にした。そして、昨日の公園に行くと、木陰で七瀬が待っていた。今日はいつもよりすごく暑いので、木陰にいたのだろう。海奈が七瀬に呼びかけると、七瀬はそれに気づき、手を振り始めた。そして、こちらに向かって走ってきた。
「遅いよ!海奈君!」
「まあまあ家宝は寝て待てと言うじゃないか」
「?…まあ良いよ!早く行かなきゃ充満して見れなくなるよ!」
やはりいつもの様に七瀬は走り始めた。海奈はなぜか今日だけは着いて行く気になった。それはなぜか走らないけど、なにか安心感が込み上げてくるのが分かった。そして、二人は息を弾ませながら、学校の正門に向かった。しかし来るのが遅くて
もう充満状態だった。二人が辺りを見回してみると、泣いている人、親と抱き合っている子、胴上げしている子と色々いた。それに気を取られ、海奈は七瀬にぶつかってしまった。彼女を見ると、なぜか溜め息をついた。
「ふう…また海奈君に負けちゃったよう・・」
その言葉を聞いて、海奈が身を乗り出して見て見ると、受験?234番は掲示板の3番目にあった。そして、四番目に七瀬の番号があった。どうやら、3位・4位通過したらしい。二人はあまりのうれしさに、泣きながら抱き着いてしまった。その時、四方八方からふざけ気味の声が上がった。そして、二人は顔を見合わせて、また真っ赤になりながら離れた。
「とにかく、俺親に知らせてくるよ!」
電話を探しに行こうとすると、七瀬は海奈の首筋を引っつかんだ。
「ちょいまち!あんたはなんで携帯を買ったの?」
海奈は苦笑いして携帯を取りだし、なれない手つきで番号を押し始めた。そして気が着くと七瀬が隣からいなくなっていた。探す事が大事だと思い、携帯に彼女の番号を入れて見た。何度も着信音が鳴っているのにもかかわらず、全く返事が無い。海奈は嫌な予感に見舞われ、走って探し始めた。そして、学校の生徒用玄関に差し掛かった時、上から何かが落ちてきて、その衝撃で倒れた海奈の上に乗っかった。良く見てみると、制服を着ていて、髪が肩ぐらいまである女の子だった。その子は下の海奈を見ると、誤りもせずチーターのように走って去っていった。
「何だったんだ…」
すると、その音が聞こえたのか、何処からか七瀬が駆けつけて来た。そして、海奈を見つけると、ポケットからばんそうこうを取り出し、手際良く手当てした。
「七瀬お前何処いいたんだ?心配したんだぞ」
七瀬は一瞬ギクっとして、顔を渋らせたが、「大丈夫!」と言った。そして、その後は二人で一緒に結果を報告してから、いつもの用に○クドナルドに入った。
「さっき本当に大丈夫だったのか?なんか大変そうな顔してたけど」
彼女はそれを聞いて、少し落ちこんだ感じになった今日は、あまり気分が乗らないので、気持ちの整理をするということで、早めに解散した。でも、海奈は七瀬の押さえていた右腕が何だったのかがずっと気にかかっていた。そして、家に帰ってからも、海奈はずっと寝れずにいた。本を読もうと思い、お気に入りの本を適当に開いたすると、「私は今死ぬ方が良いのか、最後まで苦しみながら生きていく方が良いのか」と言う嫌なページが開かれてしまった。なぜかこの部分が、他の本を読んでいても忘れられなくなった。仕方が無いので、本を閉じて、パソコンを立ちげて見た。やはり、いつまでたっても忘れられない。そして、海奈は自分が経営するホームページに行って見た。いつもの様に掲示板に書いてあることをさっと読んで見る。すると、一人だけ始めてきている人がいた。海奈がそのレスを見てみるとこう書いてあった。
「3/28(金)2:30「もう嫌だ」」
名前を見てみると名無しの状態なので、きっといたずらだろうと思い、今日はパソコンを終了した。そして、海奈はベッドに横になった。そして、2・3時間は経っただろうか…だんだんとパッチリと開いている目が閉じかけてきた。そして、目が閉じた瞬間、なぜか七瀬の顔が現れた。悲しそうな顔をして、がけから飛び降りた。「七瀬ェー!」そういったときには、汗がびっしょりで、手を上げた状態だった。起きて見ると、もう4時ごろになっていた。春休みなので、いつもなら金色の光が窓から差してくるまで寝ているのだが、今日はなぜか2度寝をする気になれなかった。海奈は急いで服を着替えると家から飛び出した。すると、いつもの公園で、七瀬が一人パジャマ姿でブランコに座っていた。その顔は、にこにこしていた。誰かと話してるのかと思い、行って見ると、七瀬は空に咲いているようにある星を見ていた。海奈が近づくと、七瀬はいつものように手を思いっきり上げるのではなく、小さく手を振った。
「どうしたんだ?こんな時間に?」
「えっとね・・お花見!」
海奈はその言葉の理解に苦しんだ。すると、七瀬は立って背伸びをした。
「だって気持ち良いじゃない!空は満開!きらきら光る桜に、吹きぬける涼しい風!
あれにもうすぐ届くようになるかなと思うと…」
彼女がそう言うと、はっと口を閉じた。すると、慌てて帰っていった。
「またね!今日はお開き!明日も会えたら会おうね!バイバイ!」
それを聞いた海奈は、本当に彼女はどうしたのか気になった。そして、横を見ると、山のようになっている滑り台から少しずつ太陽が出てきているようで、海奈は日の出を見てるような感じになった。そして、ズボンのポケットに手を突っ込み、肩を上げて寒そうに帰っていった。そして、また心の中で、こう叫んだ。
       「どうか、彼女が元気になるように」  

《第三夜》
今日は三月最後の日…俺の誕生日だ。合格したときが重なり、いつもの3倍ぐらいは派手にやった。今回はいつもと違い、合格祝いと誕生日のプレゼントがまとめて父と母がくれた。いつもなら、父母合わせて一つだった。誕生日に貰えたのは、部屋に欲しかった薄型テレビと、通学用の自転車だった。そして、今日は珍しくいつも誕生日に来る七瀬の姿が無かった。親子三人でのパーティが終わると、その後は自分の部屋にゲーム機を持っていき、この際だからと思って部屋を片付けた。その時、また携帯がなった。着信画面を見ると、彼女の名前が浮き出ていた。
「もしもし?七瀬?」{誕生日おめでとう!ごめんね今回来れなくて・・}
「いいって!それより今お前何処いるの?」{旅行で今「京都」来てるんだ!}
「ほぇ〜歴史嫌いのお前がなぁ〜」{お土産買ってくるから楽しみにしてて!}
携帯が切れると、メールが送られてきた。そこには、京都のお寺の前でピースをしながら笑ってる七瀬が写っていた。そして、その写真を見ると、なんだか気合が入ってきて、30分ぐらいで部屋掃除が終わった。そして、いつもの様にベッドで寝転がりながら小説を読んでいると、またあまり良くない文が出てきた。
[人は死にたくても死ねないだから恐怖に見舞われ、楽なことをしようとする]
その文を見たとき、また背中に悪寒を感じた。そして、またその後を読む気にはなれず、本を閉じて、パソコンを立ち上げた。すると、またあのレスが更新されていた。
「3/30(土)6:40「苦しみたくない」」
この二つのレスは、一体何の為に書きこまれているのかは分からないが、これを書いている人は、きっと何かの不安があるようだと思い、気になった。そして、俺はそのレスに、書き込みをした。
「3:31(日)7:45「何か相談があるのならメールしてください相談に乗ります」」
そう書き込みをして、パソコンを切った。そして、やることが無いので、外へ出てみた。いつもの公園に行くと、当たり前だが、七瀬の姿は無かった。いや、いて欲しかったのだろう。この不安な気持ちを七瀬に言いたかったのだろう。でも、それは叶わない、いつまでもここにいても仕方が無いので俺は公園を後にしようとした。その時、目の前にとんでもない光景が出てきた。なんと七瀬がそこで手を振っているのだ。一度目をこすって見ると、幻覚だったのが分かった。俺は、いつのまにか、七瀬を気にし始めているということを自覚した。そして、なぜか涙が出てきた。どうしてだろうと思いながら、いくら拭っても出てくるのだ。その時俺は考えた。
「もしかして…あの言葉って!?」
海奈は思いっきり自分を殴った。
{いやそんなわけない・・・大丈夫だって!元気そうな写真が来たじゃないか!}
俺はそう思う事にして、公園を後にした。そして、帰り道をとぼとぼ歩いていると、大柄の男が二人やってきた。その男達は、海奈にぶつかると完璧にわざとな事をし始めた。
「い・痛てえ!この野郎!金出せおら!」
それを聞いた海奈は、今までに見せた事の無い、瞳孔の開いた目で睨んだ。すると、男達は悲鳴を上げながら、逃げていった。そして、その後に、家にゆっくりと入った。すると、母親が血相を変えた顔で海奈を見た。
「海奈!大変よ!七瀬ちゃんが!…七瀬ちゃんが!」
「何があったんだ!早く言え!」
「七瀬ちゃんが…お土産をあなたに送ってきたのよ!」
海奈はこけた。そして、海奈はそのお土産を持って部屋に戻り、箱を開けた。中には綺麗な青みのかかった透明なガラス細工で、キーホルダーに出来るようになっていた。海奈は、説明書を読んで見ると、こう書いてあった。
「このキーホルダーは、二つに分かれる仕組みになっていて、この二つを二人で持っていると、永遠に別れないようになる不思議なガラス細工です。」
それを読んだ後、もう一つ手紙が入っていた。
「海奈君!久しぶり!もうすぐ帰ってくるよ!このお土産は、本当に大切だと思う人にあげてね!そう言う物だから!じゃあ4月5日に会おうね〜」
それを読んだ海奈はまた涙を流していた。
「これを付けて欲しいのは…て何いってんだおれ!まあいいや!寝るとするか!」
そう言うと、海奈は携帯に付けておいた。そして、何もする気も起きず、夕飯も食べずにベッドに飛び込んだ。

海奈が起きると、いつもとは違い、外はにごったような気持ち悪い色だった。海奈が起きあがっていると、雨が弾ける音を何回も出していた。海奈はカーテンをすぐさまに閉めると、またベッドに寝転がった。そして、ずっと天井を見ていた。そして、何を思ったのかすぐ起きあがると、服を着替えて、下へ降りていった。そして、リビングへ行って見ると、机の上に一つの張り紙が置いてあった。
「今日から父さんと旅行だって行ったの憶えてるよね?行っちゃうから、一人でご飯とか適当に過ごしてね!二日分のあなたのご飯のお金おいとくから」
それを見た後、海奈は冷蔵庫をあけて見た。ちょうど良くニ〜三枚に切られたハムが置いてあったので、それをパンに挟んで食べた。そして、また部屋に上がると、パソコンを立ち上げた。そして、いつもの様にホームページを見て、掲示板を見てみる。今日は、いつもと違い、前まであったあのレスが、落ちているのだった。きっと、やはりいたずらだったのだろう。そして、PCの方のメールをチェックして見ると、二通のメールが来ていた。一つは、いつも言っている通信販売のサイトの予約品入荷のお知らせだった。もう一つは、無名のメールだった。
「ありがとうございます。でも、もう必要ありません。おかげで解決しました」
そう書いてあった。何が何なのか分からないので、パソコンを切った。すると、家のチャイムがなった。下に降りて見て、テレビを見てみると、傘をさして、立っている黒髪の女の子が立っていた。
「どちら様でしょうか?」{あ・あの・・実は言いたい事があって来ました!}
彼女はそう言うので、仕方なくドアを開けてあげた。すると、彼女は遠慮がちに入ってきた。そして、お茶を用意すると、彼女は口を開けて、話し始めた。
「あ・あの!掲示板に書き込みしてくれてありがとうございます!」
「え!?って事は君が書いたの?僕のホームページの掲示板に…」
「いえ!弟です!弟は危ない病気にかかっていて、苦しみのあまりあのレスを上げたんです!そしたら、そこの管理人が書き込みをしてくれて、そのおかげで弟は勇気が出て、手術に成功したんです!」
「でも、何でここだと分かったの?」
彼女はもったいぶって言った。
「実は…私もここの近くに住んでいて、メールアドレスを頼りに来たんです。」
「へえ〜そんな事を・・・」
彼女は顔を赤らめる。そして、彼女は持っていた袋を机に置き、帰ろうとした。それを海奈が引き止めた。
「待ってください!これは何ですか!それとあなたは誰ですか!?」
彼女はゆっくりと海奈の方を向いて、一息ついた。
「それは弟を助けてくれたお礼です。あと、私は『白夜 霜月』と言いますでは、ありがとうございました。」
彼女はそう言うと、ゆっくりとドアを開けて傘をさし、走り去っていった。海奈は玄関を見ると、何かが落ちていた。それは、あの七瀬のくれたキーホルダーだった。両方ついているので、多分落としたのだろうと思った。そして、「いつか返そう」と思い、ドアを閉めた。
「ん?待てよ・・あんな言葉を書いただけで助かる物かな…?」

《第四夜》
今日から遂に高校生活の第1歩が始まる。しかも、今日は七瀬の帰ってくる日なので、いっそうやる気が出る。今日は授業は無いらしいと聞くので、ペンケースとノート一冊で足りると思いそれで届いていた制服に着替えた。制服は全体に赤っぽいのがかかった黒い制服で内ポケットもついている。そして、無駄な物が無いので、すごく動きやすかった。そうして、家を出ようとすると、母親が「とうとうあんたも高校か・・」といって泣き出してしまった。それを気にしながら行って来ますと言い、家を後にした。そして、駅への道を歩いていくと、いつも待ち合わせている公園があった。しかし、今日はそこには七瀬はいない。首をかしげながら、公園を後にした。そして、駅へ付くと財布を忘れた事に気がついた。ない!ない!とあせってる俺は他の人から見ればただのバカに見えただろう。そして、財布は母親が内ポケットに入れてくれていた事に気がついた。そして、何とか駅を乗りきった。そして駅の中に入ってホームへ行くと人ががやがやと込み合っていた。その時俺は偶然に七瀬の姿を発見した。俺が七瀬の方へ行こうとすると、電車に入る人に流されて見失ってしまった。やはり、流れに逆らう事は出来ずに、電車に乗ってしまった。そして、電車から降りて待っていると、七瀬の姿は一向に見えない。とうとう発車してしまったときも、見る事は出来なかった。そして、仕方なく駅を出て、高校の前まで来ると、高校は新一年生の母の溜まり場となっていた。仕方なくその間を分け入って高校へ入っていくと、いきなり2・3年生の嵐!
「この部活に入ろうよ!」
「君体格良さそうからここはいろう・・ね?」
俺は・・逃げた。カバンを振り回して先輩たちを蹴散らして、急いでさっき見たクラスに入った。
「はあっはあっ…疲れた…」
「やっほ〜海奈!」
そう呼ばれたとき、俺が振り向くと、中学3人で良く遊んだ「春巻 覇矢」だった。
「なんだ…覇矢か・・・」
俺がそう言うと、覇矢は落ちこんだ。周りを見渡してみても、七瀬の姿は見えない。そんな中で、高校生活の第1歩を踏んだ。そして、学校から帰ってみると、母親の電話の話が聞こえた。
「ええ・・ハイ・・分かりました海奈には言わないようにします・・でも本当なんですか?七瀬ちゃんが今日発作起こしちゃったって・・ハイ・・明日は行くんですね・はい」
それを聞いた瞬間、俺は持っていた荷物を落とした。そして、涙があふれてきた。こんな事で泣くなんておかしいと思っても、何処までも雪崩のように溢れてくるのだ。そして、涙を拭いながら、俺は部屋に駆け込んだ。そして、ベッドの隅でその日は泣きじゃくった。何故かやっと分かったような気がする俺は七瀬を好きになっている。きっとそれで思ってしまうんだ・・「彼女が死んでしまうんじゃないか」って事を・・
気がつくと朝になっていた。今日から高校の授業が始まる。まだ部活動はやら無いが、七瀬が来てくれる事を願っているだけで何も考えられなかった。そして、母親は何も言わず、おれの隣に来て、こう言った。
「海奈…実はね・・七瀬ちゃんの事なんだけど・・」
「ああ・・知ってるよ・・発作起こしたんでしょ?昨日聞いちゃって・・でも今日は来るんだろ?」
それを言った瞬間母の顔は薄暗くなった。そしてその先は何も言わなくなった。仕方が無いので俺が鞄を持って出かけようとすると、母が玄関に来た。
「今日は早めに帰ってらっしゃい・・・大事なようがあるから」
そう言うと、また母はキッチンに戻っていった。そして、俺は変な感じはするが、学校へと出かけた。やはり学校へ行くと、部員の嵐が待っていた。
「君!体格言いから入りなよ!力つくよ!」
そんな事ばかり言っている2・年生を鞄を使ってやり過ごし、教室へと入った。しかし、一向に七瀬の席には誰もつかないまるで最初から誰もいないかのようになっている。そして、お昼までの授業が終わると、飛ぶように家に帰った。すると、母が出かける用意をしていて俺にも服を渡した。準備が終わると母がタクシーをよび、俺達は病院へと向かった。すると、一つの部屋に七瀬の親が立っていた。俺がお辞儀をすると、明るい顔で、手を振ってきた。まるで七瀬であるかのように。
 
「え!?病名が分からない!?」
俺が医者に向かってそう言うと、医者はふう・・と溜め息をついて、話を続けた。
「レントゲンを見ても、何がなんだかわからないんだ・・一つだけハッキリしているのは一種の心臓病のようだ。でも、世界中の治療薬でも治せない物だ・・」
海奈はあせり始めた。自分の嫌な感じはここから来ていた事だったということが分かったからである。
「一つだけ・・治療法があります…」
医者の言葉にびっくりした。海奈は机から身を乗り出す。
「どうすれば良いんですか!?」
医者はしばらく無言になって話し始めたそれを言った瞬間、海奈は愕然とした。
「そんなのって・・・ありかよ・・」
七瀬のいる病室に行くと、七瀬がひさしぶり!と声をかけた。海奈は七瀬に悟られないように、いつもの顔を見せた。
「今日で退院だよ!しばらくは病院に行かなくちゃならないけど!これから一緒に行こうね!」
「ああ・・・そうだな・・・」
彼女としばらく話をした後、海奈は一言も話さず、帰って行った。そして、家に帰ると、何を考えたのか、パソコンのホームページを3時間もかけて改造し始めたのだ。そして、その日は寝た。                       ・
朝になり、携帯がなった。相手は七瀬だった。やはり予想していた通り、「今日もいけない」と言う言葉だった。それを聞いた後、学校に行こうとすると、あの時の女の子が現れた。
「こんにちは・・久しぶりですね・・」
「あなたは・・あの時の・・」
「霜月で良いですよ。」
そして、その女の子と一緒に言った。
「そうですか…そんな事が・・」
「でも、彼女を助けるにはどうすれば良いのか分からない」
「簡単ですよ!」
海奈はその言葉に反応した。霜月は話を続ける。
「自分は元気だからお前も早く気合で治せ!って感じの姿を見せればいいんですよ!つまり、大事なのは相手を勇気づける事!」
それを聞いたら、俺はなんだかスカッとした。そうだな・・そうすれば良いんだな!
そうすれば、彼女に勇気をあげられる!そして、俺の昨日考えた計画は、夏休みが終わった後に始めよう・・
    「彼女を助けるために…」

《第五夜》
あの日から、2ヶ月経った。そう、彼女が助からない事を知ったときからだ。その事を聞いたときに、海奈は既に考えていた。「身代わりとなるための方法」を・・
そんな事を考えながらも、七瀬と一緒に行っていた。もちろん休日とかもよく二人で出かける事があった。彼女は自分がもう助からない事をうすうす感づき始めていたようだった。でも、彼女が泣いている姿は一回も無かった。まるで死ぬ事が悲しくないような表情でいた。そして、中間テストが終わった後、俺はテストは全く普通だったと思いながら家に帰った。俺は高校1年の中ではトップクラスだった。同じく七瀬も一緒だった。そして、テストが終わった後の帰りに、みんなで夏休みに旅行へ行かないか?と誘って見た。俺と一緒にいる友達はもちろん気がつくと七瀬の友達も一緒に計画会に来ていた。俺はあまりやる事に興味を持たないが、やる事ならしっかりやろうとはする。俺はいつもの様に帰宅後に七瀬の家に遊びに行った。七瀬は待ってましたと言うばかりに思いっきりドアを開け、出迎えてくれた。今日は親がまた留守なので、晩御飯を食べさせてもらう予定だったのだ。そうして、俺は食べ終わって、七瀬に連れられて七瀬の部屋に行った。
「ここがあたしの部屋!どう?綺麗でしょ?」
彼女がそう言って自慢げに言ったので、ゆっくりと辺りを見回してみた。部屋は全体的に白で、ポスターやごちゃごちゃした物が置いてなかった。あるのは少し大きめの家具とパソコンぐらいだった。
「うむ!中の上ぐらいだな!」
俺がふざけてそう言うと、みぞおちに思いっきりつっこみを食らった。俺が痛くてむせていると、彼女は窓を開けて、俺に質問した。
「ねえ…海奈って・・好きな人いる?」
それは突然な答えだった。俺は、この言葉にどう答えれば良いか分からなくなった。そして、とりあえずこう答えた。
「ぁ・・ああ・・いる・・」
そう答えたら、二人の間につめたい霧のようなものが入り込んできたような感じがした。彼女は海奈の方を向かず、窓ばかりを見ている。俺が肩を叩いて見ると、彼女が泣いていたのが分かった。
「ねえ海奈…あたし・・もうすぐ死んじゃうんだ・・どうすれば良いの!」
彼女は海奈の胸に飛び込んで泣き出した海奈はゆっくりと頭をさすってあげていた。海奈は小声で七瀬に向かってこう言っていた。もちろん気づいてはいなかっただろう。
〔大丈夫…俺が絶対に助ける…この命に代えてでも…〕
彼女はしばらく泣いていて、気が楽になったようだった。そして、海奈にまた明るい顔で帰り際に「ありがと・・もう大丈夫!」と言った。どうやらもう吹っ切れたようだった。俺は、ゆっくりと誰もいない家に帰っていった。次の日、また放課後に集まって、夏休みの旅行の準備をしていた。ここの高校は宿題は出ないし、専用のバスや飛行機がある超名門校で、成績でA・B・C・Dに分けられている。そして、Aクラスの人は学校のあらゆる部屋と乗り物を使って良い、このメリットがあるから、毎年1000〜5000人が挑戦してくる。その前に、中学の成績がオール5なのと、テストの点数が99点以上だと、無条件で入れる。こう言う学校なので、旅行時の費用は何とか助かっている。そして旅行先はみんなの要望があって、南へ行くことに決定した。そして、その日は荷物と集合時間を決めて終わった。そして参加者は「光輪海奈」「木野七瀬」「藤村軸」「榛原翔」「好鏡花」「日比野康人」「古ヶ崎可憐」そして何故か「白夜霜月」の八人。なんで少ないかと言うと、首謀者の海奈が予約を二部屋しか取れなかったからである。場所は鹿児島にある「弟切荘」なんかいわくがありそうだが、旅行会社では一〜二を荒らそう旅館である。そんな感じで決まり、後は夏休みまでの残りの1週間を過ごすのみとなった。そして、次の日となった。今日はなんか教室のみんなの様子が変だった。翔に聞いてみると、こんな事を言った。
「今日・・・あいつが戻ってきたんだよ・・」
「あいつって?」
「ほら・・七瀬はもう来てるけどもう一人いないだろ?あいつはすごい暴力的な奴なんだ言えばジャイ○ンに近い存在だ…今日はみんな静かにしているんだ・・もしかしたら、新しく来たお前を狙うかも知れねえぞ・・」
そう話しているうちに、俺の3倍はでかい(化け物かよ!)男が出てきて、俺に向かって拳を振り上げた。俺はそれを腹に直撃して、教室の壁に追突した。
「いって!」
「邪魔だ・・」
男はそう言うと、自分の席に座った。そして、静かに本を読み始めた。それを見ると、男の読んでいる本は、俺が良く読むお気に入りの一冊だった。
「あ!それは!」
男はそれを聞いて思いっきり俺を掴んで持ち上げた。
「なんだ?言って見ろ!」
「ぁ・・えっとそれ読んでる奴他にもいるんだなと思って・・」
俺がそう言うと、男の目がおもいっきりくわっと開いた。殺されると思って構えると、男は急に笑い出した。
「はははは!この本の面白さが分かる奴がいたか!良いだろう!今日は許してやる」
俺はほっとした。そして、自分の席に付くと、七瀬が俺に向かってピースマークをしていた。俺は苦笑いしながらピースし返した。
俺は思った。もしかしたらあの男はまた何かで一緒になるかも知れない…と・・
こうやって何とか半殺しに会う羽目もなくなり、何とか夏の準備は整った。
そして、親に相談すると、簡単にOKを出してくれた。あとは、その日の「7月25日」を待つだけとなった。
そして、終業式・・…俺は校長先生の限りなく長い話に、よだれをたらして寝てしまった。しかし、何とか隣の人が起こしてくれた。ありがとうと言おうとすると、なんとその男はあのジャイアンもどきだった!驚いて悲鳴を出しそうになったが、なんとか押さえる事が出来た。
そして、終業式が終わると、突然こんな話が出てきた。
「海奈・・実はさ・・・この武斗が俺も行きたいって言うんだ・・どうする?俺は別に良いんだけど・・」
まあ入れても別にやばい事件は起こさないだろうと思い、普通にOKした。
そして、旅行日前日の夜、七瀬から電話がかかってきた。
「もしもし七瀬?どうした」{実はね・・OKになったよ!}
「やったじゃねえか!じゃあ日時は・・」{実は・・旅行に言ったときに言いたい事があるんだけど・・}
海奈はどきんとしたそして、日時と集合場所を教えると、電話を切った。海奈の胸はずっとどきどきと波のようになっていた。
「言いたいことって…なんだろう・・」
そう考えているので、その日は眠れなかった。そして、空を見てこう呟いた。
   「明日は俺もプレゼントがあるんだ・・」

≪第六夜≫
俺はバスに乗って景色を楽しんでいる。
周りでは武斗を中心に暴れまくっている。七瀬とは昨日の電話で、恥ずかしくて何も話せていない。後ろの席では霜月さんがのんきに何故かマフラーを編んでいる。
そして、バスが止まると俺達は、バスを降りて旅館を眺めた。
流石に海の近くなので潮の香りが漂っていて、外見は結構綺麗そうな旅館だ。俺
達は早速旅館に入って手続きをすると、部屋に案内された。部屋の中は全て畳で出来ていて、寝るのも敷布団だ。
部屋は二つ取ってあるので、女子と男子に分かれた。まあそれが当たり前だろうと思い、荷物を端っこに寄せた。後ろを見てみると、既に温泉に行こうとしている馬鹿共が数名いた。
「何やってるんだ!これから海行くのになぜシャンプーが必要だ!(笑)」
男子の馬鹿達はそういやそうだと納得して、水着に着替えた。
そして、男子は海に出ると準備体操をやり始めた。
「そう言えば女子が来ないな・・」
「準備に手間取ってるか、水着を忘れたとか?」
そう話をしているうちに、女子四名がやってきた。しかも全員目立つ感じの水着である。それを見たとき、軸がノックダウンした。(鼻血だして)
「あの〜霜月さん・…海に行くのになんで風呂桶とタオル持ってるの?・・」
それを聞いたとき、霜月は始めて気づいたかのように、いそいで走って逃げていき、三分するとすぐに戻ってきた。
その後は全員でバレーボールと泳ぎをして楽しみ、温泉へと入ることにした。
温泉に行くと、軸が大胆不適な事を言った。それは、みんなで女風呂を覗きに行こうという物だった。
海奈は興味が無いのでパスといったが、後の全員がこっそりと柵を登ってゆっくりと顔を出した。
すると、突然海奈以外の全員はめっちゃ熱いお湯を食らって、温泉のかにドボンとはいってしまった。
海奈がいそいで部屋に運び入れると全員は顔が真っ赤になってのぼせていた。なのに、食事と言う言葉が出たとたん、男子は起きた。
みんなで食事会場に出ると、そこは家とは全く違い、何か、リラックスできる音楽がかかっていた。
そして食事が出ると、ローストビーフ・海鮮料理などの家ではまず食べられない豪華な物まであるのだ。
みんなが食事を終えた後、今度はデザートまで出てくる。
きっとこんな事が出来るのはこれが最後だろうと海奈は思う。
食事が終わると、みんなは部屋に集まり、こっそり買ってきていた酒(未成年者は飲酒禁止です)を女子と海奈以外は飲みながらトランプをした。
そして、お酒が効いて来たのか、男子は全員眠りこけてしまった。
その日はそれでお開きになり、明日に回る名物の場所を決めて寝ることにした。


海奈は夜に起きて、ベランダに出てみる。
すると、隣のベランダに七瀬が立っていた。七瀬はいつも海奈には見せないような悲しそうな顔をしている。
七瀬が海奈に気づき、散歩に行く事になった。散歩途中、海奈は七瀬に訪ねてみた。
「なあ、旅行前のときに言いたいことってなんだ?」
「えっとね…実は」
七瀬は言おうとしているが、顔が真っ赤になり次の言葉が出てこなくなる。
「じゃあ、俺が先に言っても良いかな・・」
海奈はそう言い、夜空を見上げる。
「俺、七瀬に会えて良かったよ・・」
「なんで?」
「だってさ・・俺って昔から何も興味が無くて、好きな事だって無かった。でも、七瀬にあってから俺はここまで変わる事が出来た。昔は人付き合いが悪くて、友達もいないし、必死になってやろうと思ったことは一度も無かったからさ・・」
「それなら・・あたしも同じだよ・・」
七瀬は下を向きながら語り始めた。
「昔から元々体が弱くて、誰も遊んでくれなかった。だから、運動だって出来ないし、ますます体が弱くなる一方で、もう死のうと思った時もあった。でもね、海奈君にあってから、どんどん積極的になれて、体だってこんなに強くなったんだよ!」
彼女がそう言ったとき、海奈の心の中ではグルグルと何かが渦巻いていた。
{違うよ・・助けられたのは・・俺なんだ・・お前のおかげで、俺は守りたい物が見つかった。だから・・だから!}
すると、海奈は七瀬に抱きついた。気がつくと、七瀬も腕を回していた。
「実はね・・本当に言いたかった事は、これなんだ・・」
すると、七瀬は海奈に顔を近づけて、静かに言った。
       《前から好きでした…》
気がつくと二人はくちづけをしていた。何故なのか分からないが、海奈は涙を流して目を閉じた。そしてこう思った。
     {俺も、決心が固まった…君を絶対に助けるよ・・}

《第七夜》
俺は朝気がつくと七瀬の隣で寝ていた。と言っても別にやましい事は無いから安心。
そして、起きて見るとみんなが隣の部屋でまたトランプをやっている。
俺はすぐに着替えて出かける準備と荷物の片づけを終わらせ、すぐにそっちの部屋に行った。
すると、みんなはもう既に準備が整っており、ずっと俺のことを待っていたらしい。部屋を見渡すと、七瀬の姿が見当たらないのだ。部屋に戻って見回してみると、七瀬がベッドで気持ち良さそうに寝ていた。
七瀬を起こし、チェックアウトをして外に出た後すぐ近くにある名物所を回った。
1日目とは違い、あっという間に時間が過ぎてしまい、気がつくと最終電車しか乗るものがなくなっていた。
電車に急いで乗ると、今度はみんな(霜月・七瀬・海奈以外)がまたトランプを始めた。
良く飽きないでいるなと海奈が考えていると、急に電車が真っ暗になった。
驚いて立ちあがると、足がもつれて転んでしまった。
手がある場所が妙に柔らかいと思った。電気がつくと海奈は驚愕した。なんと、海奈の手が七瀬の胸を鷲づかみしているのだった・・・(その後はあのお約束の嵐!)。
電車を下りるときは、七瀬は真っ赤になり、海奈はもう顔が見えないほど腫れていた。
そこでみんなで解散すると、七瀬がよってきた。どうやら誤りに来たらしい。
「さっきはごめん・・やりすぎちゃった・・」
「言いよ別に・・俺が悪い事には変わり無いんだからさ・・」
それを言った後、二人の間にしばらくの沈黙が走った。
すると、何処からか耳を劈くようなブレーキ音が聞こえてきた。
急いで二人が行って見ると、男子3人が血を流して倒れているのだ。
いそいで海奈が電話で救急車を呼ぶと、3人は病院へ運ばれていった。
その病院は七瀬が通っている病院なので、医者に現状を話してもらった。
「轢き逃げだよ・・3人を一気に轢いて走り去ったんだ・・」
それを聞いたとき、二人は顔を合わせて青ざめる。
「だ・大丈夫!かすり傷程度ですんだから!」
それを聞くと、二人はほっとして病院を出た。
その後、二人は良く集合した公園へと向かった。
ここに来たとき、昔のように七瀬はブランコに乗ってこぎ始めた。
「ここに来るのって何ヶ月ぶりだろうね!海奈君」
海奈は手をポケットに入れたまま、隣のブランコに座った。
そして、夜空を見上げた。夜空は、全体真っ黒だが、少し青が入っていて、安心できる色だった。星は光っていて、まるで自分の希望を見ているようだった。
しばらく見上げていると、頬に冷たい物がくっ付いた。びっくりして後ろにのけぞると、ブランコだったので頭から落ちた。やっていたのは七瀬だった。
「あはは!海奈君この位で驚いてる!はい!ジュース買ってきたよ」
そう言うと、海奈にジュースを渡してブランコに座った。
海奈は頭をさすりながら立ちあがると、ジュースを開けて飲み始めた。
それをうれしそうに七瀬が見つめている。
ジュースを飲み終えると海奈は公園のごみ捨て場に缶を捨てて、七瀬の前に座った。
「どうしたの急に!?」
「実はさ・・渡したい物があって・・」
海奈はゆっくりとポケットからキーホルダーを出す。
「それ!あたしがあげた奴だね!」
すると、海奈はそのキーホルダーをパキンと割って見せて、半分を七瀬に渡した。
「俺達がもう離れ離れにならないようにな!」
「それってどう言う事?」
「もうこれからは一緒にいようって事だ!」
海奈がそう言うと、七瀬は赤くなった。
「それって…告白?」
「ああ・・・そうだ・・俺と付き合ってくれるか?」
すると、七瀬は顔を真っ赤にして海奈に抱きついた。
「うれしい!絶対一緒にいようね!」
そして、僕らは2度目のくちづけをした。
今度は急にではなく、二人とも了解した上でのキスだった。
二人はその後、お互いに家に帰った。
もちろん、うれしそうな顔で…でも、出来事は突然起こった。
あの後急に電話がかかってきて、海奈は驚愕した。
「ええ!?七瀬が緊急入院!?分かりました!すぐ行きます!」
七瀬が心臓病で発作を起こして、危ない状態だと言う事だった。
海奈はすぐに自分の自転車をこいで、病院へ向かった。
彼の決死の救出法が始まったのだ。その方法は…


「何!?お前がやるだって?」
驚いている医者の前には海奈が立っていた。
「良いのかそれで…七瀬ちゃんが悲しがるぞ?」
「いいんだ!俺は一度でも良いから七瀬を助けたい!」
そうすると、医者は立ちあがり、手術用の白衣を着た。
「お前が死ぬかもしれないが・・いいんだな?」
海奈はコクっと頷き、手術の準備を始めた。もちろん親には何も言っていない・・残してきたのは手紙だけだ。七瀬宛てと親宛てに書いた物だけ・・
俺は手術室に運ばれると、先に麻酔をかけられている七瀬を見る。そして、俺の
腕に何か刺された後俺はだんだん意識が遠退いて行った。
その時、俺はこう呟いた。
      {約束破ってごめんよ・・七瀬…}

  《最終夜》

五十年後のある家の机の本にこんな事が書いてあります。
…人はすごく弱い物です。誰かに支えてもらわなければ生きては行けないのです。
…でもそれは人間の長所です。一人で生きるより二人、二人で生きるより三人…と何処までも大切な命の輪はつながっていく。誰も気づいてはいないけれど、人は誰だってそう生きている。
・…だから時間は「君」と共にある。そう
     「君との時間」がある…

     

気がつくと私は病院の布団の中にいた。
病院の中の個室の部屋だ。
私はしばらく何もせずにぼ〜っとしていると、外から雨の音がしてきた。
そして、何故だかはしらないけれど、さっきまで痛かった心臓が痛く無くなっている。
気がつくと横の部屋から泣き声が聞こえてくる。海奈のお母さんの声だと言う事に気づいた。
すぐに隣の部屋に言ってみた。すると…
…ピー    と言う音と共に医者は時計を見て、「午後六時三十分」と言って出ていった。そして、ベッドにいる海奈に親が泣きながら覆い被さった。そして、部屋の外で、私は這いつくばった。
「どうして…どうして!…・・」
そして、その後聞こえるのは、外で降っている雨の弾ける音と、部屋から嘆く声だけだった。
私はその時やっと理解した。
      
        ・…私は・・海奈を犠牲にしちゃったんだ・・
私は放心状態のまま、部屋に戻った。
そして、ベッドで体を丸めていると、海奈の母親がやってきた。
目は涙で一杯になっている、きっと、私を憎んでいるんだ・・その時は私そう思った。
でも、違っていた海奈のお母さんは私に近づいてきて、ゆっくりと手紙を出した。
「あなたは幸せよ・・友人にここまでしてもらえるんだから・・でもね、一つだけお願いがあるの・・・。」
海奈のお母さんは、溜め息をついてゆっくりと私の手に手紙を握らせた。そして、耳元でこう言った。
     {海奈の分まで生きて…海奈の分まで幸せになって・・}
そう言うと、海奈の母親はにこっと笑って行ってしまった。
私はすぐに、手紙を開けて見た。それを見て私はまた涙が込み上げてきた。
『よ!七瀬、元気になったか?まあこの手紙を見てるときは多分いないな・・ごめんな!でもな・・俺はお前に一生生きてもらいたかったからこの判断をしたんだ・・だって、お前がいなくなってその笑顔を見る事が出来なくなるのは絶対に嫌だ!俺はこの先いないけど、上でお前が来るのを待ってるからな!絶対俺の分も人生を楽しんでくれ!じゃあな!いつか会おうぜ。 
                             海奈     』
こんな手紙を残された後、私は海奈の言うとおり、こう思った。
     「海奈の分まで生きて、彼を喜ばせよう!」


〜〜〜〜〜〜50年後〜〜〜〜〜〜
私は机に向かって本を書きつづけました。
人の命の大切さはどう言う物なのか、と言う事を・・
そして、私は今、とうとう海奈の元へ行くときが来た・・
そう、私は寿命を迎えてしまった。でも何故か怖くない。
・…何故かって?それは…
     「またあの人との時間を過ごせるから」
・…彼女の書いた本はベストセラーとなり、みんなに命の大切さを教えました。
       …その本の名前は…
       「君との時間」 
2004-04-10 18:53:53公開 / 作者:ニラ
■この作品の著作権はニラさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
またパスワードが拒否されてて、書きなおしました・・本当に書いてくれた方すいません…
これで君との時間は終わりです。アドバイスや感想ありがとうございました。

追伸・・七瀬が書いた本はこの話とは違います。ご了承ください。(まあ、そのうち書くかな…)というわけで!もしかしたら番外決定か?
「七瀬の時間」?
この作品に対する感想 - 昇順
いい話っすね。手紙の部分でぐっときました!感動しました……。そしてニラさんの次回作に大いに期待します!!
2004-04-11 09:37:48【★★★★☆】神夜
計:4点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。