『少年A − Remake:Remodel −』作者:小都翔人 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約3.69枚

・・・・・・A.D.2065


−少年Aの罪状−

『・・・・・・神戸市須磨区に住む少女(当時15才)に対し、執拗なストーカー行為
 を繰り返したあげく、2月6日未明に同少女を殺害し・・・・・・ 』




− 開廷 −


少年Aは現在ここ、”ラグドール・サイバー裁判所”の被告席に居た。
首をうなだれたまま、じっとデスクを見つめながら・・・・・・。
所内には大音量で、2000年のロックアルバム、プライマル・スクリームの『エクスターミネーター』が流れている。
”すべてのヒッピーどもをぶっ殺せ!!”

裁判長ロボット”バンチョー”が、高らかに開廷を告げた。
「いよぉぉぉぉ〜いぃぃ〜・・・・・・はじめぇぇぇ!!! 」

検事ロボット”ケンチャン”が口からオイルを飛ばしながら、まくしたてる。
「ギ、ギ、ギルティーーー!!処刑だ!!処刑だ!!処刑だ!! 」

弁護士ロボット”ワダベン”が、豊かなバリトンで穏やかに反論する。
「あのですねぇ。やはり少年はですねぇ。保護されるべきであってですねぇ・・・・・・。 」

すると、検事ロボットはますます激しくやり返す。
「バカ言ってんじゃね〜!!有罪!!重罪!!有罪!!重罪!! 」

他人事のように眺めていた裁判長ロボットが、アクビをしながら切り出した。
「あの〜、音楽を・・・・・・いわゆる”バック・グランド・ミュージック”を変えてもよろしいかね? 」

検事ロボットと弁護士ロボットは、にらみ合ったまま頷いた。
音楽が突如、『パガニーニ』に変わる。

すると、それまで穏やかだった弁護士ロボットが、大声で訴えた。
「おお!こ、こんな音楽はやめてください!!せめて、せめて、モーニング娘。に!! 」

検事ロボットも珍しく同調した。
「アチキも実は・・・・・・、モーニング娘。が聞きたかったとこでして・・・・・・。 」

裁判長ロボットは、舌打ちをしながら音楽を切り替えた。
”娘”たちの歌が流れ始める。
「あーつまんねーなー!!そろそろお仕舞いにしたいんだけどさー!! 」
完全にむくれた口調で、裁判長ロボットが切り出した。
「そうしましょ! 」
「そっすね! 」
あっけなく、検事ロボットと弁護士ロボットは同調した。


そして、陪審員ロボットたちが、”あーでもこーでもねー”話し合いをするために、ぞろぞろと退廷していった。
陪審員ロボットたちの顔ぶれはさまざまだ。打撃練習用ロボット”イチロー”、能書きロボット”コイズミ”、料理人ロボット”ウメミヤ”などなど。
少年Aは、なにかを祈るような表情で彼らを見つめていた・・・・・・。




しばらく経ってわいわいがやがやと賑やかに、陪審員ロボットたちが戻ってきた。
少年Aは、覚悟を決めたように静かに座っている。
やがて、陪審員長である仕切り屋ロボット”イカリヤ”が、こそこそっと裁判長ロボットに囁いた。
廷内の全ての視線が、裁判長ロボットに注がれる。
少年Aも、身を乗り出さんばかりに凝視した。


裁判長ロボットは、さんざん勿体ぶった後で高らかに判決を告げた・・・・・・。




「え〜・・・・・。ヨツビシデンキ製品である、少年型ロボット”タイプA”は、明らかに欠陥製品である。よって、”少年A”をスクラップ処理とする!! 」











− 閉廷 −
2004-04-07 18:07:52公開 / 作者:小都翔人
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■作者からのメッセージ
これはずいぶん以前に書いたショートなのですが、今回あらためて大幅に書き直してみました。
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