『満月の仲間』作者:鈴乃 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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原稿用紙約15.8枚
・・・目が合った

それは何気ない一動作だった。
何となく見た先にソレが居た。ソレは髪の長い少女だった。
逆光で顔は影になり見えない。だけど目が合った気がした。

「・・・・・・・・・・・・」

美しかった。目が離せなかった理由はそれだけだった。
ソレは 満月を背に大きく奇怪な杖を手に立っていた。

「・・・・・・っ!!」

それから何かがはえて 満月を二つに割った。
・・・白銀に光る翼だった。
翼のはえたソレは笑った ・・・気がした
ソレは 手中の杖を 軽く持ち上げ地に刺した。
ソレの髪の毛は風に持ち上げられ宙で踊っている。
ソレの足元は光だし 満月の半分を消した。
足元の光は強くなっていった。

・・・ニッ・・・・・・

ソレは確実に笑っていた。口の端を三日月に吊り上げて。
ソレが笑った刹那 足元の光はわっと強くなりおさまった頃には何も居なかった。

ソレが消えても キオクが残った。
キオクの中のソレは はっきりと自分の正体を明かしているように思えた。

「人の形をした悪魔」
私のキオクの中のソレは いっそうに美しさを増した。

ほんの数分の出来事が 長い時間起きていたように感じられた・・・・・・


 〜 呼ばれし者達・一 〜
 

「・・・・・・・・・・・・」

単調な黒板がチョークを削る音と テキストをそのまま読上げる教師の声
必死に シャーペンを走らせる生徒たち。
その中で一人 窓の外をじっと眺める生徒が一人。
 
 名波 千夏 十五歳

いつもならば碌でもない思考を働かせているであろう時刻に 千夏はただ呆けるばかりであった。
昨夜見た「ソレ」が気になっていたのだ。
ニッと笑い 消えた少女・・・

キーン コーン  キーン・・・

チャイムで意識を引き戻され我に返った千夏は 頭を左右に振って昨夜の残像を頭から追い出そうとした。

「ちーなっちゃん♪ ・・・? どったの? 元気ないね?」
「何でもない。ちょっと考え事してただけ」
「いつものとは違うの?」
「・・・いつも碌でもないことしか考えませんよ」
「え? ・・・そんな意味じゃないよ〜」

高菜 知里は思ったことを口にしただけだったが 千夏には皮肉に聞こえたらしく冷たい返事を返され焦った。

「ホントにどったの? ちょっとヘンだよ。何かあった?」

知里は 疑問符を浮かべながら 千夏の顔を覗き込んだ。

「何でもないってば。ちょっと考え事してただけだよ」
「・・・・・・顔」
「顔?」
「ちなっちゃんじゃない顔してた」

知里はこくりと首を縦に振って ぼそりと呟いた。

「いつもと違うこと考えてたでしょ?」

図星だった。いつもは 「世界って何?」とか考えていたのに 今日は 昨夜の少女の残像を見つめていた。
一瞬 考えて・・・

「・・・・・・あたり」

一言だけ言った。千夏は 知里に嘘が通らない事を理解していた。
知里は普段とても子供っぽいわりに特技があった。
占いと感受性の強さ・・・
占いは百発百中。外した事がない。
そして その感受性の強さは鏡のようで相手の気持ちをより鮮明に映し出す。知里によると 表情で気持ちがわかるという。だから 嘘をついても必ず見抜かれてしまうのだ。

「知里・・・あんま・・・ まあいいや。お昼食べに行こう。食堂で話すよ」
「うん♪」

十一時過ぎ 千夏と知里は少し早い昼食をとりに 人のいない食堂を目指した。


 〜 呼ばれし者達・ニ 〜

夜中二時過ぎ ビルとビルの商店街から切り離された空間に一人動く男がいた。

「どうした? ナズキ?」

男は 黒猫の頭を撫でて話し掛ける。しかし猫はしれっとした態度で男の手から抜け出して歩き出した。

「なんだよ、今日はやけに可愛くないな〜。ってどこ行くんだよ?」

男は、黒猫を放っておこうと思ったが数歩歩くと振り向く黒猫を見て 追いかける事にした。
しかし、店の角を曲がった黒猫は姿がなく、かわりに三階建てのビルの屋上からじっと男を見下ろす少女の姿がある。

「ナズキかい?」

男は少女に問い掛ける。
一方少女は、月明かりが照らす中微笑むだけ。
その姿は、絵画のような幻想的な魅力を感じさられる。

「そうか、お前はそんなに綺麗だったんだね」

月明かりの中微笑んだ少女は、しばし月をバックにオンステージを開き踊っていた。男もしばらくの間その様子を見つめていた。
 
 第一章 〜 始まりは突然 〜

雨の降る夜中二時過ぎ・・・
寝静まった国道脇の適当に整備された歩道を自転車で走る影が一つ。
パーカーのフードを深くかぶり視界を悪くする風に乗った小降りの雨を避けながら走る。

「完璧遅刻だな・・・」

「今日に限って何で夜更しするかなぁ・・・」などとぼやきながらも自転車をこぐ足に力をこめていく。

・・・・・・ゴトンッ!!
「痛!! 最悪っ!!」

強く打った足からは血が滲みズボンを紅く染めていく。そして、その紅を雨が薄く引き延ばした。
パーカーを着た影は、足の怪我などものともせず立ち上がり自転車を起こしてまたがり、また走り始めた。

・・・・・・ガシャン・・・シャン・・・ガシャン・・・・・・
「チッ、しょうがない」

前輪のパンクに気付いたパーカーを着た影は舌打ちして自転車から降り、走り始めた。そのまま走り続けること十数分、商店街の入り口に着いた。
そこには、レインコートに傘をさした高い位置で髪を二つに結った少女が立っていた。

「ごめん遅れた」
「たった二十分じゃん、気にしないって♪」


十一時過ぎの食堂

「・・・とまぁこういう訳で今夜もう一度確かめに行こうと思うんだけど一緒に来る?」

千夏は昨夜見た影について詳しく話すと、今夜もう一度行く事を告げそれとなく一緒に行こうと誘ってみる。

「いこっかな〜? 」

曖昧な返事が返ってきたが、千夏には確信があった。知里は必ず一緒に来てくれるという確信が。
知里は、千夏の顔をしばらくじっと見つめて口を開く。

「ヤな予感がするよ?・・・って止めてもいっちゃうか。ちなっちゃんは」

問いというより助言と確認をする言葉が知里から出る。
千夏が黙ってうなずくと、それを見た知里はポケットからタロットカードを出し、テーブルに広げ混ぜ始めた。それを一纏めにすると、カードの一番上のをめくりさっと見て、千夏の顔の前に出した。

「THE TOWER(塔)。不意打ちの災難、危険・失敗・名誉を失う、災難・事故・急病、おごり・己惚れ横柄な態度への戒め、全てを失う。」
「それでも行く」

カードをケースに入れポケットにしまうと、知里はふぅっと溜息をつく。

「一緒に行くっ♪」

知里にしては珍しい真顔はその一言と同時に崩れた。


夜中、シャッターの閉まった店が建ち並ぶ商店街はどこかスラム街のような張り詰めた空気が漂っていた。

「静かだね」
「・・・うん」

ピンと張った空気の中で、二人の声はやけに大きく響く。
いつもより声を潜めて話したつもりだったが、意外に大きくそれ以来二人は口を閉ざした。
黙って歩く事十分、商店街の中心辺りまで来ていた。
突然、パーカーの影はレインコートの影の肩を叩くとビルとビルの間の細い道を指差し、そこへと進んでいく。その後をレインコートの影も黙ってついて行った。

「今日は雨だねぇ、ナズキ・・・。・・・おや?こんな時間にこんな可愛らしいお客さんかい?」

二つの影は、びくっとし足を止めた。
そこには、薄い雲の間から垣間見える月を見上げながら、黒猫の頭を撫でる男が居た。間の抜けた男の声を聞き、一瞬呆けたがパーカーの影はすぐに身構え レインコートの影はきょとんと立ちつくしている。

「名波千夏ちゃんだっけ?危害は加えないから安心しなって」
「何で私の名前を知ってるの?」

パーカーの影千夏は、男に向かって低くドスのきいた声で問うと同時に、右足を一歩引きさっきよりも強く身構える。それを見たレインコートの影知里は、とっさにパーカーの裾を握った。

「まって、昨日の人のきっと関係者だよ、この人」
「・・・本当?」

男に振り返りじっと目を見つめた。

「で、君が高菜知里ちゃんか。君裏では有名だよね?・・・っと、レディーに対して自己紹介無しとは失礼だったか。僕は、楓 圭太郎。ケイって呼んで。」
「自分の事なんかには興味ありません。こちらの問いに答えてください」

「どっちも下の名前っぽいよね」と笑う圭太郎に、知里が無表情に淡々と応じる。千夏は、知里の急変で一瞬と惑ったが、振り向くとパーカーを握る手が微かに震えている事に気付き一安心すると、深く深呼吸した。

「で? 関係者なの?」
「何を説明してほしい?」
「昨日会った人のこと」

雲は何時の間にか、途切れ途切れ空を浮くようになっていた。月を隠していた雲が風に流されて、少し欠けた満月とは言えない月が姿を現す。すると、圭太郎に撫でられていた黒猫が、ニャっと小さく鳴き男の手中から離れ、月明かりの下へ歩み寄る。
三階建てのビルの陰を抜けた刹那、黒猫は姿を消し、前から居たかのように少女が立っていた。
長い金の髪は、背景の月との境目が見つからないほど透き通り、ローブの影をぼやかす。

「初めまして。私は月神ユエ様の一番使者、ルナと申します。どうぞ御見知りおきを」
「え・・・あ・・・えっと・・・千夏です・・・・・・宜しく」
「昨日、千夏様が見ましたのは私でしょうか?」

呆けた返事をする千夏を、ふふふっと笑ったが、それは一瞬で崩れ、真面目な顔に戻った。千夏もしばし考え込んで口を開く。

「・・・違うと思う・・・。勘だからもし違ってたらごめんなさい」
「・・・・・・では、私に似たものでしたか?」
「うん。でも、似てないといえば似てない。だって、笑い方がまるで違うもん。」

ちょっと戸惑っているルナを前に、きっぱりと答えた。
ルナも考え込んで「では、話は早いですね・・・」と呟き、髪を一つに結う。

「昨日見た人はソルと言います。私の妹ですが、ソルを倒してくれませんか?」
「行かせてもらう、例え何言われても」

即答だった。ルナは、その答えの早さに呆気をとられた。後ろでさり気なく知里が、パーカーの裾を引っ張って「やめたほうが良い」と言って「THE FOOL(愚者)」のカードを出していたが、千夏は完全に無視しいていた。

 〜 ソルを追って 〜

西洋風の町の中、どこか場違いな格好をして歩く三人がいた。ローブを着込んだ二人とその後を付いて歩く男の子。

「・・・見て! 変わった建物だね」
「あんなに嫌がってたくせに」
「気にしない気にしない! そんなこと言ってても楽しくないじゃん! 戻れないんだから楽しまなきゃ損でしょ? ねぇ?」
「ねぇ〜」

きゃっきゃっと騒ぐ薄桃色のローブを着た知里の隣で、THE FOOL(愚者)のカードを眺めながら紫のローブを着た千夏はぼやく。男の子も知里の意見に賛成のように頷いた。

「にしてもさぁ・・・何でそんな姿なわけ?ケイさん」
「しゃあないだろ。好きでこんなんな訳じゃない」
「まぁ、大人姿よりカワイイし動きやすそうだもんね♪」
「性格まで若かりし頃?」

千夏の冷たい視線の先で知里に頭を撫でられている圭太郎は12歳くらいに見え、あの黒猫の頭を撫でている時とはえらい違いようだった。性格も含めて。

「で・・・これからどうする?」
「どうするもこうするもないよ、動くに動けないんだから。夜を待とう」

三人はまた宿を探して街中に歩み去った。


水鏡の縁に腰掛ける姿が一つ。手に持ったカードを眺めている。

「THE HERMIT(隠者)・・・今回の場合は、ととるべきでしょうか・・・? 勘のいいお方ですね・・・・・・」

手中のタロットカードを視野に収めながら、どこか別のものを見るルナの姿が有った。

 
「行かせてもらう、例え何と言われても」
「待って! 私たち何でソルを倒すのか理由を知らないよ」
「・・・理由・・・ですか・・・、裏切りです・・・・・・」

知里の言葉に一瞬ためらったがはっきりと答えた。

「ソルは太陽神に使えている秘書でしたが、ある時突然行方を暗ましたのです。・・・大量の書物と共に・・・」
「殺す必要があるようには思えないけど? 」
「・・・持ち出されたと思われる書物に問題があるのです・・・・・・。ソルが持ち出したと思われてる書物はどれもこれも世界の存亡にかかわる極秘の物ばかりだったのです」

千夏は首をかしげてしばし黙り込んだ。

「・・・気になったんだけどさぁ・・・ 「思われる」って事はソルじゃないかもしれないんでしょ?」
「いえ・・・目撃情報が入ってまして・・・ソルだと思われるのですが・・・私はソルを信じたいのです」
「じゃあ何故私たちにと頼むんですか? 」
「神々の決断に私は逆らえません・・・・・・」

うつむくルナは一つに結った長い髪が両脇にたれ、顔を影にし全く見えないが声でわかる。
――ルナは泣いている。
気取られないように小さく小さく、声に出ないように泣いている。

「ささやかな抵抗です・・・。何が変わるわけでもないのですが・・・」
「変わるよ。会わせてあげる、ソルに。殺さない」

千夏はニッと笑った。知里は、タロットカードを一枚ルナに差し出す。
ルナの手中には、何時の間にか大きな杖があった。とても複雑で繊細な模様が描かれてる。

「ソルを探してくださるなら・・・光の中へ入ってください」

杖の先端を地に突くと、風圧が起こり杖を中心にし光が溢だす。知里も千夏も黙って光に入って行った。

「楓さん、あの二人を守ってあげてください」
「・・・まぁ、行ってやるかな」

圭太郎も二人に続いて光の中に姿を消した。
ルナも歩き出すと建物の影に入り少女の姿は消え、猫が一匹歩いていた。


「どちらの意味のでしょうか・・・? 」

水鏡に映った知里に、THE HERMITのカードをぶつける。
水鏡には何重にも波紋が広がり、映していたものを消した。


・・・シュッ・・・・・・シュッ・・シュッ・・・シュッ・・・
「チッ、シツコイね・・・何処まで追いかけて来るんだか・・・」

真っ暗な街中不規則に響く何かを引きずるような音と、澄んだ声。
声の主は、大きな杖に体重をかけて歩いていた、血塗れになった足を引き摺りながら。たまに後ろを振り返りつつ。

「いきなり追われるなんて・・・何処の策士さんの陰謀かねぇ・・・。理由もつげやしないで。」

杖から片手を離し、ローブのフードを引っ張り深くかぶり直す。

2004-04-17 10:20:09公開 / 作者:鈴乃
■この作品の著作権は鈴乃さんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
原作と大分違ってきちゃいました;;あらすじ作った意味がなかった;;

最近忙しくてなかなか更新できませんが 週一位で更新できるように努力しようと思います;;
次回も読んでくださると嬉しいですw
むしろ呼んで下さい;;こんなヘボいのでスミマセンでしたぁ;;
この作品に対する感想 - 昇順
初めまして。感想ですが……少し読み難いですね……。最後を「〜た」で終る文章がほとんどでしたし、「、」と付けずに空白で区切るのはどうかと……。そこらへんをもう少し改善してくれるとよかったと思います。偉そうなことを言って申し訳ありませんが、自分が思ったのはそんな感じです。ストーリーは興味を惹かれるものがありました。続きできましたら読ませてもらいます。
2004-04-04 14:30:38【★★★★☆】神夜
こんにちわ。読ませていただきました。出だしの雰囲気が私は良かった・・・っていうか私好みでした。ソレがこれからどう関わってくるのかもたのしみです。ただ、ソレ、を何行もつづけるのであればある程度動詞はつなげちゃった方が臨場感がでてスムーズに神秘的になったかなぁ、と。っていうかえらそうなこといってごめんなさい。それが私の理想の文章ってことで(どきどき)。続きも出たら読ませてください。へたっぴじゃないと思いますよ、がんばってくださいな。
2004-04-04 15:16:08【★★★★☆】笑子
はいはい〜。拝読させていただきました・・・と(ぇ まずワンポイント。人には言えませぬが小説を書いた後、それを口に出しながら読むと濁点の違和感などに気付くと思うので〜。何か変な所で区切ってる所が少し見えます。・・・何はともあれ、頑張ってくだされ〜
2004-04-04 15:17:10【★★★★☆】ベル
はじめまして。読ませていただきました、自分的には表現動作の表現が面白かったですね。わかりずらいとこもありましたが・・・・・。話の内容は続きがとても気になります。では、続きの作成をがんばってください
2004-04-05 17:37:46【☆☆☆☆☆】えーめい
面白いですね♪あ、神夜さんと同じ事になりますが、作者さんの意向とそれるかもしれないですが、スペースより、などがいいかと。思います。内容は好きです♪これからも読もうと思います
2004-04-05 23:22:00【★★★★☆】飛鳥
初めまして。。面白そうな始まりでした。自分的には知里のキャラが気に入ってます!読む人に理解してもらう文章は自分でも書くのが難しいものです。続き楽しみです!頑張ってください!
2004-04-12 22:37:46【★★★★☆】葉瀬 潤
計:20点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。