『スパイラルゲーム ?〜?』作者:唯崎 佐波 / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
全角13431.5文字
容量26863 bytes
原稿用紙約33.58枚

ほんの些細な事から『イジメ』ははじまる。学校で貰う手紙とかによく『子供相談室』とか『心の窓口』とかそうゆう
手紙を貰う。でもそんものに頼るのは自分が弱いみたいでヤダ。親になんかますます相談できない。心の底から
話せる友達もいない。だから今は一人で戦い続けるしかない。本当は知っている。なにをされても言い返せない
自分は本当に弱い人間なんだってことを・・・・。でもその一言が、そのほんの一握りの勇気が私にとってとてつも
なく大きな壁になって立ちはだかっている。そんな時、私の元に届いた一通の手紙。送り主は書いてなかった。私
は2階の自分の部屋につながる階段を上りながら手紙を開けてみる。封筒は重い。なにかごつごつしたものが入
っている。私は入っているものを見て只ならぬ緊張感に包まれる。
「な、なに・・・これ・・・」
入っていたものは拳銃。私は同封されている手紙を読み始めた。

『今から簡単なゲームを行います! 賭けるのはあなたの命です。不参加は不可能! 途中で抜ける事はあなた
の死を意味するよ。信じるか信じないかはあなた次第だけど命は大切にね! ゲームは簡単! 今から指定した
人を殺すんだよ。でもその人は同じゲームの参加者に守られてるから要注意! その人に見つかったらゲームオ
ーバーつまりあなたが殺されます! 気をつけようね^^ゲーム期間は今から14日間! 自分の攻撃者を殺して
生き残った人の勝ち! あなたが狙うのは東京在住の17歳の男の子。名前は木瀬  勇登君頑張って探そうね!
参加者の目印は同封してある拳銃だよ。あっ! そうそういい忘れてた! あなたもゲーム参加者から一人守らな
きゃいけない人がいるよ。その人は森野 尚樹君東京在住の高校2年生! 頑張って守ろう!自分が殺されちゃ
ったらゲームオーバーであなたの負けこのゲームでのゲームオーバーの意味はわかるよね? 特に難しいルール
はないけどお約束が2つ。自分の攻撃者以外は例え正当防衛でも殺しちゃだめだよ。その場で終わりになちゃう。
もう一つは自分の攻撃者・守護者は他言無用! 言っちゃったら・・・・。もっちろんこんな手紙は警察も信じてはく
れないだろうから完全犯罪を目指そう!それじゃぁ今からゲームスタートだ!!』

自分の家のポストに入っていたこの手紙に消印はしていなかった。直接家のポストに入っていたらしい。私はこの
手紙を握り締めた。拳銃はベットの上にそっと置いた。その横に私も腰掛け、頭を整理していた。
パリンッ!
部屋の窓が割れる。私は窓の外に目を向ける。反対側のマンションの屋上にサングラスに黒ずくめの服を着て立っ
ている人が見える。私は目を凝らしてその人の手元を見てみる。その姿に私は硬直した。
「このゲーム本当だ・・・・・」
私は拳銃を手に自分の部屋を飛び出る。この部屋にいたら確実に殺される。家の真ん中にあり窓のない部屋に
とっさにはいった。今から14日間本当に命を賭けたゲーム・・・・。私は絶対に死なない! 生き残ってみせる! 
部屋を出て自分の部屋に戻ってそっと窓の外を見てみる。もう向かいのマンションに人影はない。私は荷物をまと
める。これから2週間この家にいるわけには行かない。家族や他の人に迷惑をかけることになる。私は周りの人が
不審に思わないように学生鞄に必要なものを詰め込む。財布と通帳・携帯・手帳・・・・。2週間くらい泊まるとこは
なんとかなるだろう。外にいたほうがかえって安全かもしれない。人ごみで拳銃は使えない・・・。コートのポケット
にはすぐに取り出せるように拳銃。荷物をまとめてすぐに家を飛び出した。学校には行く気はない。行っても自分
の居場所はないしやるべき事もない。高校が義務教育ではない事に私はこのとき初めて感謝した。
家をでてまず向かった場所は近くのファーストフード店。窓際ではない一番奥の席に座って手帳を開いた。今分か
っていることを一つずつ書き出していく。と言っても分かっていることは少ない。
「分かっていることなんか・・・・。情報が少なすぎる」
私はつぶやいた。
「あれ〜?! 誰かと思えば今里 塑羅 サンじゃなーい! みんな〜! こんなところに今里サンがいるわよー!」
一番会いたくない人たち。私をイジメル学校のクラスメートだ。私は手帳をかばんに入れる。
「本当だぁ〜! 何でこんなところにいるの?」
「一人で端っこの席なんか座っちゃって! やっぱ友達いないんだ!」
「きゃっ!」
私の頭の上から水が落ちてくる。つい悲鳴を上げてしまった。
「あっ! ごめ〜ん! 手が滑っちゃった! 大丈夫?」
グループのボスが私の頭に向かって水をかけたのだ。私は上半身だけずぶぬれだ。誤ってはいるが明らかに笑って
いる。
「うん。大丈夫だよ」
「「「あはははは」」」
私は我慢して笑う。こんな自分大嫌い。
「なに笑ってんだよ!」
グループのボスが私を睨みつけて胸倉を掴んでくる。
「本当にムカつく! 死ね!」
「目障り! この店から出てって!」
「超キモイ〜!」
次々に私に浴びせる罵声が飛び交う。この場にいることがつらくなってきた。
「お客様! 申し訳ありませんが他のお客様のご迷惑になりますので・・・・」
お店の店員さんが注意しにやってくる。
「あ。すみませ〜ん」
私は何も言わずに席を立ち、店の外にでる。そのときも後ろから声が聞こえてきたが私は走ってその場をあとにした。
もう少しあの場にいたらきった私はルールを破ってあの場であそこにいた全員を撃ち殺していたかもしれない。私は
ハンカチで顔を拭きながら図書館に向かった。あそこならあんなギャル達が来る事もないだろう。図書館に着き個人
利用のスペースに私は荷物を置いた。ここは図書館で調べ物をする為のスペースだが実際は学生達の勉強のスペ
ースになっている。机はつながっているのだが机と机の間に一枚の板が挟まっていて隣がなにをやっているのかは
見えないようになっていた。
カチャ
私の後ろに誰か立って腰の部分に何かを突きつけられている。この感じ・・・銃だ。しまった! あいつらから逃げる
のに必死で攻撃者のことを忘れていた。私は声を出そうと息を吸うと先に後ろに立った奴が声を出した。
「声を出すな。安心しろ俺は撃つつもりはない」
私はキット後ろをにらみつけた。そこに立っていたのは同い年くらいの男の子だ。
「じゃ、その銃下ろしてくれる?」
私がそうゆうと男はすっと銃を降ろした。
「外にでよう。俺はお前と話がしたいだけだ」
「話?」
「あぁ。ゲームの事についてだ」
私はうなずいた。彼に連れられて向かった先は近くの公園だ。公園に入ってすぐ彼は立ち止まった。
「こんなところにいたら狙われるんじゃない?」
私がそういうと彼はニッコリと笑った。
「大丈夫だ。子供の多い公園だし、こんな住宅地で発砲したら完全犯罪は成り立たない」
そう言われればそうかもしれない。
「あなたが私を狙う攻撃者でないと証明できることは?」
彼は首夜横に振った。
「それは君が信じてくれるしかないな。今里 塑羅さん」
「私の名前・・・・」
「そんなの考えられるのは2つしかないじゃん」
考えられるのは2つ。彼が私を狙う攻撃者ということそれか・・・。
「守護者?」
彼はニッコリと笑う。それを鵜呑みにする事はできない。私はまだ彼を信用する事は出来なかった。
「俺の名前は木瀬 勇登!」
その名前に私は驚いた。私の攻撃者だ。攻撃者が重なってはゲームにならない。つまりこの人は私の守護者。これなら
いけるかも。14日間私を守ってもらって最後の日に殺しちゃえば・・・・。
「信じるよ。木瀬君が私の守護者だって」
私がそうゆうと勇登は一瞬驚いた顔をしたがすぐに笑ってくれた。
「ありがとう! 今里!」
そういって勇登は私の手を掴んできた。ビックリはしたが勇登のあまりの驚きぶりに私も思わす笑ってしまった。
  
命を賭けた14日間のゲームが始まった!!




「なんで木瀬君は私が『今里 塑羅』だってわかったの?」
これからどうするかを聞かれてとりあえず家を出たと答えた私に木瀬勇登は家に来ていいといってくれた。泊まるとこもないし
ありがたくお言葉に甘える事にした。そっちの方が私にとっても彼にとっても好都合なのだから。
「あぁ、俺のとこに来た手紙に『あなたの守らなきゃいけない人は都内在住の今里 塑羅』って書いてあったんだ。それで電話
帳で『今里』って調べた。今里さん自体少なかったしそれプラス近くにいるって書いてあったからこの付近の住所調べたら一発
だったぜ?」 
私はその言葉になったくした。確かに小学校からの記憶で同じ苗字だった人いなかったしな。私も早く森野君調べなきゃな。
「ここ! 俺の家! ボロイし小さいけどな・・・」
歩きながら話していて私が守護者の事考えているうちに勇登の足が止まった。私は見ていた足元から顔を上げて早との住ん
でいる家に目をやった。確かに小さいけどボロクはない2階建てのアパートだ。どっちかっていうとアットホームな感じがして私
は好きだ。
「可愛い家だね! 何人家族なの?」
「実家には両親と弟が一人いるけどここには俺一人で住んでるよ」
階段を上がりながら何の悪気もない様子で勇登は言った。私は絶句した。私はてっきり家族と一緒に住んでいるのかと思ってい
た。
「あ、あの?」
「どうしたの? 上がってきなよ。部屋汚いけどな」
無邪気に笑う彼に引きずられるようにして私は階段を上がった。部屋の前で鍵を開ける様子を私は不安な目で見ていた。大丈夫
だよね? なんか何にも思ってないみたいだし・・・。それはそれでちょっと悲しいけど。銃もあるしね・・・。
「あれ〜? おっかしいな」
私は体をピクリと反応させた。
「どうしたの?」
「鍵開けたら逆に閉まっちゃったんだよ」
「まさか・・・泥棒?」
「まさか! こんなとこに入るくらいならもっと大きい家に入るだろ?」
「それもそうだね」
「うわぁ!きずつく!」
両手を心臓に当ててうずくまるふりをする。
「えっ! あっ! ごめん! そんなつもりじゃ!」
私はあわてて勇登に近づく。
「あはははは。うそうそ!」
いきなり笑って立ち上がり家の中に入っていく勇登に私は少しムカつきながらもあとに続いた。中は見かけよりも割りと広い。
都心に近い2LDLのアパートで一人暮らしなんてこの人の家もしかしてすごいお金持ち?
「あ、先リビング入っててくれる? 適当にくつろいでくれていいから」
そういって勇登は一番奥の部屋を指差した。
「うん。ありがと」
勇登は笑って玄関に一番近い部屋に入っていった。私は部屋を見渡しながら指差された部屋に入った。部屋の真ん中にはコタツ
があってその後ろには本棚がきれいに整理されて置いてある。中に入っているのは難しそうな本ばかりだ。本棚の隣にあるパソ
コンの上にもほこり一つない。私は見渡して呆然とした。
「結構きれいに片付けてあるでしょ?」
「うん。本当にきれいに片付けてあるね」
「だろ? 兄貴昔から几帳面でさ!」
「全然そんな感じしないのに。以外」
勇登はぱっと見『いまどきの男の子』だ。制服を着ているがいまどき風に着崩しているというか完璧の優等生風ではない。茶髪だし。
性格も優しいけど人のことからかうし、細かいこと気にしませんってかんじ。
「見た目乱暴そうだもんな。茶髪は地毛だけど」
「そうなんだ・・・・」
私は後ろに勢いよく振り返った。何の不思議に思わなかったが我に返ってみると勇登の声じゃない。
「ちわっ!」
「え、えっと・・・・」
私の後ろに立っていたのは私より少し背の高い男の子で真っ黒な黒髪の上から赤いキャップ帽をかぶっている。
「初めまして! 兄貴の彼女ですか?」
ゴンッ
鈍い音がする。
「いってっ!」
「お前なんで家にいるんだよ!」
男の子と後ろから勇登が顔を出す。
「だって兄貴最近全然帰ってこなくてつまんないしたまには弟の顔も見たいかなって思って来てやったんだよ!」
「だからって家にくんなよ! こんな時期に・・・・」
勇登のこんな時期にというのはゲーム期間にという意味だろう。私はその気持ちがわかった。家族は巻き込みたくないものだ。
「それよりさ、兄貴! この人兄貴のこれ?」
そういって勇登の弟は右手の小指を立てた。
ゴンッ
また部屋に鈍い音が響いた。
「ばっか!」
笑いがこみ上げた。
「あははは」
兄弟のいない私にこうゆうのは羨ましい。
「初めまして、弟君。私は今里 塑羅です。よろしくね」
「・・・今里塑羅さん?」
私の名前を聞いて少し表情が変った?
「おれは木瀬 勇羅! 16歳だよ! 塑羅ちゃん! よろしくね」
そういって勇羅は手を差し出してきた。
「う、うん。よろしく・・・」
勘違いかな、私は差し出された手を握った。 
「おま・・・塑羅ちゃんって。一応お前より年上だぞ?」
「一応ってなによ!」
「あ! わりぃ、わりぃ」
そう言って私の頭を叩く。勇羅とはそんなに身長差はないものの勇登とは10センチくらいある。勇登に会って今日一日張っていた
緊張感が一気解けた。あの手紙が来て銃口が私に向いたときにはどうなるかと思ったけどこのままならきっと私は死なずにすみ
そうな気がする。でも・・・・私は勇登を殺さないといけない。そうしないと今度は私がゲームオーバー。14日後なにがおきるか分か
らない。
「どうかしたん? 塑羅ちゃん?」
「う、ううん。なんでもないよ。勇羅君」
「お前、今日もう帰れよ。今里も疲れてるみたいだし」
私の顔色を読み取ってくれた勇登が私のことを気遣ってくれた。
「兄貴今何時だと思ってるの?」
私も部屋の時計に目をやった。
「8時過ぎだけど?」
勇羅は意味ありげな笑みを浮かばせる。
「な、なんだよ?」
「塑羅ちゃんは今日はどうするの?」
いきなり話を振られた。
「今日は・・・・」
正直な事を勇羅に話していいのか分からずに勇登に目を向けた。勇登もこっちを見ていて私達の目があった。
「何? 二人で見つめ合っちゃって! もしかしておれ邪魔者?!」
勇羅がからかうようにチャカす。
「違う! そうゆう意味じゃなくて!」
私がここに泊まることはいってもかまわないのだがここにいたら勇羅が危ない気がする。いつ私の攻撃者が私を狙って
くるのかわからない。勇羅まで巻き込むわけにはいかない。
「・・・・ね? もしかして塑羅ちゃんが気にしてることっておれの命の事かな?」
「「えっ・・・・」」
勇羅はニコニコしながら私の顔を覗き込んでくる。まさか・・・・勇羅も・・・。
「お前・・・もしかしてお前も・・・」
勇登は勇羅の肩を両手で掴んで勇羅の体を左右に揺さぶる。
「いったいな! 兄貴! 大げさな!」
勇羅は勇登を振り払いコタツに入り込む。
「勇羅君! 本当にあなたもゲームの・・・・」
「あぁ。そうだよ。おれもゲームの参加者だ。でも心配はいらないよ、おれは自分の守護者も攻撃者も知ってるから」
勇羅は余裕の表情でみかんを食べようとしている。
「勇羅・・・まさか・・・お前もう攻撃者を・・・?」
勇登が拳を強く握り締め小刻みに震えているのが隣にいた私にはわかった。
「まっさか! おれはぎりぎりまで人を殺すつもりはないよ! さっき会ったばっかりだしね!」
私の肩に入っていた力も抜け勇登の力も抜けた。
「それより知ってる? このゲームの名前」
「名前?」
勇羅はみかんの皮を剥きながら話し始める。勇羅は間違いなく私達よりこのゲームのことを知っている。そのことだ
けは確かなようだ。
「このゲームの主催者・目的は一切不明だよ。でもこのゲームの参加者の数は不明だけど全て都内の高校生ってこと
はわかってるんだ。その中でランダムに攻守が決められてるんだ。でね・・・この恐ろしいゲームのことは『スパイラルゲーム』
って呼ばれてるんだ」
「「スパイラルゲーム」」
勇羅は口元に怪しげな笑みを浮かべながらそう話した。
「お前・・・なんでそんなこと知ってるんだよ?」
勇登が勇羅に近づく。私はその場から一歩も動く事はできない。いろんなことを一気に話されて頭が混乱している。人一倍
覚えが悪い私なのにこんなに一日でいろんなことが起きたら思考回路がショウトしてしまう。
「決まってんじゃん! 調べたんだよ! これでも結構苦労したんだよ。自分の守護者と攻撃者探しながら情報収集するの!」
この人の情報収集力っていったい・・・。感心していいのかどうなのか分からなくなってきた・・・・。
「それでさ! ものは相談なんだけどさ兄貴!」
「なんだよ・・?」
勇羅がコタツから出て勇登に顔を近づける。
「おれこのゲームが終わるまでここに住む事にするからヨロシク!」
「はっ! なに言ってるんだよ!」
「ねっ? 塑羅ちゃんだってそっちのが安心だよね! こんな兄貴と二人っきりじゃなにされるかわかんないもんね!」
勇羅がマタ私に顔を近づけてくる。
「どうして・・・私がここに住むって」
「えっ! どうしてって・・・。それは・・・・企業秘密」
勇羅はまたいたずらな笑顔を見せる。
「こらぁっ! 勇羅! お前と一緒にすんな!」
勇登がまた勇羅の頭を殴る。
「いってぇ〜!!」
一切謎だったこのゲームの事が少しだけわかってこのゲームの1日目は終わった。今日1日で何人の犠牲者が出たかは
わからないけど・・・・。

    ゲーム終了まであと13日・・・・




「おはよ。今里」
「おはよう。木瀬君」
ここの家の主で木瀬勇登君と挨拶を交わした。私は家族をゲームに巻き込みたくなくない一心で何も考えず家を飛び出した。
そして運良く私を守ってくれる守護者に出会い、泊めてくれる事になった。勇登も勇羅もゲームの参加者で勇羅は自分の攻守
両方にもう出会ったという。それが誰なのかこのゲームのルールで教えるのは禁止になっている。だから私は勇登の攻撃者も勇羅の
攻守両方も知らない。逆に私が誰を狙って誰を守るのかも2人は知らない。聞かれても教える事は絶対にできない。
勇羅はコタツで朝のニュースを真剣に見ている。テレビの前の特等席は勇羅のものになっていた。勇登はその隣の窓側に座っている。
私は昨日からずっとスカートのポケットに入れっぱなしだった携帯をみた。メール15件。着信は20件。そういえば家に何にも残さないで
飛び出してきた。母さんは心配するか・・・。
「今日どうする?」
「え?」
勇羅が目で座るように言ったので私は勇羅の隣に正座で座った。
「おれはもう両方見つかってるから今日1日塑羅ちゃんに付き合うよ!」
「俺はとりあえず攻撃者を探しとかないとな・・・・。あんまり気は進まないけど」
一瞬の嫌な間があいた。
「塑羅ちゃんは? 今日どっちから探すの?」
「・・・・私は守護者の方から探そうと思って・・・・る」
勇登と目が合いとっさにそらしてしまった。これじゃ気づかれる。普通に接しないと。自分に言い聞かせる。
「・・・そっか・・・。じゃ今日は俺と今里は別行動だな。気をつけろよ」
「うん。ありがとう」
ちゃんと笑えてるか自信はなかった。
「塑羅ちゃん!」
勇羅が私の名前を呼ぶ。
「なに?」
「お腹すいた!」
こうしてみると高校生には見えない。中学生の弟ができたみたいで勇羅を見ていると和む。
「そうだね! 朝ごはん作っていいかな?」
私は立ち上がって勇登に聞く。
「え・・でも」
勇登は私にかなり気を使ってくれている。
「いいよ! 泊めてもらってる上いろいろお世話になっちゃってるんだからこれくらいのことはやらせて?」
「それじゃ、お願いする!」
無邪気に笑う顔は勇羅そっくりだ。

「塑羅ちゃんさ。メール見た?」
朝食を食べ終わってすぐ勇登は自分の攻撃者探しにでた。私と勇羅もそのあとすぐに勇登の家をあとにした。私の守護者森野 尚樹
君探しは困難を極めそうだ。『森野』という苗字は都内で156件。少ないほうだというけど一つ一つ当っていく暇はない。とりあえず
自分の学校にいるかもしれないので足取りは重かったが学校に向かうことにした。
「メール?」
「そうだよ。昨日の12時ジャストにこのゲームの主催者さんからきたでしょ?」
昨日から携帯をきっていたし受信が15件もあったのでまだ全部見切れていなかった。私は自分の携帯を開いてみてみる。
「あ、これだ・・・」
私はメールの内容を見て歩いていた足を止めてしまった。
「今日のゲームの死亡者は15人でした・・・・?」
そのあとに死亡した人の名前がずらっと出ている。私はそのなかに森野という名前がないか真っ先に探した。
「今日の朝のニュース塑羅ちゃんは見てなかったっけ?」
私は森野という名前がなかったことを確認してホッとしてため息をついた。
「うん。なにかあったの?」
勇羅は私より先に歩きながら話した。
「こんなゲームやってたら死体はたくさんでてる。昨日警察に発見されたのは5人だったけどメールには15人って書いてあるでしょ?
きっと自殺や事故に見せかけられた人もいるからもっとかもしれないけどこれからどんどん死人が増えてきて東京を中心に日本中大パニ
ックになるよ。今朝からその話題で報道各社はもちきり。あと13日いったいどれだけの人が得体の知れないゲームの犠牲になるのかな?
もし、その中に自分の知り合いがいたらどんな気持ちになるのかな? おれは塑羅ちゃんや兄貴が死んだらきっとルールを破って
2人を殺した人を殺すよ。そのことでおれが死んでもそれはもっとうだよ。塑羅ちゃんはどう思う?」
私は勇羅の言葉に心が揺れた。自分をそんな風に思ってくれてるのに・・・。私はあなたのお兄さんを・・・。
「私は・・・強くなりたい・・と思ってるよ・・」
歩き出したばかりの足がまた止まった。
「それはどんな意味で?」
勇羅も私より数歩先で止まった。
「・・・・・」
人を殺すのが強いなんて思ってはいない。『強い』の意味が自分の中でもよく分かっていない部分がある。でもこのゲームが終わった
あときっと自分が変れる気がするから私はこのゲームそ最後までやり続ける。木瀬 勇登を殺す事はまだ考えたくない。
「塑羅ちゃんの学校まだ?」
「え・・・あ、うん。もうちょっとでつくよ」
勇羅に引きずられるように私の足は動き出した。学校へ向かう足はますます重くなった。
「勇羅君は何でこのゲームを続けるの?」
私は何も考えずその言葉が出ていた。
「なんでて、死にたくないからだよ。このゲームは絶対参加だし断る理由もないでしょ?」
勇羅の表情はここから見る事はできない。どんな表情でいっているのかはわからなかったけど私は背筋に悪寒を感じた。
 校舎内はいたって静かだ。この時間は授業ちゅうだ。廊下を歩くと響くのは私と勇羅の足音と教室からかすかに漏れている
先生の声だけだった。私は真っ先に図書室に向かった。この学校に通う名簿が置いてあるのを前先生に聞いたことがあった
からだ。勇羅はキョロキョロト周りを見渡しながら私のあとについてくる。
「おっきいね〜。塑羅ちゃんの学校!」
場と空気を考えていない勇羅の大きな声が校内に響き私はあせった。
「ゆ、勇羅君!」
私は口元に人差し指を当てて「しーっ」っと言った。勇羅もあわてて両手を口に当ててゴメンと小さい声で言った。私はまた
歩き出した。
「ここだ」
私は図書室のドアに耳を当てたが中から声は聞こえない。ということは授業でしていることはないということだ。
「塑羅ちゃん! 伏せて!!」
「えっ?!」
勇羅は私に飛び掛って頭を床に勢いよく押し付けた。
バンッ バンッ バンッ
ものすごい大きな音が静かな校内に響く。この音は銃声だ。
「勇羅君大丈夫?」
私は頭を抑えながら体を起こす。
ポタッ ポタッ
頭の上から赤い液状のものが落ちてくる。私の体がこわばる。私を・・・かばって・・・・。勇羅は壁によりかかりまわりをキョロキョロ
見渡している。
「大丈夫? 塑羅ちゃん怪我ない?」
勇羅は笑って私のことを心配してくれている。勇羅の左肩からは血が滴り落ちている。私の顔から血の気が一気に引いた。
「私は平気・・・。勇羅・・・君・・・肩・・血、血が・・・・」
「塑羅ちゃん、動揺しすぎ! かすっただけだよ」
勇羅は右手で左肩を抑えている。かすっただけではない。血液の量がそのことを物語っている。
「何言ってんの! 早く! 図書室の中に入って!」
「う、うん」
勇羅を先に図書室に入れて周りを警戒しながらあとを追って入る。勇羅は椅子に座って俯いている。あたりは勇羅から流れた血で
赤く染まっているし息遣いは荒くなっている。私は焦った。どこから狙っているのかがわからい上、怪我をしている勇羅をほって
逃げるわけにも行かない。一緒に逃げるとしても勇羅の今の状態じゃ走ることもままならないだろう。でも、このままここにいたら
先生や生徒、警備員が駆けつけてくるのも時間の問題になってくる。
「おかしい・・・・ハァ、ハァ、誰が狙って・・・」
勇羅はいつにない真剣な表情で考えている。
「え?」
私はドアの前に立ったまま勇羅のほうに顔を向けた。
「前言っただろ? おれの攻撃者に・・・おれは・・会ってる。そして・・・おれを狙わないと・・言っていた。だから・・・おれ達を狙う奴
は・・・いないはずなんだ」
勇羅は息を切らしながら途切れ途切れに話す。
「で、でも私の攻撃者かもしれないじゃない!」
「それは・・・ありえない・・・・」
「なん・・・」
「そこまでだ!」
ドア越しに低い男の声が聞こえる。それと同時に引き金を引く音も聞こえた。ドアの向こうで誰かが拳銃を突きつけているのだろう。
私の額に冷たい汗が流れる。
「っ」
私はコートのポケットに手を入れて拳銃を取り出そうとした。
「動くなよ。ドアを開けたときお前の手にオレと同じものがあったら容赦なくお前とお前の連れを撃つ。殺さなきゃいいんだろ? この
ゲームは」
それはそうだ・・・。この人このゲームになれている。でもいったい誰?
「あなた・・・名前は? 私を狙っているの?」
「お前が名乗るのが先だ」
ドアの中と外で緊張感が走る。もし私が名乗って彼の攻撃者の名前と一致してしまったら私は撃ち殺される・・・・。
「私は・・・今里 塑羅・・・」
「今里・・・・」
ゆっくりとドアが開く。ドアの外で向けられていた拳銃はもう彼の手にない。図書室にはいてきたのはこの学校の生徒ではない。緑の
ブレザーに紺のズボン。ブレザーと同じ色に赤のラインがはいったネクタイを首から下げている。身長は勇登と同じくらいだろう。黒い髪
をワックスか何かで立てている渋谷とかにいそうな高校生だ。
「オレは森野 尚樹だ」
「森野君?!」
彼はうなずく。
「勇羅君! 見つかった・・・・よ」
私が振り向くと勇羅は完璧に机に伏せている。腕からは大量の血が落ちている。大事な血管を傷つけているかもしれない。
「こっちです! 銃声が聞こえたのは!」
ふくすうのあしおとがこっちに近づいてくるのがわかった。朝からの事件で警戒していた学校側が警察を呼んだに違いない。このままでは
銃を持っている私や勇羅君、それにせっかく見つけた森野君まで捕まってしまう。でも・・・勇羅君を置いて逃げるわけには・・・!
「今里! こっちだ!」
窓の外から私を呼ぶ声が聞こえる。私は窓に向かって走り外をみた。そこに立っていたのは勇登だ。
「木瀬君!」
「勇羅からメールがあったんだ! お前が危ないって。そしたら警察がいて・・・早くこっちに!」
私は首を横に振る。
「勇羅君が撃たれて歩けない・・・」
「こいつはオレが連れて行く」
私は後ろを振り返る。そこには尚樹が勇羅を支えて立っている姿があった。
「お前、木瀬 勇登だろ?」
勇登はうなずく。
「さっ! 早く!」
勇登は尚樹から勇羅を受け取ると先に歩き出した。尚樹はそのあとに軽くジャンプして図書室の窓を乗り越えた。いくら1階とは
いえスカートで高い窓を乗り越える事を私は戸惑った。
「早く!」
「えっ・・・」
先に行ってしまったと思っていた尚樹が窓の下で手を差し伸べてくれていた。私は迷うことなくその手を掴み下に飛び降りた。私が
この人を守らなきゃいけないのにさっそく森野君に助けられてしまったことに一人で自己嫌悪を感じていた。
「私の家ここの近くだから来て! 勇羅君の手当てしないと」
先に歩いていた勇登に追いつき先を先導して歩いた。
まさかこんなに早く自分の家に戻ってくる事になるとは思わなかった。玄関の鍵をいつも隠してあるところから取り出し、家に足を
踏み入れる。母親は仕事でいない。幼いころに父を亡くし、母子家庭で育ったので昼に近いこの時間は日ごろから人はいない。
私は2階の自分の部屋に3人をいれ、リビングから救急箱を持ち、あとを追った。
「こんなものしかないけど」
ベットの上に救急箱の中身を広げた。あったのは消毒液とガーゼ、包帯などだ。
「弾は貫通しているから出血さえ止まれば・・・」
勇登は自分の着ていた服を脱いで勇羅の出血を止めていた。私も家にある限りのタオルを持ってきた。
「よし・・・」
手際のよい勇登の処置で勇羅の出血は止まり、きれいに包帯が巻かれた。勇羅は私のベットでぐっすりと寝ている。
「すごいね・・・」
そのあまりの手際のよさに私は関心していた。
「あ〜・・・うん。まーね」
勇登はっ苦笑している。
「だって兄貴、次期医院長だもんね」
「あ、ばっか!」
今まで寝ていた勇羅が布団からいたずらに笑って言っている。勇登の顔は真っ赤だ。家にあった難しそうな本は全部医療関係の
本だったのか。
「すごいね!」
「すごくないよ。あれくらい。勇羅にもできる。それよりよく、包帯とかあったね!」
「うちも母が看護師だから・・・」
バンッ
机を叩く音がして一斉に視線が音の方向に向く。
「お前ら・・・なんでそんな風にしていられるんだよ! 今、命の駆け引きやってるんだぞ! なのになんでそんなにへらへら・・・」
尚樹の最後の声は震えているようにも感じられた。さっき尚樹と命のやり取りをした時の恐ろしさは感じられない。今、感じられるのは
見えないものにおびえている子供の姿だ。
「安心してるんだよ・・・」
「はっ?!」
視線が私に集まる。
「私も最初、すごく恐かった。こんなゲーム・・・それに勇登や勇羅のことも信じられなかった。でも・・・今はさ・・・信じられるよ。2人のこと
も、尚樹のくんの事も」
自分でも何を言っているのかはわからなかった。でも伝えたい事ははっきりしていた。
「人を信じて味方を作らなきゃ・・・だめだよ。1人で怯えて2週間も緊張が続いたら・・・ゲームが終わっても人を信じる事ができなくなっ
ちゃうよ? 私は尚樹君のこと死ぬ気で守る! 約束する! だから・・・一緒に生きぬこ!」
尚樹は俯いて拳を握り締めている。この2日ろくに寝ていないのか、顔色はさっきより悪いように見える。小刻みに震えているのを隠そうと
しているのか肩に力が入っている。
「・・・ろよ・・・」
「え?」
「約束しろ! オレを守るって!」
私はうなずく。そのあと張っていた緊張感が一気にキレたのか尚樹はその場に座り込んで眠ってしまった。
「よっぽど気、張り詰めてたんだろうな」
勇登が尚樹を持ち上げるのを私は手伝う。
「勇羅、お前もう大丈夫だろ? どけ!」
「ひどい! けが人なのに!」
文句を言いながら勇羅はベットを空ける。




2004-03-31 23:21:31公開 / 作者:唯崎 佐波
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■作者からのメッセージ
更新が遅くなりつつあり申し訳ありません。できるだけ早くと考えているのですが・・・。次回に一気に組み合わせが複雑になりますが、できるだけわかりやすくやろうと思いますので感想等よろしくお願いします。

この作品に対する感想 - 昇順
すごいはらはらする展開ですね!
2004-03-26 23:42:46【★★★★☆】ニラ
某小説を彷彿とさせますが(笑)、読みやすいし先が楽しみです。頑張って下さい。
2004-03-27 17:48:19【★★★★☆】明太子
書き忘れました。細かくて申し訳ないですが誤字発見しましたので報告しておきます。中盤あたりの「不振」→「不審」
2004-03-27 17:54:23【☆☆☆☆☆】明太子
おもしろいい! かなり気になります。。 続きがんばって書いてください。読みたいです!!
2004-03-29 23:25:15【★★★★☆】藍
アップお待ちしてました。主人公の女の子が、殺すべき相手と談笑していたり和んでいたりと、その心の動きがよく分かりません。ここが話の肝なのではと思うのですが。とは言ってもわくわくしながら読んでいますので、難しいプロットに挑戦しておられますが続き頑張って下さい。
2004-03-30 00:46:18【★★★★☆】明太子
続きが気になります。 ひとつ、間違い?を発見しました。 勇羅が撃たれたときなんですが、「どこから狙っているのかがわからい」になってました。 余計なことかもしれませんが…。。
2004-04-01 18:58:26【★★★★☆】藍
ストーリー性がいいですね。読んでて楽しかったです。・…が、私の勝手な思いなのですがもう少し「守護者」と「攻撃者」の微妙な心情が加わるといいなぁ…と思いました。あまり心情が加わりすぎるとこの緊張感が生かされないのかもしれませんが。。気分を害されたらすみません、流してくださって結構です。
2004-04-02 20:32:33【★★★★☆】白雪苺
計:24点
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