『エンジェル・ザ・ゲート 1〜4』作者:おぐら / - 創作小説 投稿掲示板『登竜門』
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1 プロローグ


 この物語の主人公は、『小金井龍太』(こがねいりゅうた)
日常を生きる、まだ受験や将来についてはまだ先にいる、普通の高校生一年生。
 性格も悪くは無いので、友達もたくさんできた。成績のほどは・・・悪くも無ければ良くも無い、微妙なところ。ただ運動神経はかなり良い。
家庭は安定していて、ただ母親との二人暮し。父親は、丁度十年前に行方不明になっている。
特別な才能があるわけでもない、いたって極普通の高校生だった。
 龍太は、日常を生きていた。起きて、学校へ行って、戻って来て寝て、起きて・・・
そんな日常が続くと、妙な確信が心の中にあった。
 しかしそれは、今打ち消される。龍太は、
強制的に日常を棄て、強制的に、非日常を受け取ったのだ。




(少年視点)
 暗い… 暗すぎる…

なんか… 電気とかねぇの?

あ〜あ、俺ってばいつまでここに居んのかな〜…

つーかよ。早く来いよ…

俺待ってるのに…

ずっと待ってるのに…

メチャクチャ暗いんだぞ?ここ。

はぁ〜、あいつが戻ってきたらとりあえず、

ぶん殴ろう…

うん。決めた。そうしよう。渾身の力で。

…あれっ?

あれっ?…そう言えば…

俺って誰を待ってるんだっけ?


(龍太視点)
「うおぉぉ〜!!行ってきま〜〜〜す!!」
 朝っぱらから、ドでかい声が街に響いた。
つーか俺の声。今玄関から飛び出した。
「やっべぇ〜〜!!」
 うん、やばい。遅刻だよ。このままじゃ。
ん?俺?俺は・・・ボブ・サップ。嘘だ。
 俺は小金井龍太。短めの黒い髪、まぁまぁしっくり着てる高校の制服、そしてかなりの美形、それが俺の容姿。一応部活は…帰宅部。別に何もやりたくないから。まぁ運動神経はかなり良いから、スポーツ関係の部活の連中からはしょっちゅう勧誘がくるけど。
「龍ちゃ〜ん!!」
「あっ?」
 誰だ?俺をずい分情けない呼び方で呼ぶ奴は…って一人しかいないけど。
「龍ちゃ〜ん!カバンカバン!!」
 あぁ。玄関で手を振ってる人。あれは俺のお袋。小金井敬子(けいこ)。ちょっと茶色の入ったポニーテイル、スタイルは結構良くて、タバコ吸ってる、ヤンキー。俺のことを龍ちゃんと呼ぶ。ただの嫌味だ。んで、気付く。
「おい!ジャージのままかよ!!」
 現在のお袋の格好は赤いジャージ姿。隣近所には見られたくないな〜。
「そんなことよりカバンだよ!!」
「そんなことより服…」
 ん?カバン?おっと1
「カバン忘れてた!」
 お袋が持ってるの俺のカバンだよ、確実に。
慌てすぎて忘れてた。
「やっと気付いたか」
 お袋がタバコを手にも誓え、煙を吐き出す。
タバコは臭いからやめて欲しいんだけど・・・聞かなくって。
「サンキュー!」
 もうダッシュで玄関までカバンを取りに行った俺に
「全く!早く学校行け!」
 一喝するお袋。何か女らしくネェ〜…
「わかったよ!」
 とりあえず言っておいた。で、走りながらもこう叫ぶ。
「ジャージ着替えろ〜〜〜」


「うわっち!!」
 急ブレーキ。赤信号だ。いやだよねぇ〜、こう言うの。
「早く変われよな!」
 まぁ変わるわけもないが。
「何叫んでんのよ。恥ずかしい」
「あぁ?」
 誰でございますか?あぁ…こいつか。
「おっは〜」
 えっと、この女は白崎麗奈。(しらざきれいな)俺の幼なじみ。
黒い髪の長髪、腰くらいまであるのは昔と変わってない。俺より背がとりあえず低くて、ピーマンが大の苦手。弓道部の、一年で部長になっちまった。よっぽど弓道部には弱い奴が多いんだな〜。
「はいはい。おはよう」
 とりあえず挨拶しといた。
「バカじゃない?遅刻して」
 じゃあお前は何なんだよ。
「はいはい。すいませんでした」
 まぁ絡むの面倒なのであんま突っ込まなかった。そうすると
「何よ!ちゃんと突っ込んでよね!」
 こうなる。長い付き合いだからな〜。別に知りたくも無かったけど。
「もう!」
 一言言って、麗奈はそっぽを向いてしまった。どうもすいませんでしたね。
「ホント。龍太ってノリが悪いよな」
「うぉっ!!」
 おっと。驚いたな〜…
「よう」
 突然隣に現れたこいつ。稲垣光司。(いながきこうじ)
高校からのダチで、強面な奴。けど、空手部のエースなので女子にはモテモテ。実は?その道の方?とお知り合いとの噂も…。まぁこいつに限ってそんなことは…無いとも言いきれないな。
「2人そろって遅刻かよ?」
 何か麗奈と同じ突込みを待ってそうだな〜。
「はいはい。すいませんでした」
「だから突っ込めって!!」
 やっぱし…。面倒なんだよ…。
麗奈も横で頬を膨らましてるし…。
「ともかく3人そろって遅刻か…。珍しいな」
 俺がぼやいた。本当に珍しい。早く行かねぇと生活指導のティーチャー(先生)が…
「あっ!」
 思い出した!突然の俺の声に、麗奈と光司は驚いたようだが、別に気にしない。
「―じゃあな!俺向こうから行く!!」
「はぁ?どこ行くのよ?」
 俺は2人と逆方向へ走っていった。麗奈の声は無視させてもらいましたよ。
何を思い出したかって?近道だよ。この道戻って、その先の公園の横の細道を通れば学校まで一直線なんだよ。よっしゃ!これで遅刻は間逃れる!さよならお2人さん。仲良く遅刻して生活指導のティーチャーにみっちりしごかれて下さい。では〜。


でも…ここを近道しなけりゃ、普通に生活できたんだよな〜俺。
はぁ〜…後悔後に立たず…



2 日常から… 


「おしっ!この道を曲がれば…」
 曲がれば後は学校へ一直線!その時。
「うわっち!」
「アイタ〜!!」
 ドンッ と何かにぶつかった。どこ見て走ってんだか…。しかも声高いな。おい。まるでアニメキャラ(しかも洋画の)だぜ。
「どうもすいません。けど先を急いで…。ん?」
「イテテテテ…」
…なんだ?こいつ?どっかのサーカス団か抜け出してきたのか?地面に尻餅してる。
緑の帽子を深くかぶって目を隠していて、
口は…メイクか?糸で縫いつけてあるみたいだ。よく喋れるな。すげぇ小柄で目算で百四五センチくらいか?ちっちぇなぁ〜。
服はやったぱ緑。ズボンとかじゃなくて、でかい服がスカートみたいになって、体全部すっぽり埋まってる。
「どうもすいません」
 まぁ、俺にも非はあるし、敬語を使う。そして、俺はその変なピエロ(?)に手を差し伸べる。う〜ん。優しい。
「エッ!?」
 ピエロは驚いた。何で?
「…アナタ。ワタシガミエルノデスカ」
 聞き取りにくい…。どっかの外国のなまりか?
「見える?…まぁ見えますよ」
 とりあえず答えた。
「スゴイ…スゴイ…ヤッタゾ!」
 ?意味分からん。何が嬉しいんだよ。転んでどっか打ったのか?
「あの…どうかしたんですか?」
「……!!ツナガッタ!!」
 つーか会話成立してねぇ。


(少年視点)
あ〜あ〜。やっぱ暗い。何にも見えないもん。

俺の姿すら見えない。あ〜…

ともかくぶん殴る。あいつがきたら。

なんかハンマーとかで打ち倒す…

絶対。うん。絶対。うんうん。絶対の絶対。

…あ〜あ…何か眠いな〜…

寝ようかな〜…あれ?

何だ?あれ?…見える…

何か見える。初めてだ。こんなの。

明るいな… 光だ。光だ。

…どうしよう。まぁもちろん。

あそこまで歩いてみよう……

何か眠くなくなったし。とりあえず。

…何か。懐かしい光だ…。


(龍太視点)
「ツナガッタ!ヤッタ!ヤッタゾ!」
 何かうれしそ〜に飛び跳ねてますが?
もう何が何だかわかんねぇよ。
「え〜…何がそんなに嬉しいんですか?」
「ワタシハ『ベンパー』!?雷曲の変舞?(らいきょくのへんぶ)!!ベンパーデス!!」
 こいつ質問に答えてくれネェ…ちょっとムカツクね。
「アナタハ?ユウシャ?ダ!『ミザリー』サマノシレイガ、ヤットハタセルゾ!!」
 はぁ?俺が勇者?しかも?みざりー?って誰?やっぱ転んだ時にどっか打ったんじゃ…。
「デハイキマショウ!!」
「はぁ?」
 どこに行くんですか?全く。ぶん殴って黙らせた方が良いかな。正当防衛になるし。
きっと警察も…
「時と時を繋ぐ門。鎖を外し、例え魔物が意で参ろうともその門を開けたもう」
「…へっ?」
 何だか声が変わった…?低くなったんだけど…?
「門番ケルベロスの許しを得て、高き時空を飛び越えよう…」
 謎のピエロが両手を挙げた。その両手の真ん中で、黒い塊りが凝縮し始める。何だ?手品?動物の唸り声のような音がその塊りから響き、風が飛び出した。その風は一度、俺の方へ吹き、俺の髪を後ろへとなびかせたけど、その後は塊りに風が引き込まれているように、髪が前へとなびく。
「…あっ?」
 そりゃもう驚くしかネェよ。うん。
 最初、直径十センチほどの黒い塊りが、今は直径一メートルほどまで膨れ上がっていた。
「されば誘え!誰も知らない!だが懐かしき場所へ!!」
「なっ!?」
 おっ!?俺のの足元が浮かんだ!?体はクルリと、おもしろいように一度回転し、黒い塊りへと近づく。その中は漆黒。
ただ風が渦巻いていた。
「―っ!うっ…」
 叫びが響く前に、吸い込こまれた。体ごと吸い込まれ、そのまま消える。俺が。
「フゥ〜…」
 ピエロは大きなため息を付いた。緑の帽子が少し顔に下がる。次の瞬間、唸り声を上げていた塊りが一瞬にして消えた。
「…セカイハヘイワニナルノデショウカ…?」
 知るかよ。で、残ったのは、緑のくそピエロだけだった。



 こうして龍太は、強制的に日常を棄て、非日常を受け取った。



3 非日常へ


(少年視点)
まだかな…結構歩いてきたんだが…

あ〜…疲れる…普通に疲れる…

何べんの言ってるけどあいつは殴る

絶対に殴る。

って言うかあいつ約束破ったな…

戻ってこなかった…

けど…けどホント、アイツって誰だ?

あっ!光が強い!走ろ〜っと!

ん?何だ…?光の中に入った?

入ったは良いけど…地面無いっすよ?


(龍太視点)
 さ〜て…俺はどこに居るのか?
まず俺の見覚えはないね。
 何か髪が髪がスゲェ勢いで後ろに流れているよ。カツラだったらとっくに飛んでるね。
俺の髪の毛も千切れそう。
周りは青い。澄んだ水色だ。
しかも雲が浮かんでる。こんな近くで雲を見たのは初めてだ。
体を大文字に広げて全身で風を受けてます。
さ〜て・・・俺は・・・
「落ちてる!!」
 そんなんだよ!落ちてんだよ!
何か分かんないけどスカイダンビングしてる!!パラシュート無しで!!
「ここどこだよ!?意味分からん!」
 まぁとりあえずピエロのせいだってことはわかってる。次会ったらぶっ飛ばす。
遠い地面は何か緑の草原らしい。まだまだ遠いが?逝く?のもそう遠くは無いだろう。
と…
「ん?」
 …誰?俺の隣で俺と同じ格好でとんでる奴。
「………」
 こっち凝視してるし。
長い金髪で、ボサボサと風に揺れてる。白を基調した服装で、胸には、金ぴかの十字架。こういうのをロザリオって言ったっけ?
俺に負けじと劣らず結構美形だな。瞳は赤い。
「…どうも。そして誰?」
 とりあえず挨拶しといた。我ながらのん気。
「…どうも。で、誰?お前」
 いやお前が誰だよ。それに俺が聞いてんだよ。


(少年視点)
 あ〜…久しぶりの外だ。
何百年ぶりだ?わからん。数えてない。
自分の姿の久々に見たな〜…うん。外。
外…って!空じゃん!うん!空!
メチャクチャ落ちてる!何かすごい!
俺の髪が後ろになびきまくってる!!
…う〜ん。まっ、大丈夫だな。
さてと…どうやって着地…
「ん?」
…誰だ?あれ?見覚えないが…
俺と一緒に落ちてるな…不運だね。
「………」
 こっち凝視してるし。
黒くて短めの髪がなびいてる。服装なんて見たこと無い。田舎のやつか?
「…どうも。そして誰?」
 はぁ?俺が聞きたいよ。それに初めは自分から名乗るもんだろうが。
「…どうも。で、誰?お前」
 だから聞き返してやったよ。


(龍太視点)
「………」
 う〜ん…どうも生意気な奴。まぁ、こちらから名乗っておこう。
「えっと…俺の名前は、小金井龍太。…ここはどこ?」
「こがねいりゅうた?変な名前。…俺は…」
 少年が頭をかしげる。まさか自分の名前を忘れたわけじゃ…
「…俺の名前は…セシル。それだけは思い出せる」
「思い出せる?」
 意味分からん。まぁ名前がわかっただけでも良いか。
「で…お前大丈夫なのか?落ちまくってるぞ?」
 セシルと言った少年が言う…って!
「そうだよ!落ちてるんだ!!やっべぇ!!」
 すっかり忘れてた!相変わらずのん気だ。
「…何とかしてくれない?」
「無理」
 一応頼んでみたけど…まぁ、当たり前だな。
そうこうしてる内に俺は地面へ近づいていく。
…って言うか…俺ってこんなところで死んで良いのかよ?

 まだやって無いゲームだってある。新しく買った服だってある。そう言えば麗奈たちと遊園地に行く約束も…。遣り残したことばっかじゃん。まだお袋も家に残したままなんだぞ?それで死ぬってのか?そりゃないんでないか?だろ?
  だから…
「だから…死にたくない…!」
「はぁ?」
 セシルが首を傾げていた。で、何か首もとのロザリオが光ってるし…。
「お前…」
 何ですか?


(セシル視点)
 「えっと・・・俺の名前は、小金井龍太。…ここはどこ?」
 やっと名乗ってくれたか…でも、こがねいりゅうた?
「こがねいりゅうた?変な名前。…俺は…」
 俺は・・・あれ?なんだったっけ?ちょっと待てよ…あぁ。そうだ。思い出した。
でも何で即答できなかったんだろう…?
「…俺の名前は…セシル。それだけは思い出せる」
「思い出せる?」
 リュウタも聞き返してきた。まぁ、そうだな。俺も変だと思うし。でも、大変なこと忘れてない?
「で…お前大丈夫なのか?落ちまくってるぞ?」
「そうだよ!落ちてるんだ!!やっべぇ!!」
 やっと気付いたか…バカじゃない?こいつ。死ぬっての。
「…何とかしてくれない?」
「無理」
 無理だよ。まだ『力』も戻ってないし。まず記憶がない。自分のことも、ほとんど。それに…
「だから…死にたくない…!」
「はぁ?」
 びっくりしたな。行き成り大声出すな。うるさいったら…えっ?
 光ってる?俺の?神聖具?『セルファス』が?…力が…戻った?何で?えっ?
意味分からん…いや。待てよ…。
まさか…まさか…
「お前…」

   龍太は、非日常の世界で、少年と出会った。



4 国へ


(龍太視点)

ドオォォォンッ!!!

 ―ッ!…んだよこのドでけぇ音。
静かにしろよ…俺は死んだんだよ。
静かに眠らせてくれや…
あれ?ここ…どこだ?
 緑の地平線が、俺の周りに延々と広がる。
大の字に、仰向けで寝る俺の横には、大体膝くらいの高さの花や草。その草花が、風が吹くたびに、まるで緑の波のように動く。
ただ、俺の周りの草はなぎ倒されていた。さっき落ちたときの衝撃だな。
…何か綺麗な場所だ…もしかしてここが…
「…天国?」
「いや、お前はまだ人間やってるよ」
 突然、上から話かけられた。そこに立っているのは、セシルだ。
 風が吹くたびに、その金髪が揺れ、この草原以上に綺麗だ。特に白い服装と言うのが良い。まるで天使か…まっ、俺には負けるかな。
いや、ホントだよ?
「…天国じゃないってことは…どこ?」
 とりあえず聞きなおす。
「…さぁ??覚えてない?」
「?覚えてない??わからないんじゃなくて?」
「あぁ、覚えてない」
「………」
 沈黙。喋ることないし。でも、不思議になっていたことは聞いてみる。
「なぁ、何で俺生きてんの?」
「はぁ?お前わかってねぇのか?」
 わかってない?何が?俺がそんな風な顔をすると、セシルがため息を付き、答える。
「お前空中で落ちてる時俺を?シャドー?として使ったろ?俺の力でお前は助かったんだ」
 はぁ…セシルのお陰で助かったと?…今一わからん。…つーか…セシルって…?人間なのか??聞いて…見るか?何か失礼そうだし…まぁ聞いてみるか。
「なぁ…セシル。お前って…人間?」
「はぁ?」
 やっぱり。バカかお前、って顔をしてる。
「バカかお前」
 やっぱり。
「俺はシャドー、人間じゃない」
「…へっ?」
 はい?…人間じゃ…無い?しゃどー?
…はい〜意味分かりません〜。
「ちゃんと説明してくれよ!」
 俺が言うと、面倒くさそうにセシルが言う。
「…俺もよく覚えてないんだけどよ。シャドーって言うのは人間の精神力を生んだ実体…つまり超能力だ。で…え〜っと…その具現化した……っだぁ〜〜〜!!!」
「うおっ!!」
 びっくりした〜、行き成り大声出すんだもん。
「面倒くさい!!自分で確かめろ!!」
 …そう言うけどさぁ…
「どうやって確かめるんだ?」
「人に聞け!!」
 人って誰だよ?こんな草原に人なんかいるか?
「人ってどこにいるんだ?」
「国だ!!」
「国ってどこにあるんだ?」
「それは!…それは……それは?」
 わかんねぇのかよ。自慢ぶって言い切ってたくせに。
「ちょっと待て、思い出す」
 セシルがそう言い、俺の横にあぐらをかいて座る。当たり前と言うか、手は顎だ。俺も状態を起こし、あぐらをかいて座る。
「………」
「………」
 しばらくの沈黙。その後、セシルが草原の遥か遠くを見る。
「…向こうにある」
「はぁ?」
「向こうに国がある?」
 『ある?』って何だよ『?』って。ハッキリせんかい!と、知り合いなら叫んでいただろう。
それに国って海をへだてているものなんじゃ?こんなところ歩いてて見つかるものなのか?今一信用できん。
「本当に?」
「あぁ、絶対?」
 だから『?』を付けるなって。
「………」
 しばらく俺は考えた。考え、そして立ち上がる。
「…行ってみるか…」
 俺がそう呟くと、
「しゃあ、俺も行く」
 セシルっも呟いた。
「はぁ?」
 何か、変な奴がついてきた。


「はぁ…はぁ…はぁ…」
「………」
 広い草原。その緑の地平線は延々と広がっていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「………」
 空高くから俺を照らしていた太陽は、今は低いところにあり、オレンジ色の夕日になっていた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「………」
 息を切らしているのは、俺。隣のセシルは息一つ切らしていない。スゲェ体力…俺も運動神経と同じくらい体力には自信があるのに…でも何か…この世界に着てから、体が軽くなった。今まで以上に。…いや、待てよ…?この世界?何だ?俺は違う世界に来たって言うのか?はっ、ちゃんちゃら可笑しい話だぜ。
「―はぁ…」
 今のは、息を切らしたのではなくため息。何で俺、こんなことやってるんだろうってため息だよ。ふぅ〜…ホント、何やってんだろ。
「あっ」
 セシルが声を上げる。何ですか?
「……国だ」
「えっ?」
 そこにあるのは、石の壁だった。


(セシル視点)
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「………」
 草花を足でなぎ倒しながら、俺は進んで行く。ただ隣に、リュウタって言う奴がいた。
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「………」
 だらしが無い…でも人間にしてはかなりすごい。さっきまで俺たちは走っていた。何十キロ、いや百キロくらいは走ったかも知れないのに、
「はぁ…はぁ…はぁ…」
「………」
 これだけばててるだけ。普通の人間なら動けない。つーか脱水症状で死ぬ。
 でも…こいつが俺の?マスター?になったわけじゃない。リュウタが俺をシャドーとして使ったのは偶然だったようだ。
…しかしリュウタって変な名前だ。
それに何で外に出れたんだろう?って言うかあそこはどこだったんだ?…記憶が無い。
……まっ、いっか。
「あっ」
 おっ?そうこうしている内に
「……国だ」
「えっ?」
 なっ?言ったとおりだろ?国があった!…自信は無かったけど。
2004-03-31 21:26:07公開 / 作者:おぐら
■この作品の著作権はおぐらさんにあります。無断転載は禁止です。
■作者からのメッセージ
4話目です。今まで感想をくれた方々ありがとうございます。
これからも感想をくださいましたら嬉しい限りです。
この作品に対する感想 - 昇順
描写がおもしろいです。おもしろいのは良いのですが、どうもバランスが悪いような気がします。続きがあるなら、がんばってください。
2004-03-23 19:19:10【☆☆☆☆☆】カズキ
おっとと・・・点数を入れるのを忘れてました。
2004-03-23 19:19:47【★★★★☆】カズキ
初めまして。さえわたり、と申します。視点別ですか。中々面白そうですね。まだ始まったばかりなのでこれからが楽しみですが、読みやすいし良いとは思います。次回、楽しみにしています。ここからどう展開するのか。ここからが勝負どころですね。頑張って下さい。
2004-03-23 19:26:27【★★★★☆】冴渡
おもしろいですね。参考にしたいと思います。
2004-03-24 19:52:46【★★★★☆】ジーク
また拝見させてもらいました。視点構成と言うのがおもしろくなってきましたね。また読ませて頂きます。
2004-03-27 20:51:34【★★★★☆】カズキ
構成がとてもいいです。次も頑張ってください。
2004-03-27 22:25:49【★★★★☆】フィッシュ
おもしろいですね。 コミカルな進み具合?が好きです。
2004-03-28 20:13:19【★★★★☆】藍
計:24点
お手数ですが、作品の感想は旧版でお願いします。