そのアイテムによって狸の心が根源的に潤う、そのアイテムに肯定的に関わるすべてのものを大らかに許してしまう、そのアイテムに否定的に関わるすべてのものがなんだかとっても哀しい、そのアイテムを目にするだけで条件反射的に唇の端がしまりなく上方へと弧を描いてしまう、しかし唇の端は上昇しつつも胸の奥は「きゅううううん」などとなんじゃやら切なく締めつけられたりもする、50を過ぎた狸が「……これって恋?」などと思わず独りごちてしまい周囲から腐ったトマトや炎天下に一週間放置した生クリームパイなどが投げつけられる、年端の行かない若者が「これが愛だ!」などと断定的に絶叫すると50を過ぎた狸が「ふっふっふ、そうかな?」などと呟きながらバケツで冷水を浴びせかける――まあ定義らしいものはなんぼでも浮かぶのですが、ただひとつ確実なのは、そのものを前にすると「己は有って無きがごとし」を実感できる、そんな高次の存在でしょうか。
……どこがピンポイントやねん。